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謎の4人がやってきた①

 それからその村で二日間畑仕事などの手伝いをして過ごし、三日目の朝を迎えた。アヴィリオが広場に向かうとそこにはフェローウルフが数匹と村人たちが集まっていた。どうやらじゃれているところらしい。

「数日で随分と打ち解けたな」

 アヴィリオがそういって近づくと、子どもたちが元気に返事をした。

「うん!でも、今日のウルフたち、なんか様子が変なの…」

 子どもたちは心配そうにフェローウルフを見上げる。

 フェローウルフたちは耳をピンと立て落ち着かないようにソワソワしたり、キョロキョロとあたりを見渡していた。明らかに何かを警戒している様子だった。

 アヴィリオにはその原因がすでに分かっていた。

 何者かがこの村に近づいている気配がある。それを察知して落ち着ないのだろう。

 それかフェローウルフにしかわからない何かがあるのかもしれない。

 そんなことを考えているとフェローウルフたちがバッと村の入り口に向かって走り出した。その場にいた全員がそのあとを追う。



 入り口行くとちょうど見知らぬ4人組が村に到着したところだった。その4人は剣や杖などを持ち明らかに武装している。いかにも冒険者という風貌だ。

「なんだ、こんな辺鄙な村だと宿は期待できなさそうだな」

 ひと際大きな体格を持った男がそう口にした。何かを後ろに抱えているように見えるがよく見えない。

「ほーんとね。キャハハ!さっさと片付けて帰ろー?」

 いかにも魔法使いと言った少女が軽く言う。すると、大男が後ろに抱えていたものを村人たちの前に投げつけた。

 それを見て村人は悲鳴を上げ、数人がすぐに駆け寄る。

 アヴィリオも奥歯を噛み締め、苦しそうに眉をひそめた。

 


そこには、血まみれとなり変わり果てたトーマスの姿があった。トーマスはピクリとも動かない。



「なんの騒ぎですか?!」

 騒ぎを聞いたリーユエが駆け付ける。そしてトーマスの姿を見るとサアァっと青ざめ、駆け寄る。

「おじいちゃん!おじいちゃん!!どうして…!」

 そういって4人組をキッと睨む。

 すると、シスターが前に出てその場の全員に聞こえるように叫ぶ。

「良くお聞きください!このお方は勇者、リオン・ハウルード様です!無礼な態度は改めてください」

 4人の中で一番立派な装備に身を包んだ優男は得意げな顔で胸を張る。

 どうやらこの4人は有名な勇者一行らしい。アヴィリオは数日前にリーユエに聞いた話を思い出す。


(確か、勇者リオンにダーディオン、キャメロット、エリッサだったか…)


 リオンはふぅ…と一つため息をついて口を開く。

「その者は俺の頼みを断ったんだ。だから相応の対応をとったまでさ。そんな目で見られても困る」

 なんの悪びれもないセリフ。村人たちは一瞬で凍り付いた。

「……失礼しました。ですが、勇者様がこんな辺鄙な農村へ何の御用でしょうか。あいにく、勇者様方にお世話になることはないと思いますが」

 トーマスを医者に診せるよう数人に頼み、リーユエは勇者たちと対峙する。

「ここにはフェローウルフという討伐ランクAの魔獣が出ると小耳にはさんでな。困っているだろうと思って助けに来たんだ」

 リオンはそういうと村の中を見渡す。村人たちは子どもと村に来ていた数匹のフェローウルフを隠そうとした。

 しかし、彼らを睨み威嚇するフェローウルフはその場を離れようとしない。今にも襲い掛かりそうな顔をしていた。

 4人はフェローウルフに気付くと、にっと笑いダーディオンが体の半分以上あるような大剣を振り上げる。

「ほーら、村の中だとあぶねぇから狩らねぇとなっ!!」

 一瞬でフェローウルフの前に移動し、思いっきり大剣を振り下ろす。

 周りの村人たちは悲鳴をあげ、目をつむったり顔を背けた。

しかし、誰もが予想した悲惨な現実にはならなかった。



アヴィリオが大剣を素手で受け止めたのだ。



「なんだぁ?このガキは」

 ダーディオンはそういって大剣を引き寄せようとするが、ピクリとも動かない。

 アヴィリオが力を入れているようにも見えないが、彼の持った切っ先は全くと言っていいほど動かなかった。ダーディオンは顔を引きつらせ、冷や汗を流す。

 2人は少しの間睨み合い、アヴィリオが突き返すように大剣を放す。

 大男は少しよろける様に勇者たちのところに戻り、大剣を構える。気づくと勇者御一行は全員武器を構え戦闘態勢に入っていた。

「お前…何者だ?」

 リオンが問いかける。

「アヴィリオ、ただの旅人だ」

「そうか…。ただの旅人が俺に楯突いたからには相応の対応をさせてもらう」

 そういうとリオンは片手をあげ、アヴィリオに向かって振り下ろす。


「やれ」


 そういうや否や、魔法使いの杖が光を放ち、シスターが胸の前で両手を握り魔法を発動させる。

「覚悟してね~?<スタン・ブリジット>」

「<―…聖なる光よ、強靭な糸となり彼の者を捕らえよ>」

 アヴィリオの足元に魔法陣が浮かぶと全身に電流が走る。そして、光の帯が全身に絡みつき動きを封じる。その次の瞬間、ダーディオンが距離を詰めアヴィリオの首を狙って大剣を振る。

 しかし、その刃は首に当たりはしたが切り落とすどころか、傷一つ付いていなかった。

 3人が驚愕している一瞬、アヴィリオの後ろで一つの影が動く。先ほどの攻撃を囮に、リオンが後ろに回り込んでいた。

 リオンはアヴィリオにめがけて剣を振り下ろす。


カキンッ!


 金属の打ち合う音が響き、両者は同時に距離をとる。

 見ると、アヴィリオの手にはナイフが握られていた。リオンの攻撃の瞬間、光の拘束を振り払い応戦したのだ。

 体が痺れているのかナイフを持っている手は僅かに震えている。

 しばしの睨み合いが続き、風に舞った葉が地面に着いた瞬間に同時に地を蹴る。

 リオンとダーディオンが怒涛の攻撃を仕掛ける。そこにエリッサが身体強化などのバフを付与する。アヴィリオはすべて避けたりいなしたりしているが、避けきれず細かい傷が増えていく。

 その上、キャメロットの多種多様な属性魔法が問答無用でアヴィリオに撃ち込まれる。間一髪のところで防御し直撃は免れている。しかし、物理と魔法を駆使し反撃しているものの、世界でも指折りの実力を持つ冒険者たちに4対1での戦いは一筋縄ではいかなかった。


 しばらくの乱闘の末、両者がまた距離をとる。互いに息は乱れているものの、アヴィリオの負傷と消耗具合は一目瞭然だった。

「ここまで粘るとは大したものだ」

 リオンは涼しげな顔で見下したように言う。他の者たちも余裕はないもののこのまま押し切れると確信したのかクスクスと笑っていた。

(全員を一気に相手にするのは分が悪いな…)

 そう思ったアヴィリオは一瞬で4人の懐に移動すると、キャメロットとエリッサを風魔法で吹き飛ばす。

「きゃっ!」

「うっ!」

 2人は近くの木に体を強く打ち付けうなだれる。

 虚をつかれ唖然としているリオンに思いきり蹴りを入れる。リオンは咄嗟に防御したが少し後ろに飛ばされた。

 ダーディオンは思い切り拳を振り下ろす。それを少ない動きで避けるとダーディオンの腹部に痛烈な一撃を叩き込んだ。それでもダーディオンは倒れずアヴィリオ掴もうと腕を伸ばす。それをさらりと避けるとナイフをダーディオンに突き刺す。


 その刹那、アヴィリオの後ろから強烈な殺気を感じる。


 すぐにダーディオンに刺したナイフを抜こうとするがダーディオンがナイフを押さえていたため抜けなかった。

 そのまま振り返り、リオンが振り上げている剣を受け止めようと手を伸ばす。

 しかし、アヴィリオの動きを見たリオンは一瞬で態勢を低くし下からの攻撃に切り替える。

 アヴィリオも対応しようとした時、ビリッと全身に電流が走り一瞬動きが止まってしまう。それは致命的な一瞬だった。



 リオンの剣が白く光を帯び、アヴィリオの体を両断した――…。


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