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八話 魔王城に恋
ハセクランこと支倉シンイチローは言った。
「小説家はもう諦めたらしいな」
僕は苦虫を噛み潰す思いで言った。
「小説なんて僕には書けん。時代はすぐ新しいものに代わるし、文章力はあがらないし、まるでウケない」
「そもそもお前は小説家になりたいわけじゃないしな」
「なぜそれをっ!」
僕は驚愕して支倉先生を見た。
「俺がそうだからだ。俺がなりたいのは、小説家ではなくて俺が書く原作のアニメのなかの主人公だ!」
「僕と……同じだ」
「さあ、とっとと床を取って魔王城に恋。じやなくて来い。いまのトレンドは異世界恋愛だ」
「追放ザマァはなにが楽しいのかわからなかったし、悪役令嬢もわからなかった僕に来いと?」
「書く内容はお前に任せる。これはおまえの物語だ」
僕はそのセリフにきゅんとした。