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真・地獄転生リベリオン  作者: 木村さねちか
完全地獄ピュア・ホワイト・プロミスドランド
19/31

 十九話 クッキーのある風景

「いただきまーす」

 少女は朗らかな声で言う。

「召し上がれ。アラタも」

「いただきます」

 デミグラスソースで作られた野菜ゴロゴロシチューをまず口にする。どこかなつかしい味がして、市販のルーを使っているのではなく、最初から煮込んで作っているのだろう。素人レベルの料理ではなかった。

「ウマいな! フェイト、これはプロレベルだよ。金を出してもいい」

「お世辞はいいわよ。何万皿もこのシチューを作っているから自慢の一品ではあるけど」

「あい、クッキーを食べてごらん?」

 僕は少女に言った。

「うん!」

 少女は満面の笑みで目を輝かせながらクッキーを一つ取って口に入れた。

「どう、かしら、あい」

 不安げな声色でフェイトは少女に尋ねた。少女の目は輝きを増し、満面の笑みで少女は言った。

「おいしいよ! フェイト!」

「よかったわ。喜んでもらえて」

「お客さんも食べて! えーと」

「ルイだよ。早波瑠衣」

「ルイも食べて。フェイトの料理はね、すっごーくおいしいの」

 僕は塩味のクッキーを口にする。

「すっごくおいしいでしょ?」

 少女は言う。僕は自分の提案で塩味にしたクッキーを食べる。

『お母さんの料理はね、すっごーくおいしいの』

 そんな少女の声がこだまする。まるでデジャヴのように。

「? ルイ、ないてるの?」

 少女の指摘でハッと我に返ると、自分が泣いていることに気が付いた。

「本当だ、涙が出るほどおいしいよ、フェイト」

『本当だ、母さんの料理は何でもおいしい』

 今日が初対面のはずなのに、思い出のように脳裏によぎる、フェイトとあいと僕の三人の食卓の風景。僕は涙を抑えきれず、嗚咽しながらシチューを平らげた。

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