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真・地獄転生リベリオン  作者: 木村さねちか
完全地獄ピュア・ホワイト・プロミスドランド
17/31

 十七話 その名はシン

 僕は少女に案内されて裏庭に行った。そこには小さな畑と、鶏が二羽いた。

「ここだよ?」

少女は卵を見つけて一個手に取る。僕は三個取って二個をジーンズのポケットに入れた。

「鶏以外には生き物はいないのかい?」

「鶏以外の? お魚ならいるけど」

「ここに僕のように誰か尋ねてきたことは?」

「ないよ」

 この少女の言うことが本当なら、フェイトの言う通りここはある意味地獄であり、天国でもあるのだろう。多くの人間はいさかい、争い、殺し合う。ここの住人がフェイトと少女の二人きりである限り、ここは天国であり続ける。いかにもシンイチローらしいシニカルな世界だった。

僕は少女の手を引いて、家のなかに戻った。

「卵はあったよ、フェイト」

「ありがとう。今日は目玉焼きよ、あい」

「やったー」

 僕は少女に聞いてみた。

「昨日の朝ご飯は?」

「昨日? 昨日ってなに?」

「今日の前の日の事さ」

「しらない……フェイト、昨日ってなーに?」

 フェイトは一瞬僕を睨み、少女に笑顔を浮かべて言った。

「いい子にしてたらくるものよ」

「そーなんだ。わたし、悪い子なの?」

「いい子よ、だから明日はきっとくる。アラタ、朝食の準備を手伝って頂戴」

「かまわないが」

「あいはそこで座って待っていてね」

 フェイトにそう言われ、「うん」と元気な声で少女は上座に座った。僕がフェイトに近づくと、小声でフェイトは言う。

「余計なことを吹き込まないで頂戴。まだ信じていないの? ここは明日が来ない世界なのよ。まあ明日になればまた今日の朝がやってきて、彼女も今日の事をわすれるわ」

「どういうことだ?」

「ここは世界最後の日なのよ。そういう設定らしいの。夜が来ればラストドラゴンがやってきて、全てを焼き滅ぼす。あの子も含めて。わたしはなんどもラストドラゴンと戦ったわ。でも勝てない。あのシンには」

「シン?」

「ラストドラゴンの名前よ。わたしはそう呼んでる。シンイチローのシンでもあり、神のシンでもある」

「君の口ぶりだと、君はシンイチローを知ってるのか?」

「……知ってるわ。わたしは彼の妻だもの。私の知るシンイチローは、世界的ヒット作、ラストドラゴンの作者で、いろんな国で彼のアニメが上映されたわ。でも、最終巻を書ききる前に彼は刺殺された」

「誰に?」

「言わなくていいことよ。過ぎたことだもの。わたしにとっては。でも、彼にとってはそうじゃない。だからアラタ、あなたが選ばれた。それは意味のある事なのよ」

 フェイトはそう言うと、目玉焼きを焼き始めた。

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