表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真・地獄転生リベリオン  作者: 木村さねちか
完全地獄ピュア・ホワイト・プロミスドランド
16/31

 十六話 その名は、あい

 僕が絵本を読み終えると、奥のベッドから少女が目をこすりながら起きて来た。僕と目が合うと、寝ぼけ眼が驚いたように変わり、フェイトの影に隠れて少女は言った。

「だれ? ラストドラゴン?」

 僕は笑いながらこう答えた。

「違うよ。僕には翼も牙もない」

 僕は両手を広げて敵意のないことを示す。

「じゃあ、お父さん」

「それも違うな。僕はただのお客さんだよ」

「フェイト、ほんとう?」

 少女はフェイトに訊いた。

「そうね。お客さんよ」

 少女が目を輝かせる。

「お客さんだ! フェイト。じゃあ、クッキーを焼こう!」

「そうね。クッキーを焼きましょう」

 フェイトはそう言うとキッチンに立つ。

「クッキーの材料はあるのかい?」

「それらしき粉は。焼いたことはないけど」

「バターと卵もいるはずだ」

「ああ、それでか」

 フェイトはなにか得心したようだった。

「どうした?」

「裏庭に鶏が居るのよ。なんでいるんだと思ってたけど。卵がいるのね、クッキーには」

「バターは?」

「何とかするわ。卵を取ってきてちょうだい、アラタ」

「わたしも行っていい?」

 少女がフェイトに言う。

「いいわよ。四つ取ってきてちょうだい」

「はーい。行こう?」

 少女は目を輝かせて言う。

「行こうか。君、名前は?」

「なまえ?」

 僕はフェイトに聞いてもた。

「フェイト、この子の名前は?」

「シンイチローしか知らないわ」

「名前か」

「あなたは知ってるんじゃないの? 彼を知っているんでしょ?」

「知らないよ。彼は設定とか明かさないんだ」

「なまえ、ないの?」

 少女は涙ぐみながら言う。

「いや、名前は、そうだなー、あいちゃんかな? 愛してるのあいだよ」

「あい? わたし、あい?」

「うん。そうしよう」

 少女は目を輝かせてフェイトに言った。

「そう、そうね。今日からあなたは愛よ」

 フェイトは泣いているのか、肩を震わせて涙をこらえながら言った。

「フェイト、どうした?」

 僕はフェイトに言った。フェイトは背を向けて、こう言った。

「何でもないのよ。ただ、うれしいの。その子には名前がなかったから」

「君が付ければ良かったじゃないか?」

 僕はその言葉の残酷さに気が付かずに言った。

「わたしじゃ、だめなのよ。でも、もう大丈夫。あなたが来たから、今日は明日が来ると思うから」

「よくわからないな……。まあいいさ。卵を取ってくるよ」」

 そう言うと僕は少女の手を引いて裏庭に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ