十四話 完全地獄ピュア・ホワイト・プロミスドランド
この先はほぼギャグ要素ありません。
覚悟して読んでください
僕が家に帰り、一晩眠ったあとに目覚めたのは、無限に続く白い鈴蘭の花畑だった。
僕はまだ酔ってるのだろうと呑気に散歩していたが、いつまで経っても夢が覚めることはなかった。
僕は徐々に焦りを感じ、無限に続く花園を人影を探してさまよった。
人、人、人。
「誰かいませんか! ここはなんなんです!?」
絶叫しつつ走る。すると小高い丘に小さな一軒家が見える。
僕はその小屋に向かって走り、ドアをノックした。
「誰かいませんか!」
ドアを激しくたたきながら叫ぶ。
人の気配がして僕は息を落ち着かせる。
「何者だ?」
ドアがゆっくりと開き、ブロンドの女性がドアを開ける。女性は抜き身のレイピアを持ち、怪訝そうにこちらを見る。
「ああ、お前か」
「ここ、なんなんです? どうしてだれもいないんです?」
「ここは完全地獄、無限の花園。支倉シンイチローによって生み出されたコキュートスを超える地獄よ」
「完全? 地獄?」
「そう。完全地獄。ここには何もなく、ただ永遠に終わらない今日を生きるだけ。わたしの名前は知ってるはずだけど自己紹介するわ。わたしはフェイト。支倉シンイチローによって生み出された最終大罪、憎悪の魔王」
「え? フェイト?」
「ここに来る人間は基本的に鈴蘭になるしくみなの。永遠に続く一日を、明日を知らない少女の一日をただ手も出せずに花と揺れる。そんな恐ろしい地獄をシンイチローは思いついたのよ」
「フェイト? 無限の花園? 本当に? じゃあここの神は? シンイチロー先生?」
「こうしてシンイチローが考えた地獄を君が見ているということは、シンイチローも君も死んだのね。人は天国は作れなくても地獄は作れる。君にだけ見せて起きたかったのでしょう、世界を救うということの意味とその後に訪れる天国と地獄を。ここはパーフェクトヘルであると同時にパーフェクトヘヴンでもあるの。明日が来ないことを願っていたシンイチローにとっての天国。だが、そこに生きるものにとっての地獄そのものの終わらない永遠の春」
「ここが地獄であれ、天国であれ、僕は死んだんですか?」
「死と言う概念そのものが間違いの根幹。少なくともシンイチローの考えでは。時間と言う自爆装置も不要だと考えたの。そうしてシンイチローの魂が生き続け、最終的にたどり着くはずの楽園。それが『完全地獄パーフェクトヘル・ピュアホワイト・プロミスドランド』。永遠の春へようこそ。ハヤナミ・ルイ」
「ここに先生もいるんですか?」
「捜せば見つかるかもしれないけど。無限に続く花園で道しるべはこの小屋しかない。探しにいくのは辞めた方がいいわ。わたしの知る限りこのパーフェクトヘルが彼の最後の作品で、続きはない」
「元の世界に帰る方法は?」
「こういった心証世界が無数に存在する中、君が元の世界にたどり着く方法はないわよ。諦めることを勧めるけど、まあ今日の一日だけでも楽しんでおきなさい。この地獄はどこまでも残酷で、どこまでもまぶしいから。永遠に大人になれない少女と、永遠に母親になれないわたしたちのものがたりを」
フェイトはそう言うと、レイピアを納めて僕を小屋のなかに入れた。