9 おかしなニート。
リオンの片言の日本語をつっかえつっかえ聞き取りまとめると。
昔、十年位前にここは王国の支配下にあった。けど戦争に負けて御家断絶。帝国の支配下におかれた。
けど王国の家臣の生き残りが復讐と御家再興の為に頑張っているらしい。
それで税を二重に取り立てているらしい。帝国の税は占領地だから、重めでそこからとなると大変らしい。
らしい。らしい。らしい。
らしいの連呼。って、そりゃなぁ。
情報インフラなんぞねーんだし。
その上、又聞き。
重税か。椀の中に視線を落とす。
なら、結構奮発して貰ってんだろーな、コレ。
塩味が薄くて中身がショボいけど。
麦粥の最後の一口を口に運ぶ。
「どったの? 食べないのかい?」
「エ、アア、ウン」
リオンは隣で椀を木匙でかき混ぜている。
「食欲無いの?」
「……ウン」
「どうして?」
「エット、チョコレートタベタカラ……」
エヘヘと弱く笑うリオン。
まさかの理由。答え、間食だった。
いや、違うよな。一欠片だし。
つか、笑顔がイテーよ。ぜってーウソじゃん。
村の事心配なのかな。いや、おじい。か……。
「おじいが心配?」
「ン。ナオラナカッタ……」
「そっか……」ああっ、クソっそんな顔すんなよ。なんでこんないい子が泣かなきゃならねぇんだ!! 間違ってんだろ!!
だけど俺に、俺に何が出来る。ただ無為に無益に無駄に生きて来た、ただのオタクの俺に何が出来る。
オタク知識は何も答えてくれない。
ああっ、勉強しとけば良かった。
俺が医者ならなんとか出来た。
俺が魔法使いなら、いや、それはヤメロ。つか現代日本じゃ、魔法使いにはなれ、るしなりましたけどなれません。
ヤメロ!! 俺を魔法使いと呼ぶな!!
ん。現代、日本?
遠隔医療って無かったか!?
慌てスマホを取り出して検索をかける。
アンテナはバリ3 バッテリーは100%
どうなってんの?。でもイケる。
「フタミオニイチャン?」
「あ、おじい助けられるかも……」
ってバッカ確定してねぇよ!!
なのに期待させて、駄目だったら。
うっわ、胃に来る。
「ホントウ!?」
「ああ。絶対だ!!」
嘘つき。俺の嘘つき。だけどこの約束は本当にする…… 絶対にだ!!
「絶対に助ける!!」
「フタミ! フタミオニイチャン!!」
どっと身体ごと飛び込まれベッドっぽい何かに押し付けられる。
小さく震える彼女の小さな頭と背中を抱き締めて撫でてやる。俺でいいのかと思いつつ、今は俺しかいないと奮い立つ。
寝たまま、スマホを弄る。あ、畜生そもそも機材がいるのか。じゃあ、どうする?
ようし。小判鮫のように笑う。
愚者の弱者の戦い方ってヤツを見せてやる。
「リオン。協力してくれ」
「?」
「YO!!チューバーに俺達はなる!!」
「!?」
リオンは俺の上に乗ったまま、俺の突然の動画王宣言に可愛く小首を傾げた。