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4 寧ろマイナスから始める異世界生活。

エタッター

 

  状況を整理しよう。


 まず、道があり左右に延びている。

 前後が正解かも知れないが、今は路肩の茂みの中で隠れている。だから左右だ。だいたい十五メートル位離れている。野盗さんは美少女剣士に気を取られているので最初の三十メートル位から随分近づけた。


 ってか、逃げろよ俺。


 ば~~~~っかじゃねーの!? と、脳内ハルなんとかさん。


 十二時方向に馬車。


 時計の針の位置に人質With野盗。

 長い剣、ゲーム脳的には刃渡り六十センチのロングソードを右手に、左手は僧衣の少女の首に腕を回して確保している。


 ショートかロングかは騎兵用かそうでないかって話だったか? どうだっけ。


 さぁ、

 首ナイフ問題どん。

 首ロングソード問題だけどな。


 ってかナイフに持ち変えてないなら、

 人質に対しての危険度下がるか?

 あんな重くて長い剣手元で使い難いだろ?


 人質も欲しいがリーチも欲しいって所かね。

 判断ミスじゃねーかな。

 振り回し難いなら、チャンスあり、かな?。


 かなかなかなかなーー?


 で、そこから八メートルほど離れて、

 左手九時方向に美少女剣士。

(俺からすると十一時方向)


 六時の位置に僕様フタミンだ。

 ちょっと見方が変だけどまぁ、説明のしやすさ優先で。


 誰に? 自分にだよと脳内会議。


 手持ちの物資はコンビニ袋With食料飲料。家の鍵にスマホ二台だ。


 俺のステータスシートには三十代のフツメン(ブサ寄り? ほっとけ!!)、運動経験無し、それどころか運動不足のぽっちゃり君で生まれてからこの方ケンカした事ない。一方的に殴られた事はあるけどな!!


 と書いてある。


 どー考えても出来る事ねーだろ。

 言葉もわかんねーし。


 でも、何かねーか、何か何か何か何か何か何か何か何かねーか。何か。


 ……いや、待てよ。ここが剣と魔法の世界 (仮定)ならスマホはオーパーツだよな!?。


 録画を中止してアラームをセットした。


 俺の描いた絵図はこうだ。


 まずスマホを野盗の背後つまり三時方向に投げる。


 相手は突然の気配と物音にビックリするだろう。


 スマホが丸見えになれば珍しいから注視するかも知れない。


 そこでアラームが鳴れば更に倍率どん、

 でビックリ二倍だ。


 そこに背後から強襲して右手にすがり付いてロングソードを奪うのだ。

 いや、右手にすがり付いて動けなくするだけでいいか。


 左手に少女、右手にオッサンで両手は塞がる。


 後は美少女剣士がなんとかすんだろ。

 するよね、してよ、シテクダサイ!!



 パーカーを脱いで右手に巻き付ける。

 最悪ロングソードにすがり付くので少しでも防御力が上がる事を期待。


 左手にスマホを持ち、一度、深呼吸。

 カウントダウンは始まっている。

 気分は一人汎用人型決戦兵器。


 逃げろ!! 逃げろ!! 逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げて逃げよう、逃げて俺、超ニゲテーー!!


 理性と常識はレッドでアラートを鳴らし続けてる。けど異世界という良くわからん状況が俺の英雄願望を刺激。溢れでるヒロイズム。


 というかアレでしょ。

 俺みたいなグズでクズなニートでも、あの娘を助けられりゃ生まれてきた価値とかあるんじゃね?

 とか割りと素で思いました。


 はい。


 ヨッシャ!! ママン、パパン、モモ、俺はやるぜ!!


 5、4、3、今!!


 スマホをシュート!! 破損を恐れて左手のアンダースローで地面スレスレに投げたのが不味かった。


 途中にある小岩にパカーンと当たった。


 パカーーンと。


 やっべ、スマホ逝ったーー!!


 凄くイヤな角度で小岩に命中した。


 大きく浮き上がり飛び上がった。


 畜生、突撃だ!!


 思い切り叫びたいが必死に黙ってダイナミックエントリー。


 野盗が振り返り一秒、アラームが鳴り出して二秒、距離五メートルで

「こっちじゃあーー おらぁ!!」

 と喚いて殺到してーー。



 転けた。



 ズザァーーっと距離0メートル迄近寄れた。

 やったネ!! フタミン。つかやらかしたね!!

 ズボンとパンツが捲れて半ケツで泥まみれになった。


「……」


 って皆さんの沈黙イターー!!


 ですよね!!


 いや、三歩目位で膝が笑って五歩目位で脚が縺れてこの体たらく。


 運動不足のオッサン舐めんな!!


 野盗さんの肩越しに目があった。


「ひいぃぃぃ!!」


 一瞬、娘さんから手を離し振り返り様にロングソードを振り上げ一刀両断エルなんちゃらカイザー。


 きたねぇ花火ならぬ、きたねぇスイカ割りとはこの事だ。


 一秒後の確定未来。


 供されるスイカは俺の頭ですけどね!!


 そしてスパーーンとスイカが空を飛んだ。


 俺のじゃなく、野盗さんのだけど。


 いや、まぁ、あのね。


 この状況で俺みたいなクソ雑魚(ニート)相手に三秒も使えば、そうなるっしょ。


 突きなら俺を殺す位、間に合ったかも知れんけどね……。


 八メートルをおよそ三歩で駆け抜けた赤い雷光。紫電一閃ならぬ、赤電一閃ってとこか。


 スローモーションで野盗の身体が崩れ血が吹き出す。


 生温かく生臭い、生物の生き血が、血液が吹き出し俺を真っ赤に染めていく。


「ひ、ひぃ!!」


 情けない悲鳴を上げて腰砕けで、でも立って逃げようとしたが成せずうつ伏せが仰向けになった。

 そのままずり下がり逃げようと思ったけど、空から何かが落ちてきた。思わずナイスキャッチ。


 スイカだ。


 野盗さんの。


 野盗さんのスイカと目があった。


「ひぃっ……」呼気だけで悲鳴をあげた。


 けぷ。俺は吐いた思い切り。

 スイカさんに汚物を撒き散らさぬよう無駄な配慮と我慢をしてから。


 これが本当のキャッチ アンド リバース。

 その後、人生初めての貧血で脱糞しながら意識を喪った。


 ブリブリブリびちち…… ざえもん。


 これが俺の惨めでカッコ悪い異世界生活のスタートだった。


 無念。


盗賊親玉「ひゃっはー!!」


二三「あ、それ《チャイ》」


赤髪ロリ「ジャア ソコデ《だんすまかぶる》」


盗賊親玉「」





(実は14日まで予約投稿してるなんて今更言えない)

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