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19 Knight's & load。

 城塞都市メルカバ地下封印庫。

 領主、アルフレッド D ローレンツ メルカバ辺境伯はその奥底に眠るモノを、その眼前の整備用のキャットウォークに座り込み、その顔を眺めていた。


 そう、身長八メートルの鋼鉄の巨人の顔をだ。


 鎧武者にも似た朱金の巨人。

 優美なれど暴力と破壊の象徴。


 “本人”曰く「三十五世紀のメカ型ロボット」五菱重工業謹製、第五世代二足有人型航宙戦闘機“火具土”後期生産型。


 それが本来の“彼”のパーソナルなデータであるが、“それ”は意味を喪って久しい。


 五度の大破、八度の中破、数えきれぬ小破を越え生き残ったグラスフェルトと世界の守護神。最早元の部品なぞほとんど残っておらず、随分と“メカ”から“マジカル”な存在にその有り様を変えていた。


 人を守る為に戦うのは本懐であったが、自分が“超高度なAI”から“ 付喪神 ”

 になってしまいそうで科学の申し子たる“彼”はそれだけは不満であった。


 “彼”の機体としての名前は

 “絶対超越無敵勇気合体変形ガンバリオン”。


 命名:タナカ ユウト君五歳。


 あの時代、戦艦だけでなく、戦車や戦闘機に自衛軍に寄付をする事で独自の名前を付ける事が出来た。ネーミングライツ権と言うヤツである。


 まぁ実際の作戦中には呼ばれないのだが。


 これは資金を稼げて自衛軍を身近に感じて貰えるという一粒で二度美味しい政策であった。


 厨二ネームを付けられた機体に乗るのはパイロット的には勘弁してくれだが、AI的には“彼”としては悪くなかった。


 正しく強く勇気あれと寿がれたのだ。

 やる気にならない方がどうかしてる。

 “彼”はそう思っている。


 ただ残念ながら合体変形は出来無かった。

 追加の武装パックが作られていたらしいので合体は可能だったかも知れないが完成前にパイロットと此方にきてしまった。


 それが前の世界の唯一の心残りだった。


 “彼”は五歳の少年の祈りを時間を越えて世界を跨ぎ、永い長い悠久の年月、今もそれを叶え続けていた。



「サージ、機嫌はどうかね?」


「はい、ロードアルフレッド。私に機嫌はありません。ですが貴方が会いに来てくれて嬉しく思います。此処は些か寂しい場所です」


「すまんなぁ、外に出してやりたいのは山々なんだが、契約者がおらんからどうにもならん」


技師(テック)か魔工技師が居れば、仮契約で動けますけどね」


「そしたら脚部の補修部品がいるだろ? 今、金無いんだよね」


「それは何時もでしょう」


「違いない」一人と一機はゲラゲラ笑った。


「まぁ、オマエが動けば確かに楽は楽なんだよなぁ」


「王家の子は見つかりませんか」


「居る。と思ってんだけどな」


「駆動鍵と一緒にですか」


「王が最後に振るっていたのは剣聖の黒の大剣だ。緋剣ゴーシュじゃねぇ、だから……」


「居る。と。早く会いたいものです。“彼”と一緒に戦場を駆け抜けたい」


「戦力的に有難いのに、財布的に有難くないのはどーしたもんかな」

 どよーん顔のアルフレッド。


「 “大海嘯” 中に呑気ですね」


「大部マシんなったんだぞ? 王が戦力派遣してくれたから」


「で当の本人は滅びたと」


「言うなよ」


「人間は不合理ですね。アップデート出来ないのでしょうか」


「それが出来たらもう人間じゃない気がする」


「で打ちますか?」


「やらいでかい」


 そうして二人は碁を打った。

 勝ったのは何時も通りサージだった。


「手加減!?」


「しますか?」


「したらコロス!?」


 存外平和な城塞都市(メルカバ)の一幕であった。

 

名前は所々直すかなぁ、微妙。

我ながらタナカ枠の回収が卑怯臭い。


ネーミングライツは、リペイント代(人件費込み)と登録料を最低ラインでそっからオークションしたら面白いと思うんだがどうだろね。

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