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1 異世界は歩きスマホとともに。

エタリマス

 

  トンネルを抜けるとそこは異世界だった。


「へ?」


 俺は歩きスマホ(危険)から、顔をあげて辺りを見回した。

 辺りは一面真っ暗で鬱蒼とした夜の森の中だった。

 スマートフォンの画面の明かりだけが俺の不細工な顔を照らしていた。


「公園か? 何処だ、此処」迷ったのだろうか。後ろを振り返っても近所のコンビニへの近道である筈のトンネルは何処にも無い。


 オーケー状況を確認しよう。

 まずはラマーズ法で深呼吸だ。

 ヒーヒーフー、ヒーヒーフー。

 これどこで息を吸うんだろう?。


 俺の名前は(にのまえ) 二三(ふたみ)だ。

 年齢は二十九歳と十四ヶ月。黒髪メガネでポッチャリ体型のナイスガイ。服装はジーパンに汚れた国産のスニーカー。上はグレーのパーカーだ。


 今は夜だし九月の末なので、ぼちぼち寒いのよ。


 職業は自宅警備員。この道十五年の最精鋭だ。

 今は小腹が空いたので近所のコンビニにカップ麺やグミ等の菓子やジュースや酒類を買いに外出した帰り道だ。手元のコンビニ袋にそれは入っている。

 また、ヒキコモルつもりで大量に購入したので二枚分はある。


 ここまでは問題ないし間違いない。記憶は大丈夫。


 問題は場所。いくら訓練されたヒキコモリでも自宅近辺で迷子にはならん。ならん…… よね?


 樹齢百年? そんくらい楽にありそうな、

 木々と人が入っていなさそうな下生えで視界が悪い。


 軽く歩いて見るが50メートルほど歩いて移動を断念する。いや、足元見えないし足場は悪いし町の明かりは見えないし無理だろコレ。

 無理無理、僕様は無理な事や無駄な事はしないのさー。

 もしここが、見た目の通り森の中なら、無闇に動いたら遭難してしまう。

 既にしているという事実からは目をそらす。現実逃避は得意だ。なので楽しい妄想や想像をしながら夜明けを待つとしよう。


 あはは、うふふ待ってよー 女児先輩~。


 って、イタイわ。


 そうだ、ここは異世界で俺は召喚された勇者様なのだー。スキルや魔法で無双しちゃうぞーあははは。


 って、サムイわ。


 くそ、現実強えぇ!! カモン俺の黄金領域(エルドラド)!!


 そんな都合のイイモノこなかったので、暇をもて余した俺はスマホで事件事故をググる。問題なく使える。


 アルェ? やっぱ日本なのか。とりあえず続ける。

 でも俺の失踪を報ずるものはない。

 そりゃ、そうか、大の大人が一日二日居なくなって捜索願い出す家族は少ない。

 まして俺には家族がいない。


 うむ。困った。


 スマホで助けを呼ぶ事も考えたが、電話が繋がらない可能性はあり、その事実が解れば心が折れそうなので、その現実に向き合うのを先伸ばしにして避けたのだ。いや、本当にただの迷子なら恥ずかしいし自力脱出できるかもなので様子を見たのだ、うん。


 夜空を見上げる。枝であんまり見えない。が、うちの田舎など目じゃないほどの星の瞬きがそこにはある。

 でも、やっぱ、日本じゃない、よなぁ。

 何故ならみんな大好きオリオン座が見えない。

 さっきまであったのに。


 とりあえず危ないので切り株に腰をかけて座って夜明けを待つ。


 ……夜明け、来るよね?。





  うとうとしながら白む朝日を感じながら、目を覚ます。

 おお。朝だ朝日だ日光だ。素晴らしい。しかし瞼が溶けるくらい眠い。

 不摂生な生活で習慣成人病予備軍な僕様は、当然朝寝て夜起きる規則正しい生活をしていたので眠い眠い。

 ただでさえ休みづらい切り株の上で寝たから、

 寝不そ…………切り株ぅ?。


 立ち上がって切り株を見下ろす。

 切り株というのは木を切り出した後に残る根っ子だ。倒木なら切り株なんて出来ない。つまり人の手が加わっている。

 人間がいるという事だ。ヤッター(棒)。

 ま、この異世界に人が何人いようが何億何兆いようが俺がぼっちなのはきっと変わらないんですけど、ネ。


 正直もう此処が日本でも地球でもない事を内心納得しかけていた。まず空気が綺麗だ。オゾンぽいとゆーか。町の、人の喧騒、気配だろーか、そんな物も感じない。

  静謐かつ透徹された空気の中で俺の下生えを踏みしめる足音だけが響いている。


 圧倒的ぼっち、俺。


 涙が出そうなので上を向いて歩いていたら、天が此処は異世界だとハッキリ俺に告げていた。


 夜明けの空に浮かぶ見事な月。


 そしてその数は二つ。


 美しくも紅い月が地上を睥睨している。

 恐ろしくも黒い月が空中に鎮座している。

 

 じーざす。


 仏教徒の俺がGODに祈った。

 

エタリマシタ


エタ浪さんの次改作にご期待下さい。


応援ありがとうございました!!

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