かくれんぼしよう2
アイディーンは霧になりながら長い廊下を進む。どこか隠れるのがいいだろう。飽き飽きするまで隠れていたら一つの事に集中してもいられない移り気な彼女の事、サッサと帰るだろう。
(仕事場に親が来るとか最悪だ。早く帰ってもらいたい。)
そしたら早足で歩くアイディーンにファルオスが
「アイディーン。良い所にいた」
嬉々としてかけよってきたのだ。アイディーンは、その手を伸ばし、ファルオスの口をふさぎ、
「しーっ。だめです。今隠れている最中なんですよ」
ファルオスはさらに嬉々とした。
「なんだ?かくれんぼか?相手はバドルか?」
アイディーンは興味を示さずさっさとどこかへいてほしい。いや、この人もどこか隠した方がいいかもしれない。
「もっと濃いい人です。危ないですから」
別に意味で危ない。狙われて変に血族の枠にくくられるのは勘弁だ。何やら必死な様子のアイディーン。ファルオスは
「見てくる」
何がそうさせるのか興味しかない。行こうとしたファルオスの首根っこを掴み、アイディーンは
「……清らかなファルオス様でいてください」
だから、あのビッチには近づかないで下さい。
ファルオスはつまらなそうに、
「暇だ。何か遊ぶ物を」
勝手だ。でも今は本当に遊んではいられない。アイディーンは
「バドルと遊んで来たらどうです?」
ていよく追いやろうとしたけど、ファルオスは
「バドルは少しクセがな。嫌いだ」
ストレートだ。それ本人の前では言ったら良くないかもしれない。アイディーンは
「それ…言ったらだめですよ?」
きっと泣くから。
ファルオスの視線が動く。アイディーンからその背後へ。
「ああ。さて、あの女は誰だ?」
そう言ったファルオスの指の向いたアイディーンの後ろ、ゆっくりと振り返った。アイディーンは
「は…母上」
つい母とまた言ってしまった。
セレーディアは青筋浮かべ
「ほほほ。アイディーンったら。母上なんて…」
すでに手に鞭を持っていた。後でしばく。そんな目だ。
しかし、セレーディアは毒たっぷりの微笑みを浮かべ、目上の者への挨拶は欠かさない。
「初めまして。魔王様。アイディーンの母。セレーディアと申します。息子が最近帰ってこない物ですから、顔を見たら帰ろうと思っていたのです。」
礼を尽くした人にファルオスは
「ふーん。厚化粧だな」
どぎつい一撃をくらわす。
セレーディアは化粧濃いけど似合っているし、美人だ。けど、ファルオスは基本女には冷たい。おべっかを使う女は特に嫌いであるらしい。まさにセレーディアはそんな女ではある。
アイディーンはファルオスの口をふさぎ
「ファルオス様ったら。ははは。やだなー女性が正式な場に出るときはこのぐらいが普通でしょー」
すかさずフォローいれる。怒るぞ。それ……
セレーディアはまるで何事もないように笑ってみせる。にっこりと上品で惹き込まれそうな笑顔だが……
「かまいませんわ。私怒ってなんていません。さぁ、アイディーン。いらっしゃい?」
怒ってる。無茶苦茶怒ってるよ。アイディーンは涙目だ。するとファルオスは
「いや、アイディーンは行かない。今から俺と遊ぶからだ」
果敢にも立ちふさがる。
そしたらセレーディアは
「わたしの子供をずっと帰ってこさせないなんて、しかも遊ぶ?何かいかがわしい事…」
「あー‼さぁ、ファルオス様。かくれんぼしましょう。みんなで。ね?そうしましょう」
アイディーンが絶妙に重ねてきた。そんなやらしい事言うんじゃない。
セレーディアは不敵に微笑み
「なら、私が鬼をしますわ。つかまったら、とりあえず、全身お触りの刑にしましょ?」
大変だ。触る大義名分与えてはいけない‼アイディーンは
「逃げてください。ファルオス様‼」
痴女が来る‼
アイディーンはファルオスの手を掴んでは走りだし、ファルオスは
「なんだ。ちょっと怖いぞ。あの女」
たじろいだ。
アイディーンも走りながら、
「普通の人じゃないんで、死ぬ気で逃げてください。この年でお父さんになりたくないなら」
ファルオスは、ぽんやりと
「どういう意味かさっぱりだ」
アイディーンは
「わからなくていいです」
こうして、地獄のような隠れんぼは始まった。




