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恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル4
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家族達の怒り5

ファルオスはギルティロイの重い一撃をかわす。その熊のような巨体から繰り出される斬撃は分厚くて重い剣を軽々と扱い、一撃当たれば大ダメージをくうだろう。


ファルオスはそれを紙一重でいくつもよけながら、

「えーっとなのだ。……本日はお日柄も良くわざわざ御足労いただけて至極光栄にございます。お父様……なのだ」


ファルオスは火に油を注いだ。

「誰がお父様だぁーーーーっ‼」


ザンッ


空気をも凪ぎ払い、剣は固い地面に深々とめり込む。ファルオスは、それも避け、

「なぜ怒るのだ。おめでたい話なのだ。」


まったくわからないと言った顔。

ギルティロイの怒りは増し、手のひらにこもる力はさらに強くなる。ギルティロイは色々思い出す。


『パパ。お花、はい』

『わーい。お菓子買ってきてくれたの。パパありがとう』

『パパって背が高いね。肩車して』

『今日はパンケーキ作ったんだよ。パパに食べてほしくて』


アイディーンのいくつもの思い出。その中でクセの強い子供達の中でいつも素直にまっすぐ育ったアイディーン。

セレーディアに似て美しく、そして、それとは別に生真面目なくらい誠実に生きてきた自慢の息子。


アイディーンは婬魔として生まれた時、この子は汚らわしい一切の物から隔離して育てたかった。

この子はそうして育った。そんなアイディーンは言った。


『将来パパのお嫁さんになりたいなーパパみたいな人がいい』


「う……う……」

ギルティロイは涙を浮かべる。アイディーンは大人になり、そんな事を忘れてしまったかもしれない。結婚なんてしないでずっといるだろうってくらい誠実に生きてきた息子。


なのに帰ってこなくなった。仕事が忙しいって言葉も信じてた。

自分だってそうだ。魔王軍の将軍。そのために家族との時間はほとんどなかった。そんな中、怒った妻は子供をどこかでこさえ、いつの間にか大家族が出来上がっていた。


妻を咎める資格すらない。仕事を理由に家族を犠牲にした。アイディーンもまたそうなのだろう。そう思っていたら、婚約だか何だかの話がでてきた。


相手は上司。きっと権力でねじ伏せたとしか思えない。だって清廉潔白なこの子がこんな事するわけがない。婚約なんかに納得する訳はない。

体から落としたに違いないのだ。


「この、私の子供を傷物にした。許せん」


剣はより、避けにくい足を狙う。それを踊るようにさばく魔王。


ファルオスは

「まだ傷つけてないのだ。それしたら、結婚してもらえないのだ」


ヒュンヒュン


返し切りも、連続突きも、フェイントも。全然当たらない。

目の前の魔王は幻か何かだろうか。魔王軍の大将である自分がこんなにも苦戦するなど……


ファルオスは

「ちゃんと了承もらってから結婚したいのだ。花嫁には幸せに笑ってもらいたいからなのだ。結婚式にはお父さんも必要なのだ。家族揃っての笑顔がないと、花嫁は心から笑って嫁げないのだ」


ギルティロイは

「うるさいっ‼息子が淫魔だからだろ。あの子はそれを認めたくなかった。なのに、無理に純潔を奪い、いいようにして体から陥落させた。この腐った魔王めぇぇぇぇ」


誤解だ。アイディーンは遠く眺めながら、また居心地悪そうにしている。


ファルオスは

「アイディーンは立派な人なのだ。俺がどうしても触れたいと言っても、きちんと断るのだ。それに淫魔だからでもないのだ。俺が好きになったのは固いアイディーンなのだ」


ギルティロイは

「固いはよけいだぁぁぁぁぁっ」


火に油だ。もう何を言っても怒りは買う。

ファルオスは目の前で花嫁の父親ぶっ潰すようなマネをしたくない。恥をかかせてしまうのもどうかと思う。けど、諦めてはくれない。そしたら、拳で殴り会うのがいいのだろうか?


そこまで考えた。

何にしても攻撃する隙があるにはあるのだ。下手に手加減するのはむしろ失礼なのではないか。

そうとすら思える。

ファルオスはそこまで考えると、行動はとても早かった。


「アッパーカットなのだ」

一度消えたファルオスの下からの一撃。


ドゴォ


鈍い音をたててギルティロイの体が舞う。無防備になった体をひょいっと抱えたファルオスは、お姫様だっこでギルティロイの体を受け止め、すたっと着地する。


ファルオスは

「気持ちはわかるのだ。けど、俺は決めている。アイディーンを幸せにするのだ。もしそれができていないというのなら、お父様には指導してもらいたいと思うのだ。いたらぬ身なれど、想う気持ちはご家族の皆さんと変わらないのだ。どうぞ俺をこの家族にむかえてほしいのだ」


「……ほざけ。俺は認めない。魔王だからってなんでも思い通りになると思ったら大間違いだ。」


その時

「そろそろ諦めてはどうかしら?私のダーリン」


そこにはいつの間にか駆けつけたセレーディアの姿が。

マリーやミイユもいる。


マリーは

「パパにはあたしもおるやん。みんなやっておるし、もう認めてあげてや‼」


ミイユも

「そろそろやめないと、本気で嫌われてしまうと思うんですけどね~」


三人はアイディーンの所に言って、アイディーンの背中を押す。


アイディーンは女の子の姿で、まっすぐ澄んだ瞳を向ける。

「お父さん。俺は結婚します。誰がなんと言おうとも……」


父はショックを受けた。初めて見た娘の姿をしたアイディーンがはっきりとした意思を持って言う。

ファルオスはまだお姫様だっこをしてたギルティロイをそっとおろす。この戦いはもう決着はついている。


ファルオスは

「アイディーン……」


その美しい瞳を見つめた。ファルオスはアイディーンのもとへ歩みよりながら、アイディーンの前でひざまづき、その手を取った。


「改めて、婚約を受け入れてくれるのか?」


それを見るギルティロイの切ない瞳。


アイディーンは迷いなく言う。

「はい。ふつつか者ではありますが、お嫁さんにしてください」


二人の視線が行き交い、その回りで複雑な瞳をした者をある。涙を流す者をいる。

父は地面にどさりと倒れ付した。アトレイシアはハンカチで涙を拭う。ダイールはグスンと鼻をならし、ティアトはまだ気絶してる。


そして、誇らしげな者に混じって、バドルがおぅおぅと声を殺して泣いている。


ファルオスはアイディーンの手にキスをして立ち上がり、アイディーンを抱き締めた。

アイディーンは逃げなかった。

まるで腹は座ったらしい。家族に見つめられ、婚約は正式な物となった。



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