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恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル4
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家族達の怒り4

アトレイシアとアイディーンの剣は競り合って火花を散らす。

男の姿のアイディーンともゆうに張り合えるアトレイシア。その太くもない腕から繰り出される剣技は強烈だ。


戦闘に特化した種族。

ライオンやオオカミ。そういった種族の者は長じて攻撃力と素早さに恵まれる。


アトレイシアの目は戦闘によってすがめられ、本来の美貌の顔を歪ませ、唇は引き締まる。


アトレイシアは

「兄様……殺してでも止めてみせるっ」


もはや、話も通じない。アイディーンは鍛えてきた剣技でぶつかるけど、戦闘だけに特化した種族の剣技まるで桁違いだった。


真空が発生する。それがアイディーンが遠く離れていても襲ってくる。アイディーンはその度に身をかわしていた。


アイディーンが勝てるとしたら、魔法だ。


(アトレイシア……)


アトレイシアは怒りで防御をしない。誇り高きライオンの血を継ぐその種族は戦いに、引くという選択はない。

死して進み続ける美学。そうと決めた物に曲げると言った事のできないプライドの高さ。


アトレイシアは少なくともアイディーンの言うことは聞いた。でも今のアトレイシアは聞かない。その目は死すらいとわない気高さがあった。


アイディーンは

「……一段と強くなった」


アトレイシアは

「そうですわ。剣技を磨く事でしか、兄様を待てなかった。私を待たせた兄様が悪いのです」


等と言った。

アトレイシアはこの見た目から美しいお嬢さんと思われる事が多かった。でも違う。すぐにまわりとつまずき、力で解決する。

そして、どこにいても祭り上げられ、衝突する者は潰してきた。

そう言った問題児なのだ。


それでもアイディーンは知っていた。弱い者いじめはしない。自分からケンカはふっかけない。そして、まとめ上げたチームを大切にする。

気高きライオンの血はこうしたところにも出ていた。


アトレイシアは

「この家族を捨て、魔王等と言う者に心を奪われた兄様。あなたの裏切りを許すことはできない」


アトレイシアの剣は緩まない。剣だけでは防戦一方。アイディーンの傷つけられない剣はたやすく太刀筋を見切られ、そうして手加減されているアトレイシアは傷ついた顔をして

「このまま結婚すると言うなら、私を殺して行くがいいですわ」


スピードを上げていく。


その時、大蛇の尾がふいに地面を凪ぐ。

本性をあらわし、暴れているティアトの蛇の尾だ。あちらも激しい戦いを繰り広げている。セレーンとティアトは何か話している。


ティアトの声だ。

「お前は……許せたか?お兄様が仕事を理由に、帰らなくなった。高潔なお兄様が、あの汚い魔王の手に落ちたのだ。その日がどれだけ続いたか……154日……私と会わなかった。魔王の汚い手で触れられた裏切りを許せるはずもない。私のほっぺたをつまんだその指が、今は違う。汚れてしまった」


そんな声だ。

またほっぺたか……どういう事か。みんなほっぺた、ほっぺた言ってる。


しかも、ティアトの中じゃ、勝手に魔王の汚い手にベタベタ触れられていると……夜帰らないのも色々誤解が生まれているようだ。


アトレイシアにも火をつける。

「兄様が……結局、高潔な顔をしたビッチ……あの母と同じ。淫魔の本性をさらけ出して抱かれるなど……そんなの兄様らしくない。」


剣はスピードを増し、今までのが抑えていた物と知る。アイディーンの力ではかなわない。傷つけることもできない。家族に剣を向けた事はなかった。アトレイシアは激しい気性でもいつも素直でまっすぐだったから。


アトレイシアは苦しげに

「そんな汚くなった兄様を私が救います。無理な関係を迫られ苦しんでいるんでしょう?そう言って下さい。私達、家族の元に帰って来て下さい」


アトレイシアの手からも力が緩む。アイディーンの事を信じ、魔王の手から救いたい。そうして来たアトレイシア。なのに、こうして剣を交えている。

兄と戦う気なんてなかったアトレイシアにとって裏切りであり、許せない。けど、救いたいのだ。家族だから……


アイディーンは

「……まさかとは思うが、まだ手を出されてはいない……って言うのはわかっているか?」


アイディーンは薄々感じていたそれをたずねる。

なんか魔王によってベタベタに汚されてしまってるとか、やらしい事をされているとか、家族の中でそうなってしまってる気がする。


アトレイシアは

「……淫魔であり、こんなに麗しい兄様に対してそんな紳士な対応できる訳はありません。こんなに素晴らしい兄が同じ家にいるとわかってて、はぁはぁしないなんて事、絶対にありませんわ」


アイディーンは

「結婚するまではそれは許さない」

冷静な目で言う。少しあきれた水色の瞳。


アトレイシアは

「嘘です。私が魔王なら、さっさとひんむいて権力でいいようにしてから、体を陥落させ、あれよあれよという内に、私なしじゃ生きれない体にします。何度襲おうかと思ったか。兄様は知らないのです」


アイディーンは

「……今知った……」


妹のそこはかとない強烈な愛情。あのまま一緒に暮らしていたら間違いが、おこるやつだ。


アイディーンは女の子の姿になり、華奢な肩幅は、この戦場に似合わない小綺麗で高潔な少女としてたたずむ。

「見ろ。これが俺のもうひとつの姿」


アトレイシアは叫ぶ

「ああああぁぁぁぁぁぁっ、麗しい。麗しすぎます。兄様ぁ‼」

さらに息を乱し、心も乱した。


アイディーンは失敗したかと思う。アイディーンの少しツンとした目に、動揺が走る。


アトレイシアは

「はぁはぁ、兄様……兄様であり、姉様……素晴らしいですわ」

ヨダレをじゅるりとぬぐっている。ライオンの補食前といった顔だ。


アイディーンは

「アトレイシア。俺は自らの伴侶は自らの手で決めるつもりだ。それを家族にもわかってもらう。俺の大切な家族にも」


アトレイシアは

「それは決められるのは力をもった者。そう、そんな姿になって私に勝てる訳もない」


小柄な少女の姿になったアイディーンにアトレイシアは飛び込んでいく。


アイディーンは使いたくなかった魔法を使う。

「アイスロックプリズン」


カチーン


丸い氷。それに拘束されたアトレイシア。

遠くでティアトも同じ目にあってる。それを見て、そうかと思ったのだ。アトレイシアを傷付けず動きを止められる。


アトレイシアは

「に……兄様」


アイディーンは

「家族を捨てた……と思っているんだろ?それは違う。いつも大切に思っていた。それを感じてもらえなかったのは俺の不備だ。まだ正式に婚約披露するまでいってないから、家族を不安にさせてしまった。それは謝りたい」


アトレイシアの頭をポンポンと撫でる。アトレイシアは

「兄様……私は結婚なんてしてもらいたくない。私達の兄様でいてください。みんなの兄様で……」


アイディーンは

「家族でなくなる……と言うことがあると思っているのだろう。兄を取られると。でも兄でいられない訳でもない。アトレイシア、お前の兄はいつまでも、誇り高い兄でいる。俺を兄のまま、いさせてくれるか」


アトレイシアは涙を浮かべ

「兄様はどこへいったって兄様。……私の兄様です」


アイディーンは少女のようになった顔で微笑み

「そう。変わらないというのに、まだまだ子供だ。アトレイシア、いつかわかる。愛しい人に出会ったら」


アトレイシアは

「……兄様」


それは、魔王を愛しい人だと言っているのですか……?


アイディーンは

「それと、本当にまだ、手は出されていない。これだけは理解しろ。あの魔王には結婚するまでそんな事はない」


アトレイシアは

「……結婚するのですね」


アイディーンは少しほほを染め、少しうつむく。高潔な瞳は恥ずかしそうに揺れ、そのピンクの唇から

「ああ……」


小さくてもはっきりと聞こえた。








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