家族達の怒り3
みんなちゃんとした理由で戦ってるなか、理由もわからず戦ってる人が1人。
爪を伸ばした男、バドルだ。事情も何もわからないまま敵と言うことだけはわかる。側近として守らなくてはならない。何より、ひいてはアイディーンを守ることになる。
「ふんっ」
爪を降り下ろした先に、黒い猫科の獣人はひゅんっと消える。素早い。
ダイールは
「こっちだよー」
振りかざした剣が二本。二刀流の剣はバドルの両手の爪に受けられる。
キン、カン
バドルの攻撃力の強い一撃をはたき落とす。なかなかやる。
スピードといい実に素早い。こんな能力の高い者がいたとは……側近レベルだ。
バドルは
「あと少し大人になったら一緒に働けそうだな」
ダイールは
「魔王のためなんか絶対働かないからね‼」
ダイールは踊るように宙を舞う。実に筋がいい。そこから繰り出される斬劇はそこいらの魔物ならなんとかなっただろうが……
「ふんっ」
バドルの爪はそのいかなる斬撃も叩き落とし、表情も変わらない。
ダイールは
「くっ、うざい‼」
イライラし始めたダイール。
戦闘を重ねていない者。力に奢って全力を出さずに来たもの。バドルはそれが手に取るようにわかる。
いつの間にか防戦一本のバドルの優勢になり、必死に攻めるダイールの顔には疲労が滲んでいく。
それでもダイールは剣を打つ手をやめない。荒野には絶え間ない剣撃の音が響き渡る。それは自らの心の怒りを表しているかのようだ。
ダイールは
「お前……お前はなんでそっちに味方するんだ‼魔王なんて滅べばいいんだ」
息を乱した。それを見て、バドルは、爪を振り上げ、ダイールはそれを防御する。つばぜり合いだ。それもバドルが少し力を込めれば、このバランスは崩れ、いつでも一太刀打ち込める。
バドルはもう勝負は見えていた。
「猫の者よ。それは愛する者が望んでいない。俺の戦う理由。それは愛する者の心を守ること。」
ダイールの耳に確かに聞こえた。愛する者……
「まさか、お前……」
バドルはフッと笑い
「笑うがいい。」
そしたらダイールは
「バカな……お前になんの得がある。魔王が死ねばお前は結ばれる可能性もあるって思わないのか」
バドルは
「そんな卑怯な手段を使ってまで愛してもらおう等と思ってはいない‼」
キッパリと言った。ダイールは二倍ほど目を見開き、そして力を込める腕は震える。
戦う気持ちすらも折れてしまった無垢な少年のような心。まだまだ磨けばさらなる高みへと引き上げることもできるだろう。
バドルは自らの爪を引き
「お前の負けだ。」
ダイールは、剣を取り落とし
「……違う。俺は」
バドルは
「そう思うなら剣を取れ。自分が正しいと証明してみせろ」
そういったら、ダイールにこの男は大きく、そしてとてつもない力を持った巨人のように見えた。
自分ではかなわない。力も。心も……
ダイールは
「……俺の負けだ」
認めた。
バドルは、口も戦術の1つだと言うことも言っておきたい。相手の心を乱し翻弄された者に勝利などない。その辺も若かった。攻撃ばかりで消耗した所も若さと言った所。戦術やなんかを指南するべき者が必要だ。
バドルは
「お前は筋がいい。俺が直々に指南してやる。力も心も磨く事だ」
ダイールはそこに、おでこをつけ
「師匠‼」
まさか師匠だった。なんかもっとなかっただろうか。まぁいい。バドルは
「よし、ついてこい」
そして、歩き出した。
……で、みんななんで戦ってるんだ?
それはまだわかっていない。バドルはまだ戦っているアイディーンとファルオスの方を見た。




