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恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル4
59/67

弟よ1

アイディーンは仕事も終わって、少し気分転換でもしようかと庭へとやって来た。庭には季節の花が咲き誇り、とても美しい。

この前作ったウッドテーブルや、ウッドチェアー。

そして、ひそかにアイディーンのために作られたブランコがある。


こうして仕事の合間に揺られるのには最適で、疲れた自分へのご褒美タイムと言ってもいい。

そんなひそかな楽しみを胸に、アイディーンは庭へとやってきた。


……と、噴水は涼しげな水しぶきを吹き上げ、美しい女性や魔王、等々をかたどった白い石像が水をかぶる。その中で


「……」

静かにポーズをとる水色の人魚。透けたヒレ。そして背中を向け、水をかぶる姿はセクシーだが……


アイディーンはあきれたように

「こんな所で何をしている」


人魚に話しかけた。人魚はくるりと振り向く。男だ。そして、しっとりとしたタレ目で

「ご機嫌麗しゅう。お兄様」


人魚はそう言った。

アイディーンは頭をかかえ

「セレーン。こんな所で何をしている」


なぜ勝手に魔王城に侵入し、勝手に庭で石像のふりして水をあびているのか?


セレーンと言われた男は長い髪をシャラリとさせ

「この噴水にはもうすこし足りないのです。それを私がおぎなっていました」


そう言いながら、セレーンはシャチホコみたいなポーズをとる。セレーンは

「美しいでしょう。これでもっと素晴らしい庭になりました」

セクシーなポーズのつもりなのかもしれないが、そのポーズは辛いだろう。


アイディーンは

「もう充分だ。来るなら言ってくれればいい。勝手に入るな」


アイディーンはそこら辺にあるセレーンの服やなんかを拾った。セレーンは

「ふっ……昔みたいにかわいいって言ってくれないのですね。婚約したからですか?」


さらなるポーズを決める。横にごろんと転がり、そして上半身をこっちに向け、長い髪の毛をサラァー。

そう、このセレーンは自己愛が大変強く、美しい自分というのに常に酔っている。しかも、それだけならまだしも、非常に手が早い。


きれいな人魚って姿を利用して、海に行っては人魚姫ごっこに興じている。しかも、男でも女でも美しい物を大変好む悪食だ。


アイディーンは

「かわいいなんて年でもない。それに、婚約の事は誰に聞いた?」


セレーンは

「ミイユです。言いふらしていますよ。止めてはいかがです?」

さらなるセクシーポーズをとる。両腕を頭の所で組み、ボディーラインを見せつける。


アイディーンは

「あれはそう言うコントだ。安心したら帰れ」

このセレーンの事、婚約なんて聞いたらめちゃくちゃにする気だろう。セレーンは


「なら、もう結婚しない……という事でよろしいですか?」

セレーンはやっとこっちに寄って、噴水のへりに手をかけた。


アイディーンは

「そうだな。だから帰ろう。早く水から出てくるんだ」

そう言ったら


「もう私のほっぺたはいいようにはして下さいませんか?」

等と言う。


アイディーンはそっとセレーンのほっぺたをつまみ、

「うん。いいほっぺだ」

昔のようにそう言ってやる。すると、セレーンは汚れ放題のやらしいばかりに成長したのにはそぐわない育ちのいい幸せな微笑みを浮かべた。



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