音楽を奏でるのだ1
「暇なのだ……」
ファルオスは意味深な視線を投げ掛け、アイディーンを見る。ファルオスはあきらめない。机の前に座り、できるだけ邪魔になるよう、ぐでーんと占拠する。
アイディーンは
「……」
静かに見つめている。かまえば、とたんに遊んでくれ攻撃が始まる。猫とおんなじ。どかそうとしたのを遊んでくれたと勘違いしてじゃれてくる流れだ。
ファルオスは
「……」
アイディーンも
「……」
無言の戦いが続く。それに負けたのはアイディーンだった。
「遊びます……?」
結局そうなってしまう。ファルオスは、ぱあぁぁっと笑顔を輝かせ
「遊んでくれるのだ‼」
それはそれは、天使のような笑顔を浮かべる。
アイディーンは本当に幼いなぁ。等と思いながら、
「じゃあ、ファルオス様。これからの魔王は趣味をもたないといけません」
いきなりアイディーンがぐいぐいくる。
ファルオスは
「趣味……なのだ?」
アイディーンは
「そうです。ここに楽器があります」
まさか、これを見越して用意してたと言うのだろうか。アイディーンはケースに入ったそれを取り出し、パカッとあける。
「鍵盤ハーモニカと言うものです」
見せつける。
ファルオスは
「ほわわ。楽器なのだ。」
ファルオスは驚いているが、これが幼稚園生が初めて演奏する楽器とは気づいていない。アイディーンはそして、楽譜を取り出す。そして
「楽譜です」
「楽譜なのだ‼」
ファルオスは乗せされている。
アイディーンは
「難しいですよ。できますか?」
ファルオスは手をあげて
「できるのだー」
本当に子供のように言った。
アイディーンは
「厳しいですよ。でも、奏でることができた時は音楽と一体になれる事でしょう。それによってもっと難しい曲もできるようになります」
ファルオスは
「おおー。すごいのだ」
乗せられている。
アイディーンは
「じゃあ、この楽譜をみましょう。キラキラ星です」
まさか、曲はキラキラ星だった。見る人が見たら、本当になめている。やってられない。そんな状況だが、ファルオスはただかまってもらえて嬉しい。
アイディーンは棒を持って
「じゃあ、まず楽譜の見方から教えますね。」
音符の位置。そして、それと鍵盤の位置。それを教えていく。
アイディーンは棒で鍵盤をさし
「はい、ドーーーー」
ファルオスは人差し指で押す。
カチ
音が出ない。
アイディーンは
「ファルオス様。ふーーーです。」
息を吹き込まないと音がでないのだ。
ファルオスはチューブになった管にふーーーっと息を吹き込む。
ドーーーー
やっと、音がなった。アイディーンは
「そうです。次はレーーーー」
棒で鍵盤をさす。
レーーーー
なかなか地道な作業が続く。なのにアイディーンは楽しそうだ。そしたら、ドアが開く。
「やれやれ。なんの音だ?」
バドルが、音を聞き付けてきたのだ。
ファルオスは
「レッスンの最中なのだ」
バドルは
「……」
鍵盤ハーモニカなんて吹いている子供扱いされてるファルオスの立ち位置があわれだ。バドルはしかし、チャンスだと思う。そう、ここはいいところを見せて、アピールするチャンスだ。
バドルは
「ふふふ。ついに見せる時が来たみたいだな。俺はサックスが吹ける」
勝った顔をした。
ファルオスは
「なんなのだ?サックス?」
アイディーンは
「……これと、同じような息を吹き込んで奏でる楽器ですよ」
そして、リア充の楽器ですよ。それは言わない。
バドルは
「なんだ。これを練習しているのか?」
キラキラ星だ。
アイディーンは
「なら、1週間後、みんなで演奏しませんか?」
これぞ、情操教育。みんなで力を合わせて何かやる。これだ。幼稚園でもよくあるやつ。
ファルオスは
「えー。バドルとやるのだー?」
嫌そうだ。
アイディーンは
「音楽はみんなで奏でても楽しいんです。そうでしょう?バドル」
バドルはファルオスに勝ちたい。それにいいところを見せたい。まさに理想的な環境。
「ああ。楽しいぞ。いろんな楽器が合わさると新しい音楽になるんだ」
もっともらしい事を言う。
アイディーンは見直した。なんて見本になるやつだ。……っていうか、大人だし、こんなもんか。幼稚園も義務教育も全部終わってる人だった。
ファルオスは
「アイディーンも一緒にやってくれるのだ?」
きくので、アイディーンは
「トライアングルをやります」
三角の金属の懐かしいやつ。
チーン。
アイディーンは、まさか涼しい顔で金属の棒でそれを鳴らした。
ファルオスは
「……楽そうなのだ」
アイディーンは
「だって主役を輝かせるためにはこれぐらい控えないと。メロディーは頼みましたよ」
コロコロ転がそうとする。
「やるのだ‼」
ファルオスは転がった。




