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恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル3
47/67

好きでこえれぬ物1

アイディーンの執務室で、ファルオスはいつも通りだべりながら

「アイディーン。俺のほっぺもにもにしてほしいのだー」

うっとりと見上げる。が、仕事中のアイディーンは頑として聞き入れない。


アイディーンは

「……」

無言で差し出したのは楽しい四字熟語と書いてある本だ。


ファルオスは自らのやる事を悟った上で、

「これをさせたいなら、アイディーンもそれ相応の対価が必要だと思うのだ」

などと交渉してくる。まったく、こしゃくな真似を……

「では、俺の仕事してる対価はいったいどうやって払う気ですか?」


ファルオスは

「ぐっ……デートで払うのだ」


アイディーンはふっと笑って

「安く見積もられた物ですね」


そう言ったら

「……一生大切にして養うのだ」


そう言った。アイディーンは

「……却下。もっとあるでしょう?」


手を止めて、水色の瞳が見つめる。ファルオスはこうした瞬間、幸せを感じる。

「あ、子供のかっこしてもいいのだ」

そう言った。そしたらアイディーンは

「……え」

魅力的な提案だったらしい。あきらかにキュンとした顔してる。ファルオスは

「子供の姿の俺と何したいか言ってみるのだ」


そしたらアイディーンは

「公園いきたいです……」

などと言う。ファルオスは

「もっとなのだ。」

アイディーンは

「動物園いきましょう‼」

そう言う。なんてちょろいのだろう。アイディーンがコロコロ転がる。動物園、つまりそれはデートだ。ファルオスは

「ここに薬があるのだ。ほら、その仕事と俺、どちらが大切なのだ?」


アイディーンは

「ファルオス様のほっぺが大切です」

キラキラした目を向ける。ファルオスは

「素直な嫁なのだ。飲むのだ」



ごくっ、ぐふっ



ファルオスは少し戻しそうになりながら薬を飲んだ。そしたら、その姿が変わる。



ポン



そして、子供になったファルオスを、アイディーンは優しくしゃがみこみ、

「ああ、かわいい……」

心の底からそう言うアイディーンはまるで熊のぬいぐるみを抱き締めた女の子のようなリアクションだ。ファルオスは

「んーーーーっ」


ちゅ


アイディーンにキスをした。すると、

「ファーちゃんってば。おませさん」

アイディーンは男の姿のままだ。



あれ?


ファルオスはもう一度

「ちゅーなのだ」

アイディーンの唇を重ねた。アイディーンは静かに目を閉じる。しかし、どこか子供にするような態度だ。


ファルオスは

(……男のままなのだ)

まさか、アイディーンは子供の自分にはそう言った気持ちを持っていないのだろう。純粋にかわいいとだけ思っているのだろう。そしたら

「うーん。かわいいほっぺ」

またほっぺにたいするいじりがはじまった。


アイディーンは

「かわいい。かわいい。かわいい」

ほっぺとほっぺを触れあわせ、ぐりぐりしてる。


ファルオスは

「あっ、ほっぺが幸せなのだぁ」

それでも幸せには違いない。好きな人にぎゅっとされている。幸せすぎる。すると


「おいっ、アイディーン」

バドルだった。勢いよくドアを開けた。


アイディーンは

「今忙しいんですー」

ファルオスのほっぺを堪能してるのである。そしたらバドルは

「アイディーン、いい物を持ってきた」

そう言った。アイディーンは

「期待はしません。でもなんですか?」

一応見るだけ見る。そしたらバドルは何枚かの紙切れを差し出す。それはファルオスからは見えない。アイディーンは

「うきゃーーーっ」

壊れた。


アイディーンはその紙を手に取りたそうにしてる。

「それをもっとじっくり見ても……?」


そしたらバドルは照れたように

「ああ、じっくり見てくれ」


ファルオスの目線は子供の背の低い物だから見えない。

「見えないのだー。見たいのだー」


アイディーンはかがんで何枚かの紙切れを見せる

「じゃーん。赤ちゃんです」

そう言った幸せそうな顔。


その写真に写ったのは、色の黒い、目のくりくりの子供だ。赤ん坊のバドルだ。


バドルは照れたように

「かわいいだろう。この頃はかわいいと言われていたんだ」


アイディーンは

「ああ。そうだな」

もはや聞いてない。


ファルオスは

「………俺も」

言いかけて気づいた。自分には赤ん坊の時なんてなかった。それに気づいたファルオスは表情がなくなった。

アイディーンはファルオスの様子に気づく。

「ファルオス様?」

するとファルオスは走っていってしまった。バドルは

「なんだ?すねたか?俺がかわいすぎるから」


アイディーンは

「……」

その手に持ってた写真を見つめ、気づく、ファルオスにはこんな頃なかったと言う事を……







「う……くっ……」

ファルオスは泣いていた。子供の姿で、隠れたくて武器庫の影に隠れた。誰も来ない子供が入り込んだらわからなくなるようなそこで、考えていた。


アイディーンは子供が好きなのだ。

そして、赤ちゃんも……


バドルにはその頃がある。それは死ぬほど羨ましかった。それでも、本当に悲しかったのはその事ではない。

生まれてこの方、誰かに負けたなんて思った事はない。バドルに負けたと思った事はない。それは外見も内面も。負けてる物があっても努力しだいで取り戻せるもの……

でもあれだけは違った。赤ん坊……

ファルオスは膝をかかえたまま、初めて感じた敗北感に身を震わせた。



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