表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル3
35/67

煩悩を飛ばす滝1

アイディーンは今日も素知らぬ顔で、執務室の机の上に書類を広げている。静かに仕事できてる時間はいい。

いつ誰かがそこの戸を開けるのか……それを思うと憂鬱になるものの、どうやら足音がしたからそこにいるらしい。なのに、一向に入ってこない。それをさっきから知らないふりして仕事に精を出しているのだ。


そんな固く閉ざされたドアの向こう。また足取りが聞こえる。さっきの足音より軽い気がする。これは……ファルオスだろうか?


アイディーンは耳を澄ませる。すると、何やら声が聞こえてくるのだ。





まずはファルオスの本来低くて美しい声。しかし、最近はめっぽうそんな声を出す事はなくなった。能天気な軽い声だ。

「こんな所で何してるのだ‼」

ちょっと鋭く響く。怒ってるようだ。


バドルは低い落ち着いた声で

「俺がどこで何してようとお前に関係無いだろ」

ちょっと取り乱して言った。バドルも怒ったのか、イライラしているようだ。どこにいても自由だとしても、ずっとそこでドアに張り付いてたのはお前か……もっともな言い分だがちょっと怖いな。


ファルオスは勝ちを確信して見下してくる時の声で

「ここはお前のようなゴキブリが来る所ではないのだ。さっさとアイディーンの前から消えるのだ」

めちゃくちゃひどい事を言ってる。


バドルはメンタル弱い。少しぐっとくる物をこらえた声で

「まだ負けた訳じゃない。俺は諦めない。だってお前はポンコツのアンポンタンだろ。どう考えても負けてない‼」

踏みとどまっている。もはや聞いただけ気の毒になる。


ファルオスは更に調子に乗って

「それが嬉しい事にアイディーンは俺と結婚するのだー。もう旦那なのだ。だからバドルはさっさと森にでも引っ込んで蝶々でも追い回して犬の姿でわふわふしてたらいいのだ‼」

めちゃくちゃヒドい。


バドルは我慢の限界きたらしい。

「なんだとーーー‼」

ついに怒った。




アイディーンはすべて筒抜けで、どうしようか考えていた。

今のやり取りだけでファルオスがどれだけ調子乗ってるかもわかってしまったし、バドルもひっそりと想っているらしい事もわかってしまった。

どちらもどちらなのだ。そしてあの二人、どちらもあまり大人でない。とりあえず、ドタバタ聞こえてくる。何か取っ組み合っているのだろうか。


アイディーンは諦めたようにドアを開け

「二人とも。声が大きいですよ」

冷ややかに見つめる。


二人の子供みたいな様子。組み合って、ほっぺた掴みあってギューッと引っ張りあっている。こんなの弟や妹でも5才ぐらいまでしか見なかったぞ。本当に子供だな……


「やれやれ。二人ともあまりにも幼くて話にならないですね」

アイディーンは冷たい目のまま、腕を組んでカツカツと靴底を音をさせて歩く。


ファルオスは人の上に立つ者なのに、憐れみを知らない。恋に破れた男をバカにし、勝った等と言ってなじる。ここはもっと懐の深い所を見せつけて、敵わないな。って思わせるぐらいの気概はほしい。


バドルはきちんと振ったはずだ。まずキスした後一回。結婚しろって言われた時は即座に二回ぐらい振った。計三回か。あまり振るのも気分が悪い。メンタル弱い男に何度も言うのは気が引ける。さっさと身を引いてほしいのだが。



アイディーンはストンと椅子に座る。水色の瞳が二人の方を向いた。

「子供っぽい人は嫌いです。二人とも御自分の姿を鏡で見てはどうですか?今のお二人のご様子は見るにたえません」

毅然として言う。


バドルは少し目を輝かせ

「なら、俺の方が大人だ。そうだろ」

希望を見いだした。確かに……若干大人ではあるのだ。しつこいけど。


ファルオスはまだまだ勝ちを確信してる。だから強気に見下し

「すぐ泣く奴は大人じゃないのだ。俺以下なのだ」

非情だった。


バドルは傷付く。恋に破れ、性格の悪い何もできないクズに自分以下とこき下ろされ、プライドはズタズタだ。何もバドルはファルオス以下ではない。スペックの高い、いい男はバドルの方だ。ただ俺が趣味が悪いだけで……


やはりバドルは

「泣いてなど……」

ズビッとしてるし、アイディーンの前で泣きたくないが為にこらえてるような状態だ。

これを見て、勝ったとしか思わないファルオスのクソガキぶりには惚れた身であれど、引く所はある。


ファルオスは

「鼻水汚いのだ」

振られて凹んでる奴に追い討ちかけるな‼


アイディーンはバドルにティッシュを差し出す。バドルは女神を見上げるようにアイディーンを見た。

「いいから、鼻をかめ。そうすれば別に汚くない」


そう言ってやると

「アイディーン……」

やはり女神と思う。


アイディーンは思う。今回の婚約の件でファルオスはすっかり調子に乗ってしまった。婚約を受け入れて、何もかも自分の思う通りになると思ってる節もある。こっちの気持ちも考えずゴリ押ししてくる所や、バドルに対しての態度。もはやアイディーンは自分の物ぐらいには思ってそうだし、この調子乗りをのさばらせていては良くない。

悪いが、最高潮にダメ魔王なの実感してる。こんな調子ではいずれ女の味をしめて、さっさと女囲うダメ魔王になってしまいそうだ。そんな状態になっても『愛しているから良いのだろう?』などとわがまま放題するのは目に見えている。


好きは好きなのだが、この薄っぺらさには危機感を覚える。なぜなら二人っきりで対峙した時、力では押さえきれないからだ。簡単に抱かれて、ぽいって捨てられるかもしれないのだ……


アイディーンは急に弱気になる。

「婚約やめよっかな」

ボソッと言う。


バドルは

「アイディーーーーーン‼」

希望を見いだしまくった。もはや、風はこっちに吹いている。


ファルオスはさっきまでの余裕なんて吹いて消えたように詰め寄ってくる。

「待ーーーつーーーのーーーだーーーー‼」

アイディーンのそばまで来て早口でまくしたてる。


「婚約したのだ‼結婚しように対して、この前結婚しましょってなったのだ。もはや、これらの事象から考えて、二人はもう結婚と言う契約を交わした物なのだ。したがって嫁なのだ。もはや、不倫なのだ。違法でハレンチな行為なのだーーーー‼」


詰めかけて来て、理論攻めで来た。なかなか考えて物はしゃべるようになったが、まだまだだろう。

「いや、まだ結婚してませんし、嫁じゃないです」

引いたような目で見るアイディーン。


バドルがクスリと微笑む。さっきまでの傷付いたメンタルも復活。次はこっちが余裕ぶる。

「ほらな。おかしいと思ったんだ。アイディーンにはもっと尽くす夫が似合うってな」

もはや、それが俺だ。等と言わんばかりだ。


アイディーンはどいつもこいつも……と思いながらもバドルもちょっと後で捻るとして

「まぁ、もう少し考えましょうか。大人になってもらわないと、なんだかこの身をまかせられません。すぐに触りたがるのも嫌です。子供とか産まれた時、旦那が子供だったら話にならないです」

少しはこっちの言い分も聞いてもらおうと思った。まずは話し合い。言わないと気付かない事もある。それを聞いてどう思うか考えてもらいたい。


ファルオスは、むーっとして

「この前大人になろうとしたら断ったではないかーーーー‼」

などと、バドルの前でこの前の話をする。



ちょっとなんでそんな事言うの⁉



バドルは案の定ぎょっとして、

「なに⁉」

いつの間にかそんな艶っぽい展開に⁉

バドルの思わぬ所でこのバカな子供の魔王はシレッと大人になるような事をしようと思ってたと言う事だ。なんて奴だ‼


アイディーンは慌て、

「この10才‼もっと内面の事言ってんです‼もう、そういう所がやなんです」

赤面した。男の顔でもかわいい事……

そう言った内容にはウブだ。


バドルは悟る。アイディーンは言おうとしてる。俺を愛してるって事だ。

「そうだ。誠実こそ旦那に求められる事だ。そうだろ?つまり俺だ」

もはや、悟って上げるのが大人の男に求められる条件……


そんな顔してたからアイディーンは

「え?違います」

とっとと否定する。早めがいい。


バドルは

「のぉぉぉぉお‼」

アイディーンはシャイだから素直になれないんだ。そう思う事にする。それでハートのHP1残る。


アイディーンは少し乙女の表情で

「大人で思いやりのある人が旦那に求める条件です。相手の気持ちも考えずにいるようではまだまだ……わかっていただけます?」

そう言って、少し首を傾ける。その可愛らしさと、言ってる事をあざとく通そうという気配は感じる。いくら清純そうに見せても婬魔だ。あざとく人を振り回してくる。


ファルオスは認めない。

「いーーやーーなのだーーー‼結婚するのだ。約束したのだ。さっさと認めて白無垢がウエディングドレス着るのだーーー」


いつもなら、こういったわがままな様子にポキッと折れていたが、アイディーンは

「じゃあ出掛けましょう。みんなで滝にでも打たれに行きませんか?」

まるでデートにも誘うかのように言ってくる。


滝……?


みんな意味がわからない。どんな脈絡で急に滝が出てきたかわからないからだ。


アイディーンはニコッとする。

「ちょうど行こうと思ってたんです。特別連れて行ってさしあげます」


上から来たーーー‼


「……行くとも。ファルオスは留守番でもしてろ」

崖っぷちの男、バドルはきびだんごにつられたアニマルのように着いていく事を決意。


ファルオスは

「い……行くに決まってるのだ。嫁と男を二人っきりになんてさせないのだ」

まだ嫁と言う。


アイディーンはそれもスルーと流して

「できるだけ強目の滝に行きましょう。煩悩が108つ飛ぶくらいに」

不吉な事を言った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ