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恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル2
29/67

海に行こう3

いつまでたっても海に入ろうとしない二人を促すように、波打ち際にたったアイディーン。ビーチサンダルを脱ぎ、浅く足の甲をさらう波がサラリサラリと打ち寄せる。

海の色は透明で奥にいくほど青が濃くなっていく。いつの間にか足の甲に砂がのり、このまま沈んでいってしまいそうだ。煌めく波が白く泡立って、それはいさぎ良いぐらいに引いていく。


少し深い場所で波に挑みかかるファルオス。

「わっほーい」

浮き輪で波に揺られている。今も大きな波にザブーンと揺らされ、そのしぶきや、全身を揺するうねりに激しく上下している。


いや、そこ波強すぎないか?


バドルも涼しい顔で

「絶好の波が来てるな。こりゃ、乗るしかない」

サーフボードで波に向かっていく。ボードに乗ったまま波を掻き分け、力強く進んでいく。

アイディーンは嫌な予感がした。


そしたら、

「のおぉぉぉぉぉーーーー‼」

ふいに、バドルの悲鳴が。


アイディーンがそっちを見ると、バドルは何やら浮き輪のような物を付けて浮いている……いや、浮き輪なかったはず。ボードだったよな。


はて?

なら、あの水玉の白いの何だ?


そしたら、バドルの横から三角の白いはんぺんのでっかいのが浮かんできた。バドルより大きい三角。まさか、でっかいイカか?エンペラとかそんな部位か?


まさかバドル巻き付かれている。イカは何十メートルもありそうだ。バドルに巻き付いた浮き輪のようなのは触手。水玉は模様のようなのは吸盤か。そうかクラーケンか。


アイディーンはいつものように涼しい目で見ている。ファルオスも同じくいつもと同じはしゃぎ倒している。


バドルは見捨てられそうって気付いた。

「見てないでそろそろ助けてくれーーーー‼」

そう言い残して、ポコンと水に沈んだ。


ファルオスは口に手をあて、

「自分でなんとかしろなのだ」

クスッと笑ってる。悪い顔してるな。


しかし、ファルオスもとたんにシュボンっと浮き輪だけ残して消える。たぶん足捕まれて引っ張られたようだ。


ほら、明日の我が身だ。やれやれ。


アイディーンは海に飛び込んだ。青くけぶる海の中。透明な中、いくつもの吸盤の付いた触手がたくさんアイディーンの近くにも張り巡らされている。

それをスルリと掻い潜り泳いでいると、剣を持ってくるのを忘れた事を悔やんだ。まさか本当にクラーケンが出るとは……こいつらうまい汁でも出してるのか?それとも朝の星占い最下位の奴でもいたか?


しかし、魔法を使えばなんとかなる。アイディーンは手元に力を集中させる。それを叩きつけると触手は氷の魔法でカッチカチになった。怯んだイカの触手は水の中を暴れ狂う。


その向こうで、イカはファルオスとバドルをきつーく締め上げてるらしい。歯を食い縛り、息もできてない。いくら魔物でも空気の無い所では30分くらいか?まぁ、水の中でそれをされるとこっちも戦うのが不利だ。


アイディーンは両手を広げ、広範囲におよぶ吹雪の魔法を放つ。地上なら氷のつぶてや吹雪が傷つける魔法だが、水の中だと、強風の変わりに波が荒ぶった。それが渦となって氷のつぶてがイカにも当たる。イカが怯んだのち、触手が怒り狂って迫った。アイディーンは岸を目指す。アイディーンを掴もうとした触手はすんでの所でかわし、陸に乗り上げる


アイディーンは

「そうだ。こっちだ。」

浜まで上がるとついてきた触手が何本も浜の上まで高くかかげられ、アイディーンを叩き潰そうとせまる。


ベチンッビタンッ


アイディーンは、からがら避けて見ると、浅瀬まで来たクラーケンのエンペラから胴まで見えた。その体の近く二人も何とか息ができるところまで上がれたらしい。しかし、まだ巻き付かれてる。


ファルオスが触手でネリネリ締め上げられながら

「吸盤プチプチして、ヌルヌルして嫌なのだーーーー‼」

溺れそうになりながら言ってる。


バドルも、半泣きで

「早く助けてくれーーーー」

全身ぎゅぎゅってされている。


アイディーンはブチッと切れそうだ。さっきから俺しか戦っていないのだが⁉

「何言ってる。お前らも戦え‼」

そう言ったら


ファルオスは

「体動かないのだーーー‼」

波間に揺れながら言った。


二人の近くにはクラゲが漂ってた。あれのせいか。状態異常マヒか。バドルはともかく、仮にも魔王が状態異常など……それでもほってはおけない。水とマヒは窒息の危険があるからだ。



アイディーンは腹をくくった。

「まったく。焼くのよりマシと思ってください。」

そう言ったが、クラーケンとまさかタイマンとはついてない。果てしない体力やボス級の強さなのだ。なのに頭が悪くて魔王の言う事聞かないし、海の問題児なのだ。もはや一撃で決める。


アイディーンの体の回りに魔力が満ち、冷気が集まっていく。キラキラとしたスターダストが真夏の空の下、たゆとい始め、それは力を込めるとアイディーンの周りの空気に広がり真夏の空気は凍り付いた。


叩きつけようとした濡れた触手の表面はパキッと凍って、冷凍イカゲソだ。それはそこを基盤にどんどん本体に凍結が進んで行く。


アイディーンは叫ぶ

「ロックブリザード‼」


さっきできたダイヤモンドの粒が瞬く間にサッカーボール……そして、最後にはバランスボールぐらいになって、イカに向かって無慈悲に降り注ぐ。


ゴ、ゴッゴゴッコッ


なかなか当たると痛いと思う。俺はくらった事は無いけど。


アイディーンはイカもろとも氷の塊に打たれてボコボコにされていくバドルとファルオスを見た。当たり前だが巻き沿いはくう。アイディーンの回りに発生した冷気は海を凍らせ、真夏のビーチはとたんに真冬の荒ぶるオホーツクのような姿に変えた。

情け容赦ない氷の塊にイカはのたうちまわり、凍った海から逃れようとめちゃくちゃに暴れ、氷を割る。たまったもんじゃない。そんな様子でイカは、触手を緩めて二人を残し海の深い所へ逃げて行った。


半分凍った海に、上半身を投げ出し、逃げる事もできずに大ダメージを食らった二人はちょっとピクピクしていた。やはり、このぐらいで死ぬ二人でもないらしい。


アイディーンは助けてやったんだから感謝しろ。とは思いながらもちょっとやりすぎたかな。ぐらいには思っておいた。

「やれやれ、サマーベッドに寝かせておくか」

アイディーンは二人を凍った海から運び出した。


そしたら、気絶した振りをしていたファルオスが抱きかかえたとたん

「んーーーーーっ」


口を突き出してきたので、アイディーンは遠ざける。

「こーら。痺れが抜けるまで寝てて下さい」


そしたらファルオスはニヤッと笑い

「別に痺れてないのだー。ちょっとカッコいいアイディーン見たかったのだ」

このバカはそう言った。


アイディーンはペチッとファルオスのおでこ軽く手のひらではたいて

「カッコいい魔王の姿を見せればよかったのに」


そう言ったら、ファルオスは

「今から見せるのだ」

そして、ファルオスは油断したアイディーンのほほにキスをした。


「ギャーーーーーーーー」

アイディーンは悲鳴を上げた。






バドルが起きる頃、アイディーンはそこの置いていたクーラーボックスをファルオスの頭にかぶせて、ファルオスは気絶して、そこに大の字で砂の上で倒れ伏していた。

クーラーボックスの中に入っていた氷やお茶なんかもその辺に散らばっている。こんなに荒れてただろうか?


バドルは

「え……どういう状況だ?」

引きながら言った。


アイディーンは肩で息をしながら

「許さんって事だ」

言った。何かファルオスは逆鱗に触れたらしい。気絶してる間に何かあったようだ。


アイディーンは

「取り敢えず見せしめに首から下、埋めてカニにでもたからせましょう。手伝って下さい」

冷静さを失って砂かけようとしている。しかし、面白そうだ。


バドルも犬の血が騒ぐ。

「よし埋めるぞ」


ファルオスはくぐもった声をクーラーボックスに響かせ

「起きてるのだー埋めるのやめるのだ」

そう言った。


アイディーンは

「やです。埋めます‼」

ガンとして曲げない。


そしたらファルオスは

「う……そんなに言われたら埋められてもいいのだ」

早々に折れた。ファルオスはクーラーボックスをひょいっとやって、なぜか照れ照れしている。


アイディーンは力強く言う。

「そして、スイカがわりに割ります」


ファルオスはとたんに逃げだした。







暮れ行く夕日を見つめ、海には沈んでゆく半月のようになったオレンジの塊。海にはさざ波が光を揺らす。夏の夕暮れはどこか冴えた風が吹く。

バドルのバーベキューセットの上には海産物が多数。端っこにはヤドカリもいる。バドルは食べるらしいが、先にこちらは食べないと伝えておいた。サザエみたいに焼かれているのがあわれだ。


ファルオスはアイディーンの機嫌がなおる頃シレッと戻ってきて、お腹減ったのだー等と言った。


アイディーンは水色の瞳でジロッと見つめ

「次あんな事をしたら置いて帰りますからね」

等と言う。


バドルはそろそろ気になる。

「何やったんだ。まさか……俺が気絶してる間に……」

色々良からぬ想像をしてしまう。


アイディーンは慌てて

「そんな事はない。ちょっと……いや、何もない」

あからさまな様子だ。あまり濁していてもあやしいとしか言いようがない。


ファルオスがにこーっとして

「ほっぺにちゅーしただけなのだ。なのに頭かち割られそうになったのだ」

オープンだった


アイディーンは無言で怒り狂い、そっとヤドカリをトングで掴み、ファルオスの皿にポン。


アイディーンは冷たい顔で

「愛があれば食べれるそうです……」

復讐だった。


ファルオスは

「やぁ⁉やなのだぁ‼」

皿を遠ざける。このヤドカリちょっとでかくて怖いのだ。それにヤドカリの食べ方なんてわからない。


バドルが

「まず捻って中身上手にくるくるって回して身をとってみろ」

親切のつもりなのか教えようとしてくる。


アイディーンは

「食べたら許します。花火も参加させてあげます」

もはや、なんかペナルティがないと許せない。


ファルオスはやったと言う顔で

「食べるのだー」

機嫌良く食べようとしてる男をアイディーンは気味の悪い目で見た。


うわっ、よく分からない貝の身みたいなのかブルンって貝から出て来た。


うわ………気色悪い。


そのそれを、少し嫌な目で見つめたファルオス。そして、ゴクンと喉を鳴らし、

「俺は男なのだ。カッコいい所を見てるのだ」

勇気だして言うけど、カッコ良くはない。


アイディーンの水色の美しすぎる視線。

「早く食べてください」

でも鬼だった。


ファルオスは

「妻はすぐ急かすのだ」

少し笑ってパク。


こいつ、迷いなくいったな。もう少し迷ってもいい所だぞ‼

それに妻じゃない‼


ファルオスは

「うーん……意外とうまくて嫌なのだ」

ボリボリと殻まで噛み砕く。そしてゴックン。確かに嫌な感想だ。うまいんだ。食べないけど。


バドルは

「そうだろ。エビやカニと同じ、うまいんだぞ」

胸をはるが、同列に扱うな。である。


アイディーンは網に焼かれたデデーンと乗ったでっかい海老をみる。海老様がここにいらっしゃるのだ。ヤドカリ風情が網に乗ってるんじゃないってくらいだ。


「なら、俺は伊勢海老をもらおう」

アイディーンは今回は活躍したから、これぐらいは当然。エビを真ん中でバキッと割って、贅沢にも尻尾の所を剥いてパクっとやった。身がプルン。


ああ……ぷりぷり。

あぁ……うまい。


ヤドカリなんて食べてバカだ。ここに伊勢海老あるのに……


ファルオスは隣で欲しそうにしている。

「うまいのか?アイディーン」


聞いてくるので、

「ああ。うまい……」

悶絶したいくらいうまい。甘いぐらいだ。


そしたらファルオスは素早く手を伸ばし、行儀悪くそのままアイディーンの手ごとつかんでパクっ。


アイディーンは

「こらっ、ヤドカリ食べた口で‼」

ヤドカリのエキス付くだろ。気味の悪いヤドカリ汁が‼


ファルオスはもくもくやりながら

「男にはやらないといけない時があるのだ。間接ちゅーなのだ」

やたらキラッとした瞳で言う。


なので、アイディーンは、

「………残り、バドルどうぞ……」

もはや、みんなで回して食べて相殺しようとしてる。もはやこれは食べない。


バドルも

「ああ。まぁ食べるとしよう」

ちょっと引きながら言った。





薄暗くなった中、濃紺になった浜辺を照らす小さな光。その火の着いた花火をファルオスが丸くクルクル回しながら走っていた。白い砂浜や笑顔が写し出されてあっちやこっちや駆けていく。

子供だな。そんなのアイディーンがやったのは何歳までだったか。サマーベットに腰かけたアイディーンは風に吹かれた髪をおさえながら見つめる。

すっかり日の沈んで音もしない中、ここにだけ光が指す。遠く吹いてきた風は涼しい。もうすぐそばに、帰らないといけない物悲しい空気が、この火が消えたらやってくる。


隣でサマーベットに腰かけたバドルが

「まったく。はしゃぎ倒して、楽しそうだな」

そう言った男の声は遊び尽くして疲れてしまったか。さっきまで一緒に走り回っていたと言うのに。


アイディーンは

「疲れたか。ん?」

疲れてる訳もない男に聞いた。


そしたらバドルは、

「いや……俺は……」

少し困ったような顔をした。そしたら、バドルは静かにアイディーンを見つめた。


目だけはファルオスを見つめているアイディーンのほほに顔を寄せていく。



ちゅ………



アイディーンは目をぱちくりする。そして、息も止まる気でバドルの顔を見れない。

「まぁ、これでイーブンって所か?」

バドルが左の耳元で言ったら


「アイディーン、花火終わったのだーーー」

暗くなった浜辺に、ファルオスの声が響いた。



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