海に行こう2
海に向かう道の先、白い砂浜も見えてきた。ファルオスは海が見える崖のあたりから、もう飛び込めばいいのだと言った。だからそれをやんわりと嗜め、やがて、たどりついた道の脇に車を止める。
輝く太陽。車から降りると直撃する。サングラスをかけ忘れていた目に、白浜の白は突き刺さるようだ。すぐにサングラスをかけ、麦わら帽子の後頭部のあたりぎゅっと押した。
その脇を我先にと飛び出す二人の男。
ファルオスは
「なっ、バドルはパラソルを刺していたらいいのだ」
そう言って、並走しようとするバドルを牽制する。つまり、ついてくるなだった。
バドルは
「ケチ臭い事言うな。まずは走るぞ‼」
とたんにバドルの姿がシュンっと黒い狼に変わり、服が置いていかれてる。
アイディーンはサングラスで気だるくヤシの木にもたれ掛かり、セレブのように優雅にそれを見て
「暑苦しい奴等だな」
自分だけ涼しく言う。取り敢えず、パラソル刺そう。
車の後ろから折り畳まれたパラソルを出して、手頃な辺りまで持っていく。そこにパラソルを刺し、サマーベッドを設置。
完璧。
これで、俺の城は完成した。ついでにテーブルを出し、そこにクーラーボックス置いて飲み物も手を伸ばしただけでとれる。
遠くでバドルとファルオスが追いかけっこして行ってしまったから、ここは天国だ。煩わしいは消えて青い海、白い雲、砂浜は凄く綺麗でサラサラー。アイディーンは遊ぶように砂を蹴ってから、サマーベッドに腰かける。
やはり砂浜は暑い。氷やフルーツが入ってる。冷えたオレンジを剥いてパクン。
うーん。最高。夏、ばんさい。
アイディーンが一瞬で夏を賛称していると、ファルオスが
「やっと巻いていたのだ。もはや、あればバドルじゃなくて、バドルの記憶を有した犬なのだ」
クタクタになったファルオスがぐったりとパラソルの日陰に避難する。
アイディーンはファルオスに残りのオレンジ渡しながら
「バドルはどうしたんです?」
あの犬の姿を探した。白い砂浜の先、見えない。
ファルオスは
「ヤドカリガジガジしてたのだ。もはや人間ではないのだ」
その隙に逃げてきたと……
そして、オレンジを口にして、うーん。フレッシューって顔をした。
アイディーンは
「なら、あの岩場の辺りですね」
その辺を眺めた。遠く見えるちょっと小高くなって見えない辺りか。
そしたらルンルンした足取りで、黒い犬が尻尾を振り、何かくわえてやってきた。それを浜に置き
「ヤドカリだ。うまいぞ」
そう言われたので、アイディーンは
「いや、結構です」
冷たい目で拒否した。その親切は親切じゃないです。
バドルは犬のまま、
「甲殻類の味でうまいぞ。後で焼いてやる」
新鮮な海の幸かのように言った。……焼いても食べないぞ。等と思っていたら、
「さて、水着でも着るか。先に着てたんだがなー。服どこ行った。」
そう言ったバドルは急に人間の姿に戻って向こうに向かって歩いてく。
待て‼
俺は今男だが、女にもなれる奴の前でフルチン一瞬見えたのだが……少しは気を使え。気軽に全裸なるな‼
まぁ見てたからどうと言う事もないのだが、景色が悪い。せっかくの海がけがれた。
ファルオスが
「俺も脱ぐのだ‼見るのだ。アイディーン」
近くで言ったので、
「あっちの木陰でどうぞ。紳士のマナーって物を覚えて下さい」
アイディーンはファルオスの水着を渡した。
ファルオスは
「バドルは紳士じゃないのだ。俺は紳士だからそうするのだー」
わざわざそう言って行ってしまった。
やれやれ、フルチンいくら並んでても俺は男だから構わないけど、あれを真似て下品な魔王になるのは勘弁だ。
アイディーンはサマーベッドに横になる。
バドルが
「アイディーン、着替えないのか?泳ぐだろう?」
水着に着替えたバドルがそう言った。
アイディーンは
「いや、俺はのんびりさせてもらう。バドルは楽しんできてくれ」
お気遣いなくだ。むしろほっといてくれると嬉しい。
バドルは
「アイディーン、そう言わずに足だけでもつけてみろ。暑いだろ。な」
バドルはそう言って強引に手を引く。
海に来た事でテンション上がってるな。やれやれ。
そしたらファルオスが
「ドロップキックなのだ」
地面と平行に飛んできた。その揃えた足がバドルのほっぺた直撃する。
ゴギッ
首の骨、いってないか?アイディーンの手からバドルの手が離れ、バドルは
「貴様、魔王と思ってれば」
ゴギッとかいった割にはほっぺた押さえるにとどまっている。さすがに魔王の側近。丈夫だな。
ファルオスは怒りながら
「ハレンチにも手を繋ぐなんて許さないのだ‼」
着替えてる隙にイチャイチャするなんて言語道断なのだ。そんな顔をしている。
バドルは
「別に足つけてみろって言っただけだろ。それだけだ」
そう言う。
ファルオスは認めない。
「違うのだ。どうせそこの岩場に連れ込んでなんかやらしい事考えていたのだ」
アイディーンは二人を見守る。そんなふりしてそっと下がって再びパラソルまで行く。そっと座る。やれやれ、見物しとくか。
バドルは
「なんだと。俺が……そんな……そんな事……」
岩場でやらしい事に、やたら恥ずかしくなったらしい。海と言ったらアバンチュール。バドルもそんな事妄想しなくもなかった。しかし、そんな強引にグイグイいかない。流れ無視して岩場に連れ込んだりしない。
ファルオスはそんな様子に
「やっぱりなのだ。やらしい男なのだ。そんな男にアイディーンは触らせないのだ」
確信を深めた。
バドルは身ぶり手振りで
「違う。断じて違う。アイディーン、違うんだ」
まるで、誤解だと言うように向いたバドル。
あっ、こっち向いた。
アイディーンはどっちでもいい。何かしよう物ならこちらも側近ナンバー1としての実力を見せるだけだ。
「なら、ビーチフラッグ対決ー。勝った方の言い分認めます」
アイディーンはヤル気なく言う。なんか面倒臭いから、サクッと解決したい。
どちらも自信あるだろう。これなら公平に決着つきそうだ。
二人には浜辺でうつ伏せで寝といてもらう。ジリジリと暑い太陽と焼けた砂が男達の肌を焼く。二人の視線が交錯して互いを牽制する。
アイディーンはサクサクと白い砂をビーサンで踏みながら、浜辺の端っこまでやって来て、良く見えるようにパイナップル置いといた。
アイディーンは戻ってきて、
「チクチクするから気をつけて持て。はい、よーいスタート」
まさか、雑なスタートで始まるビーチフラッグ対決。
二人はそれでもアイディーンの言葉に集中してたらしい。すぐにでも筋肉が躍動する。立ち上がると言うか、身をひるがえしたヒョウのように低姿勢のまま走り出す。
不安定なサラサラの砂が巻き上げられキラキラ輝く。筋肉では上をいくバドルに、バランスよく筋肉が乗ったファルオスは見劣りするものの、スピードは互角。
アイディーンは後であのパイナップルでフルーツのスムージー作るのだ。なので、パラソルの下、クーラーボックスからバナナとマンゴーとオレンジを用意して、器用に剥いていく。
ついでにミキサーにミカンの缶詰めドバー
勝負の行く末?
そんな物はどうでもいい。早くどっちでもいいからパイナップル持ってこい。
ミキサーも発電機に繋いであるし、いつでも準備オッケーだ。
そしたら、豆のようになった二人が、まだパイナップル取り合って向こうでドンパチやり始めた。俺の俺のとパイナップル引っ張りあったり空を舞ったり。
ちょっと大切にしろ。ビーチフラッグは、取った後も取り合ったりする競技じゃありません。あきれて見ていると
「俺のなのだー手を離すのだー」
などとファルオスの声が聞こえる。
バドルも
「俺のだー先に取っただろ」
絶対譲らない。
ファルオスは
「同時なのだーそれなら、こっちの方が早かったのだ」
取り返す。争うなー。同時か。ややこしい。
アイディーンは
カラン、コロン
フルーツの入ったミキサーに氷を入れる。もはやスタンバイはOKだ。早くパイナップル持ってこい。暑いんだ。ここ地味に。
そんな暑い中、二人は浜辺の端っこで
「俺のー」
「俺のだー」
楽しそうだ。アイディーンはやれやれと、氷を口にしながら待った。しばらくしたらパイナップルそっちのけでそこに転がっていた。二人は仲良くほっぺたつねりあって兄弟ゲンカみたいだ。
アイディーンはパイナップルを拾って無益な戦いを見もしない。
「そろそろスムージー作りますよー」
涼しい背中を向ける。
声だけかけたらファルオスは
「すふー?」
ほっぺたつねられながらだった。
バドルもつねられながら
「ほひゃ、離へぇ。へーので離ひぅ。いーな?」
なんか言った。
二人は
「へーの」
パッ
同時に手を離し、離れて歩くアイディーンの背を追った。アイディーンはそ知らぬ顔でパイナップルも剥いていく。それをミキサーに入れて、蓋をする。これでオッケ~。
ギャワーーーーーー
けたたましい音と共に中のフルーツが回転していく。暑い所では南国のフルーツがいい。出来上がったら、3人分取り分けて
「はい、完成」
アイディーンはそれを二人に渡す。
ファルオスは
「かんぱーい。なのだ」
バドルも
「おう。ん、うまい」
3人はそれぞれ口をつけた。細かくなった氷の粒が清涼感ばつぐん。アイディーンはそこのサマーベッドに腰をかけた。
うーん。夏の海……最高。
口に広がる真夏のフルーツは恋がはじけるようの味がしたとかしないとか、ファルオスは思ったとか、バドルが思ったとか。




