BBQしよう2
牛をさばききったバドル。昔はワイルドな暮らしをしてきたバドルは生活スキルが高い。狩った獲物をさばくのはお手の物だ。
(ついでにビーフジャーキー作るか)
まだそんな余裕すらある。なんせ、牛二頭分もある。急いで開けてもらったコック長の冷蔵庫はなかなか大きいのだが、それでも入れる事が出来なかった分はさっさと加工しないといけない。
ビーフジャーキーなら長期保存も出来る。時間をかけて作れないから、味は薄くなるが、それは致し方ない。自分のおやつにしよう。
皮やなんかは防具として売れる。これで、なんとか冷蔵庫に入らなかった分はなんとか行き先が決まった。
下味つける時間が足りないが、早々に燻し始めた。庭の片隅に燻製の仕掛けが勝手に作られ、勝手に燻し始めている。バドルはやっと一息つき、
「ふーっ、まったく」
なぜかいつもしわ寄せがくる。
ファルオスがやってきて、
「何作ってるのだー?」
子供みたいな顔で話しかける。
バドルは
「ああ、ビーフジャーキーだ。長期保存できるからな。」
とは言っても、時間をかけて作っていないので、味の抜けた犬の餌のような物になるのは間違いない。バドルはなかなかそう言う物も食べるが、動物系のモンスターでなければうまいとは言わないだろう。
あげるとも言ってないのに、ファルオスは
「そんな木の棒みたいになった牛は食わないのだ」
早めに否定してきた。
「ぐっ……」
ビーフジャーキーをバカにするなんて……仮にも犬科の狼男、バドルには許せない。あげるなんて言ってない。もう言ったってあげない。
ファルオスは
「それよりバーベキューなのだ。今日できないなら作戦延期にする。どうなのだ?」
バーベキュー?
そうだった。
バドルは思い出す。あまりにも牛さばいたり、牛に下味つけたり、燻したり。忘れていた。
「で、バーベキューは今夜でいいな。」
まさか、夜までには間に合いそうだ。思ったより段取り良く進んだ。コック長も手伝ってくれたからだ。さばくのはバドルが。コック長は台所で肉の下ごしらえしてくれてる。
バドルは
「ここまで来たら野菜もやってやる」
むしろ、ファルオスにできる事などない。
まさか、面倒臭い段取りを全部やってくれようとしている。ファルオスは
「やったのだ‼」
流れるようにお任せする。
バドルは内心ほくそ笑む。バカめ。女は良くできる男に弱いって事、わからせてやる。アイディーンだってそうだ。
なんだかんだ言って、よく働いた後、さりげなく誉めてくれるのだからな。バドルは俄然やる気になった。
ファルオスは執務室まで走る。
「アイディーン。アイディーン‼」
美味しい所はさっと持っていく。バーベキューのお誘いは自分の役目と見た。
アイディーンは眉を寄せ
「さっきからバドルと何してるんですか?」
ファルオスも咎めたいと思っていた所だ。そっちから出向いてくれるなどと……いい度胸だ。バドルと共謀して何をたくらんでいる。
ファルオスは、
「バーベキューなのだ。今夜‼」
ニコーと両手をあげた。
子供か‼
アイディーンは気づく。
だから、あの牛か‼
牛一頭はバカだ‼
買えばいいのに。
アイディーンは牛二頭いるとは知らない。知ったらより怒るだろう。
ファルオスは楽しそうに
「食べきれないほど肉あるのだー。だから、呼んだのだ。お母様を」
言う。
アイディーンは
「おか………」
その言葉に違和感を覚える。ファルオスの母は、先代の魔王様と一緒に亡くなられた。なら、ファルオスの言う、お母様とは………
「……まさか、私の母を呼ぶと言う事ではないですよね?」
ファルオスはニコーと笑い
「義母様なのだ。」
ぎゃーーーーーーー‼
やめてくれっ、あいつは色んな事をめちゃくちゃにしてしまう‼
嵐を招き入れるようなマネをしないでくれ‼
ファルオスは
「もちろん、ご家族も連れてどうぞって手紙送ったのだ」
なんだとーーーーっ⁉
やめろ!あの女、真に受けるぞ。一家揃って来たらどうする‼
アイディーンは
「そんな手紙、いつ送ったのですか?」
ファルオスは
「さっきだ」
たぶん牛が用意できてからか。ならきっと大丈夫。忙しくて来れないとかなるはず。セレーディアもあの屋敷にまだいるとは限らない。
くそっ、ろくな事しないな。サプライズのつもりかもしれないけど、逆サプライズだ。
アイディーンは書類をまとめ、引き出しにいれる。もはや、知ってしまってはこうしてはいられない。
「とりあえず、バーベキューなんですね」
何はともあれわかった。逃げたいけどわかった。
アイディーンは段取りを確認せずにはいられない。
「用意はできているんですか?」
まだ牛がどうなったか確認できていない。腹がたって、わざと放置していたのだ。
ファルオスは
「バドルとコック長がやってくれるそうなのだ」
つまり、ファルオスは何もやってないらしい。
バドルはともかく、コック長か。安心できる。どんな無茶振りも耐える彼の手腕なら、時間も考えて段取り良く整うだろう。お陰でアイディーンは、ただセレーディアの心配だけしてればいいらしい。
とは言え、迷惑ばっかりかけられてる彼の事、ほっとくことはできない。アイディーンは、
「そうですか。では、私も手伝って来ましょう」
そしたら、ファルオスは、
「アイディーンは何もしなくていいのだ。女の子になって花を添えてくれるだけでいいのだ。パーティーの主役は 着てくドレスでも買いに行くのだ。選んであげるのだー」
この、何もかも、都合いい通りにしてこようと……さりげなく女子扱いするな。それ、デートだろ。
アイディーンは
「手伝わない訳にはいかないでしょう‼ドレスなんて着ません。」
そう言うと行ってしまった。
ファルオスは
「手伝いとか、いい嫁なのだー」
もう嫁に貰ったような事を言った。




