BBQしよう1
アイディーンは何も知らなかった。仲の悪い二人が手を携え、バーベキューを企画している事を。
「バーベキューなのだ」
その日あまり頭の良くない魔王ファルオスは言った。
1日に振り回されて、疲れきったバドル。ブランコ作りなんて面倒臭い仕事の大半はやった。耐久性の気になる物だったから、手を抜かないで作りたいバドルはこだわった。そしたら、そのほとんどを自分でやってしまっていたのだ。
ファルオスは無難に計測や、ペンキ塗り。ちょこちょこと下っぱのような事はやってくれた。
ブランコが完成したから疲れて揺られていたバドル。なのに、まだまだ終わりじゃない事を知る。出来たら終わりなんて、そんな甘い事はなかった。
バドルはもう、おもりは嫌だ。
わがままばっかり言って自分がやった方が早いのに、むしろファルオスは何もしなくていいと言いたくなる。アイディーンのようにはうまく転がせない。
「いや、コック長にでも頼めばいい」
面倒見のよいコック長に丸投げしようとした。自分より親身になってくれそうだ。
そしたら、ファルオスは
「なんか避けられているのだ」
一度は頼もうとしたのに、うまい事逃げられたのだろう。
だからこっちに来たか……
かわいそうにコック長に嫌われているようだ。かわいそうなコック長。コック長こそが、かわいそうだ。
バドルは、気のいい人にまで避けられるなんて、よっぽどだな。などと思う。なんか迷惑かけたんだな。
ファルオスはそれでも諦めなかったらしい。
力んで熱弁する。
「だから、アイディーンを喜ばすために、バーベキューを俺達の手ですれば、評価が上がって、アイディーンが少しは女になるかもしれない」
意気揚々と言う。
バドルは、とたんに
「やろう‼」
力強く言った。
単純な構造の男だった。バドルは男のアイディーンは好きじゃないが、女となれば、誰より好きだ。清純な身持ちの固い女で、婬魔で自分だけにデレてくれたら最高だ。そんなアイディーンの女の子姿想像すると、やたら張りきってしまうのだった。
そんなこんなで男達は仕事をほっぽりだして消えてしまった。
バトルもファルオスはどこ行ったーーーー‼
アイディーンは怒りでプルプルしてる。
灼熱の燃える大地。見渡す限り植物はない。植物の種は風で運ばれた先、すぐ炭へと変わってしまう。ここは、割れた地面から、マグマや火が吹き出す。どこか薄暗いのに、赤々と光が灯る。
こんな命を感じさせないここにも、命はある。火ヤモリ、火カエル。意外にも普通にいる。
バドルは汗を拭いながら、
「まずは肉だ。これがうまくないと、バーベキューなんてただの焚き火だ」
やたら暑苦しくそう言った。
ファルオスはもっともだと思う。肉ばかり食べる男達にとって同意である。
ファルオスは黙ってついてきたけど、なんか変な所にいるのだ。と思う。
「どうしてここなのだ?」
ちょっと道間違ったじゃすまないぐらい変な所にいるのだ。牛の肉なら牧場に行けばいい。それでなくても、本当は肉屋で買えばいい。
こんな牛がいるだけで、焼き肉になってしまいそう環境で何をすると言うのか。おかしな話だ。
バドルはやたらドヤ顔で
「炎牛だ」
若干イラッとくる顔で言った。
あっ、なんか牛か?
ファルオスはバドルがバカだと思っていたのを改め、話を聞く気になった。
バドルは得意気に
「肉なら高級な物もたべた。しかし、この牛に勝てる物はない。食べたとたん、肉汁も染みだし、油も上品だ。臭みもない。まさにアイディーン好みだろう?」
もう勝った気でいるのかはわからないがイラッとする。しかし、まさかよく考えている。知らないうちにアイディーンの好みまで語ろうなんて、この黒いウジ虫はどっかで潰さなくてはならない。ファルオスはそう思った。
バドルは、その辺を歩きながら
「炎牛は警戒心が強い。まずは二手に別れよう。見つけたら呼んでくれ」
そう言うと、ファルオスは
「呼ばないのだ。自分の手柄にして、アイディーンに誉めてもらうのだ」
バドルは、ちょっと、切れて
「このっ、なら俺だって呼ばない。誉められのは俺だ‼」
二人はにらみ合い、ファルオスは
「牛を狩った方が誉められる。バドルはせいぜい野菜でも出したらいいのだー」
バドルは鼻で笑う。
「なら、牛を取れなかったファルオスは何を出すんだ?野菜すらだせないようだな‼」
ファルオスはプクーっと膨れ、
「もうバドルなんて知らないのだ‼」
バドルもプイッ
「俺だって‼俺だって知らないっ」
二人はそっぽ向いてしまった。早々に仲間割れしてしまった二人。やはり、ライバルが協闘など、ブランコがせいぜいだったらしい。
二人それぞれの道を先、炎を纏った牛が現れる。
バドルは素手で殴りかかる。
ファルオスは剣で一撃。
ふふ。これで誉められるのは俺だ。二人はニヤリとした。
そう思いながらファルオスが城に帰るとその門の前、わずかに先に着いたバドルが城にも入れてもらえず、そこで正座させられている。そこの脇に牛が転がっている。
「牛……どうしたんです?言ってごらんなさい?」
静かに怒っているアイディーン。バドルは萎縮したように小さく見える。
ファルオスは牛をかついだまま、でっかい岩影に隠れ、見守る。
バドルは何か答えようと
「いや……牛……うまいだろ?」
なんとか誤魔化そうとした。バーベキューの事はまだ言ってはいないらしい。ギリギリまでアイディーンには秘密にして、ビックリさせようという約束を守っているらしい。
アイディーンは
「それで仕事を投げ出して狩りにいってたんですか?あなたは‼」
怒っている。仕事の大半するようになった犬がいなくなったら困るからだ。
ざまーバドル。ファルオスにはちょっと気分がいい光景だ。
バドルは
「くっ……俺はお前に美味しい牛肉を味わってほしいから……」
ぐすってしてる。
アイディーンは、畳み掛ける。
「仕事‼これ以外で俺を喜ばせれると思っているのか‼牛なんて一頭取ってきてどうする‼こんなに食えるか‼どうやってさばくんだ‼」
そこに転がってる牛を見た。でかでかとした真っ黒い牛が横たえている。それは、バドルよりも大きいのだ。
何人の、何日分の食事だ‼
そのぐらいの牛だ。
ファルオスはすすっと担いだままの自らの牛を見た。ここにもう一頭いるのだが……?
バドルは、
「それは考えてある。だから、城に入れてくれ」
もはや、頼んだ。
アイディーンはふんって城に入っていく。あきれ倒した。そんな顔だ。
ファルオスはそっと牛しょってやって来て、
「バドル。牛作戦は失敗か?この牛二頭どうしたらいい?」
いいタイミングで帰ってきたファルオスを、バドルは殴りたい。
俺だけ怒られた。バドルは、こらえ、
「とりあえず、さばいてコック長の冷蔵庫貸したもらおう。ファルオス……悪いがお前の権限で頼んできてほしい……」
ファルオスは牛を置いて
「行ってくるのだー」
走っていった。




