日曜大工をしよう2
筋肉だけが取り柄のような男はウキウキする。バドルは
「なんだ。早く言ってくれたらいい」
思ったより好きなようだ。畑作りとか、意外とマメにやってるし、細かい日曜大工好きそうだ。
アイディーンはこのうまく転がりそうな男に
「こういうのよくやるのか?」
たずねてみる。
バドルは輝かしく、歯をキラーンと光らせ
「ああ。まかせろ‼」
力強くいった。
ほほう。ファルオスごとまかせても良いって事か?なら、存分に甘えさせてもらおう。その言葉、忘れるな。アイディーンは
「頼もしい男だな」
軽く誉めておいた。
バドルは買った荷物も、野菜を積んでた荷車に乗せて届けてくれた。そして、牛のように黙々と引き、魔王城まで帰って来た。無駄に鍛えてた筋肉が役に立つ日が来たようだ。少なくとも、役に立ったの始めて見た。
なにはともあれだ。アイディーンの心配事はなくなったらしい。だって、バドルが監督してくれるらしい。初心者のアイディーンが見るより安心だ。
けど、ファルオスは怒っていた。
「勝手に夫婦の家具作ってこようとするのだ‼」
いやいやいや……夫婦ちゃうやん。
プリプリ怒ったファルオス。なんとかなだめないといけない。アイディーンは、言い聞かせるように
「経験者に指導してもらうのも大切でしょう?それで、この作業、男連中にまかせてもいいですか?」
ここぞとばかりに、ほっとこうと思ってる。しかも、女ですって逃げようともしてる。
ファルオスは面白いように転がった。
「ああ。素敵なの作ってやるのだー」
ニカーと機嫌良く笑っている。
それを信じていいだろうか。ファルオスに教えるのにバドルは耐えきれるだろうか。色々気になるけど、任せる事にした。
庭に声が響く。
「ダメだ。ダメだ。ダメだーーーー‼」
バドルは許せない。
ちゃんと測って線を引け。
線が歪んでも引き続けるな。
線を無視して切るな。
斜めに切るな。
ネジはまっすぐ。
ネジをこっちに向けて投げるなーーーー‼
しばらくしたら、バドルがアイディーンの執務室を叩いた。
「アイディーン。あいつと一対一無理だ」
しくしくと泣きついてきた。そうだとは思ったんだ。むしろ、長く持った方だと思う。
アイディーンは思いのほか優しく
「お前はよくやったよ」
慈愛に満ちた瞳を向けた。
悪かった。面倒押し付けて。
たまには素直に心の中で謝ってみたりする。
アイディーンは庭に向かうと、ファルオスがその辺の木の欠片を庭のすみにポンと投げ、
「もう、やめて、全部燃やして焼き芋したらいいのだ」
こっちはこっちでごねていた。
アイディーンは拗ねたお子様に話しかけるように、ファルオスのそばでしゃがむ。そばには、ノコギリで切った木材が転がっている。
「どれどれ。どこまで出来たんですか?」
雑誌と照らし合わせると、どうやら規定の長さに切る所までは出来たらしい。それから、組み立てを始めようかという段階か。
うーん。面倒臭い所終わってる。あとはネジじゃないか。電動のやつで、ブイーンってネジをねじ込むだけだ。
ファルオスはアイディーンは味方とばかりに
「バドルが斜めとか言っていじわる言ってくるのだ。」
自分がいかに不条理な扱いを受けてるか。と言った様子だ。
バドルはそれを聞いて、繋がってる木材を指差す。
「ここだ。ここ斜めなってるだろ。1つのミスで、丈夫さが変わってくるんだ。長く使いたかったらこだわれ‼」
バドルはこだわりそうだ。アイディーンは気にしない。三年ぐらい持てばいい。
そのネジを確認する。確かに斜めだ。あまり斜めだとネジの先も飛び出してしまう。何度もやり直しできないのだろう。木の部分が弱ってしまう。
まぁ、別にいい。
アイディーンは、もはやテンションも下がってムスーとしてる男二人に
「なら、俺がやってもいいな」
そう言って、インパクトドライバーと言う電動のネジを取り付ける工具を手にとった。
ズガガガガ……………
みんな、ご苦労。俺のために。
あとは楽で楽しいばっかりだった。面倒臭いはすっかり終わっているのだから。二人はもはや、楽しくないって顔してた。それをいい事に一人で楽しんだ。
ほどなくしてテーブルが出来上がり、それをおこしてそこに置く。なかなかうまく出来ただろう。ファルオスのネジも飛び出してもなんとかなる所で済んだし、他はうまくいった。
「ほら、どうだろう。これならここでバーベキューをするのにもいいと思うんだ」
お子ちゃまが食い付きそうな事を言う。
すると、ファルオスは
「今夜やるのだ」
急に元気になった。
アイディーンは
「まだイスができてないんですよ。それはまた次の楽しみにしましょう。ところで、まだこっちは木のサイズ計れてないし、どうやってやったんです?やってみて下さい」
雑誌見てやり方知ってるくせに、わざわざ聞いた。
そしたら、ファルオスは面白いように転がった。
「ここをこうして、まっすぐ線を引くんだ」
さっきバドルに教えてもらったやり方を意気揚々と教えてくれる。
まぁ、知ってる。アイディーンは心のこもってない声で
「うわー上手ですねー」
言うと、ファルオスは
「まかせろ」
うまくコロコロ転がっていく。
アイディーンはそこで凹みきってるバドルにも
「バドル。木材の余ったものでこれを薪にして、焼きもろこしでも食べたいのだが、畑にトウモロコシないだろうか」
そう声をかけてみる。
バドルは教えてやった結果、ネジを投げられると言う精神的ダメージがあったようだが、
「トウモロコシ……そうか、俺の作ったトウモロコシが食べたいか」
何やら、希望を見いだしたらしい。
アイディーンはよいしょしとく。
「ああ。一仕事した後には美味しいものがいい」
バドルの野菜は美味しいよーって言うよいしょだ。
こっちも転がしておく。バドルはすたこらさっさと畑の方に行ってしまった。
そして、いつしか出来上がったイスに腰かけて、バドルに焼かせた焼きもろこしをほうばる。
ちょっとよいしょしただけで二人とも頑張るなーなどと思うのだった。アイディーンはあれから何もしてない。
ふっくらと焼けたトウモロコシに醤油が香ばしく焦げて甘さが引き立つ。
アイディーンは何となくつぶやいた。
「あの辺にブランコがあったらなー」
ぼんやりと庭のすみを見るアイディーン。精神的に疲れた時、揺られたら最高だ。
ファルオスは、バドルに小さな声で、
「やるのだ。教えるのだ」
それを聞いたバドルはちょっと嫌な顔をした。




