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恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル2
20/67

ガーデニングで戦闘3

シュッ


蔦が上空、はるか高く飛び上がった飛骨竜を攻撃する。飛骨竜の扱いにも長けたアイディーンでも苦戦する。蔓はしなり、ムチのように予想できない動きで曲がる。だから、一定より近くに寄る事はできない。

ファルオスの飛骨竜はまったく言う事は聞いていないが、自在に避けている。アイディーンが見込んで連れてきた飛骨竜は優秀なのだ。乗り手が役不足であれば補って動く。そして、リーダーのアイディーンの命令は絶対聞く。


アイディーンの合図で上空高くより上がり、安全な位置から見下ろす。


魔王城の緑のようなそれは複雑にも蔓が作り上げて気味が悪いくらいだ。蛇でも蠢いてるように見える。

そして、その蔓は近づいて来るのをひたすら待っているようだ。

やっかいだ。全然攻め込めない。


この蔓を操っている者はなかなか頭が切れるらしく、攻撃は陽動やなんかも挟んでいるようだ。単純な構造ではないこれだけの規模のモンスターはさすがに骨が折れる。

バドルさえ捕まってなければ、荒野まで、ファルオスの魔法で燃やし尽くすことも可能だろうが、バドルが巻き込まれたら焼き肉だ。


アイディーンは色々考えてみたものの、自分が行くのが一番早い。攻撃のタイミングで霧になればいい。ここで動けそうなのはアイディーンくらいだ。

アイディーンはファルオスに

「仕方ない。取り敢えず霧になって向かう。何かあったら、庭師に戻って来るよう言ってくれ」


たぶん霧になっていくらでも逃げれるけど、一応そう言っておく。

ファルオスはアイディーンの無謀に気づいた。けど、その時には、もうアイディーンは鞍に足をかけていた。

「待て何をする気なのだ‼」


ファルオスが呼ぶ。

とたんにアイディーンが飛骨竜の背を蹴って飛び上がった。体は宙を踊る。

蔓の射程距離に入ったとたん、落下するその体に蔦が伸びる。それはアイディーンの体に触れる事はなく、スッと霧の中を通り抜ける。その霧は落ちるように城の中に吸い込まれて行った。


「アイディーンーーーーーー‼」


ファルオスは叫んだ。







アイディーンは城の中に侵入する事に成功した。

霧はまとまってアイディーンの姿に変わる。網目の多い中をくぐり抜ける事ができた。天井は光を入れるために網目になっていく。しかし、驚いたのはそれじゃない。

「驚いた。魔王城その物だ」

アイディーンはすぐ近くの飾ってあった絵のあった場所を撫でた。ボコリと浮き出た絵画の額。城の作りが完璧なまでに再現され、階段や部屋の間取り、置いていた細かな家具まで再現されている。

それらが全部蔦なのだ。


アイディーンは歩きながら

「ここまで、再現するなんて……」

もはや、良い仕事してると言ってもいい。しかし、いったいなんの目的があって……。

アイディーンは歩く。

するとその辺の蔓がしゅるしゅるーっと伸びる。


シュッ


それはアイディーンを攻撃してきた。

「くっ」

すんでの所で避けたそれが曲がってブンとしなる。中も安全とは言えないようだ。だってここは敵の腹の中と言ってもいい。


アイディーンは攻撃が当たる前に霧になって霧散する。再び蔓は霧の中を通り過ぎる。


遊んでいても、こちらも消耗してしまう。バドルはどうしただろう。もうやられてしまったのか。こんな所で四方八方から攻撃を受けたら、バドルですら大丈夫かはわからない。


(黒い奴だったけど、うざい奴だった。)

決していい奴だなんて思ってあげないアイディーン。


それでも、霧を霧散させ、バドルの位置を探る。便利な能力で、こうやって未開の場所を探らせる事ができる。空気さえ通ればなのだが、ここなら大丈夫だ。

そしたら、生きてるかどうかは別として、バドルを見つけた。塔の上の方だ。そちらに移動すると、そこは魔王城で言うファルオスの部屋がある場所だった。


その部屋でバドルは、うつむいてベッドに座っている。どうやら生きているらしい。

アイディーンは、霧になってその網になった中を掻い潜った。

「バドル‼」


「アイディーン‼来てくれたのか」

傷もない。バドルは大丈夫そうだ。

そして、嬉しそうだ。途方に暮れて分、まるでヒーローでも来てくれたようで嬉しいのだろう。


アイディーンは蔓を警戒しながら

「まったく。簡単に捕まるな」


そう言うと、バドルは目をキラキラとさせ

「アイディーン、結婚してくれーーーー‼」


そうは言うけど、蔓は待ってはくれないぞ。こいつは、こんな時にバカか。

アイディーンは

「話は後だ。早く抜け出そう」


そう言ったら、蔦が伸びた。アイディーンを攻撃する


「ちっ」

アイディーンはよける。

しかし、気づいた。蔦はバドルを攻撃しない。何本か伸びた物はバドルの近くを通っても触れはしない。


アイディーンは蔦をよけながら、

「バドル。この草とお前は何か関係があるのか?」


バドルは

「いや、初対面だ。」


草に初対面とか‼


アイディーンはバドルの影に隠れ、

「こいつらはバドルには攻撃しない。何か心当たりはないか?」

もう一度、質問し直す。


バドルは

「いや……もしかしたら俺の畑がここにあったから、何か関係あるのではと思っていた所だ」


まさか……野菜……しかし、荒野からはびこった訳ではない。その畑があったなら、むしろ畑は後から巻き込まれたはずだ。しかし、そこに城をわざわざ築いた。何か関係はあってもおかしくない。

アイディーンは

「他には?」


蔦が攻撃できないように、バドルにぴったりとくっつく。前からだと嫌だから後ろに回る。

バドルは

「アイディーン……男の姿でそれをされるのは……女になってからやってくれ」


この……困ってる時に足元見やがって。

「バドル。あんまりふざけてる時間はないぞ」

たしなめる。


バドルは頭を掻きながら、

「まぁそうだな。ああ、そう言えばトマトをもらったな。なぜかわからんがな。俺はトマトは育ててなかったのに」


アイディーンはハッとした。


トマト

そして、モンスター


二つのパズルがくっついていく。


まさか、全部……………


その時、上空より

「アイディーーーーーーーン‼」

とたんに天井の蔦を切り裂いてファルオスがシュタっと落ちてくる。

ファルオスは

「アイディーン。なぜバドルとイチャイチャしてるのだ!!!!そこの網目から見えていたのだ」


ファルオスはかわいらしく膨れて言う。いやしかし、上空、何十メートルからそれを見てると言うんだ!!!!

むしろ怖い!!



アイディーンはまだくっついたまま、

「バドルにこうしていたら攻撃されないからだ」

だから、アイディーンは離れられない。


ファルオスも、一瞬ためらったが

「なら、やる」

ファルオスまでがバドルに抱きついた。恐れずバドルの前から抱き締める。前からだと顔近くなるから嫌じゃないか?


案の定バドルの顔の近く、ファルオスの顔がある。この状況はあまり嬉しくない。何が楽しくて三人男ばっかりで団子になって何やってると言うんだ。

三人の真ん中、バドルが叫ぶ。

「やめろ。男ばっかり‼」


しかし、やはり蔓は攻撃してこなかった。暑苦しい男ばかりのスキンシップは寒気すらある。やたら湿気籠ってそうな温もりにゾッとする。これをいつまでも続けてられない。


アイディーンは早く解決したい。バドルごしに目が合ったファルオスは、んーって口尖らしてきてるし、その顔がムカつく。


アイディーンは

「真相がわかったそ。ファルオス……この蔓、たぶんお前のせいだ」

冷たい目で顔だけ遠ざける。


ファルオスは、ん?て顔して

「どう言う事だ?」

などと、ピンともきてない顔だ。


まったくモンスターを新たに作り出せる奴がいるとしたらこいつだけだって早く気付いたら良かった。

「あなたがトマトに変な魔力を込めるから‼」


ファルオスは覚えてない。

「なんのことなのだ?」

キョトンだ。


アイディーンは

「いつか、野菜作りたいってトマトに無理やり魔力注入して実をつけさせたでしょう?あれ、どうしました?」


ファルオスは

「あー。プランターに植えたトマトの事か。庭師にやった」


そして、ハッとする。その庭師がいなくなり、トマトの苗は魔物化した。手入れする人がいなくなったから。



そしたら、蔓が伸びてきて蔓は人形になる。うわっ、なんかエグい動きで人の形に……グネグネした管まいた姿は緑で草っぽくても気味が悪い。

そして、その草の人型は何やらスケッチブックを見せつける。これ、魔王城から持ってきた物か?蔓は器用に片手にペンを持って書く。


『私はあの時のトマトです。色んな人からも捨てられ、復讐しようと思ってました』


人型の手がページをめくる。


『近くの植物を取り込み、大きくなった時、復讐のチャンスは巡って来ましたが、この黒い人に出会いました。』


ページをめくる。


『私の心の中のこの畑の植物にある、幸せな気持ちがよみがえり、私はこの人にトマトを差し出しました。この人はトマトは食べなかったけど、トマトジュースを飲んでくれました。』


ペラリ

ページをめくる

『うまいと言われ、私の憎しみが癒えていきました。だからこの人の畑にいたいです』


なんか、いい話だ。


アイディーンは

「そうだったのか」

まさかバドルが役にたつなんて……


人型の草は

『魔王しね。燃やすとか言うの、信じられない。しね』


シンプルに攻めてくる。魔王に対してだけの憎しみは癒えてない。それは仕方ない。だいたい魔力与えた奴等はみんなそうだ。

蛾もそうだった。やはりムカつくからだろうか。


アイディーンはまとめにかかる。

「なら、バドル。このトマトをお前の畑に植えてやるという事でいいだろうか?」

草の望みはそれのようだ。


バドルは快く

「ああ。ちょうどトマトはなかった。取り組みたいと思っていたんだ」

うまくまとまりそうだ。やれやれ、どうなる事かとおもった。解決か?


草の人型はペンを走らせる。

『アイディーンさん。結婚してあげて?』

それを見せられた時、アイディーンは後ろにさがりながら、


「無理無理無理無理無理ーーーーー」


アイディーンは霧になって逃げていった。





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