ガーデニングで戦闘2
バドルは目が覚めた。
まるで、ファルオスの部屋のような一室だ。その壁や家具は緑の蔦で出来てるようだ。きちんと編み込まれ、緑の蔦や植物でみっちり。かすかに太陽を取り込めるように天井は透かしに編み込まれ、とても居心地のいい空間だ。
その草のベッドで寝てたらしい。寝心地も悪くなかった。
バドルはまだよくわからないながらも
「いったいここは……」
つぶやく。
と、壁の蔓が一本、スススーッと伸びてくる。どこから持ってきたか、赤々とした物を蔓の先に巻き込んでいる。そして、それは、バドルの手の所まで伸びて、ポンと赤い物をわたした。
トマトだ。
大ぶりの栄養状態がいい。ひっくり返すと白い筋が放射状にはいる。とてもうまいトマトなのは間違いない。
バドルは
「トマトか……?」
蔓に話しかけると、蔓はスススーッと離れていく。何か気を使ってトマトをくれたのだろうか。
それにこの部屋……ここは、あまりにも城の一室が再現されている。ベットの位置すらもそのままだ。
バドルはよくわからないまま、さっき横たわっていた草で出来たベッドに座った。
そばで蔦がうにょうにょっと蠢き、そこに人の形を作る。
「うおわっ⁉」
なんだ!地味に怖い。
草でうにょうにょして血管みたいなんだ。怖い魔族見慣れてるバドルでもめちゃくちゃ怖い。
それは棒立ちから、急に人のような仕草でペコリと頭を下げたようだった。バドルは
「ああ……どうも……」
一応頭を下げる。
その人みたいなものは、まるでお盆のような何かに乗せた何かを差し出してくる。お盆って言うか、ただの草の合体した物の平たい四角なのだが……その上に置かれた物。
人の形をした草の考える事はわからない。
それはコップに入った赤い色の物……
バドルは草の意図は何となくわかる。
が、何だ。なぜそんな、赤い物差し出してくるんだ。
ビクビクしながら、
「な……何か俺に……か?」
コップは城のやつなのか、ガラス製。バドルは覚悟を決めて、それに手を伸ばす。危険がないか、狼男のバドルはよく利く鼻を近づける。その赤い液体の臭いをかいだ。
「トマトジュースか……」
さっきからトマトを渡してきたり、なんなんだろう。
草の人は、片手をササッとやって、
さぁ、飲んでください。
そんな感じだろうか。そんな動きをしている。
バドルは飲みたくない、しかし、飲まないといけないだろう。飲まなかったらどうなるのかも考えると怖い。毒系には耐性のあるバドルは、仕方なく飲み干す。
「うまい……」
トマトでありながら、甘味がある。酸味のバランスもよく、飲みやすい味わい。いわゆるトマトを越えたフルーツのような芳しい香り。青くささは全然ない。
バドルは
「草の者よ。これはうまい」
コップをあげて言う。
そしたら、草の人は口もとに手を持ってく仕草をして、肩を揺すった。笑ったらしい。
そして、しゅるしゅるっとほどけていなくなってしまった。一見和やかにまとまったように思われる………が、
いやいやいや………
で、俺はどうしたらいい?
結局閉じ込められているのだ。コップもどうしたらいい。とりあえずそこに置いておくぞ。まったくわからない。
バドルの苦悩は続く。
「ふんっ」
ファルオスが剣を振るっている。黙ってそうしていれば、なかなかかっこいいと言えなくもない。
たなびく髪は体を少し遅れてふわりと広がり、地を蹴って空中に飛び出せば、蔓の攻撃なんて一つも当たる事なく切り落とす。蔦の怒りをかって、今やファルオスばかり狙う蔓。
しかしさすがだ。さっきから動き続けているのに、底知れないスタミナは尽きることはないよう。時々こっちを見てニヤリとしたり、なにやらアピールしてるような余裕すら感じる。
さすが魔王。頭が悪くても、考えが甘くても、多少は力になる。
アイディーンは下の草を刈りながら、やっと庭の一部が見えてきた。
シュパッ
シュパッ
草を刈る音は絶え間なく聞こえる。ファルオスは張り切っているようだしそちらは任せておこう。
アイディーンは賑わうその辺から離れ、今見えてきた庭の地面を調査した。
この庭は数日前は異常なかった。色とりどりの植物が花をつけ、それは心洗われる光景だった。どの季節にも庭の表情を感じられるように咲く花を厳選してるのだと庭師は言っていた。庭師の繊細な心を感じられるような花選びは、それを見るアイディーンの楽しみでもあったのである。
なのに、その植えてあった植物がすべてが伸び、爆発的な成長を遂げたような姿……。多種多彩な植物達がこうして複雑に絡み、荒野にも向かって伸びる。
その蔓の植物が種類が実に多彩だったので不思議だったのだ。これを操る犯人は植物を自在に操れるのかもしれない。
アイディーンは、庭師との関係性を疑った。庭師がいなくなったその2日後、いきなりこうなった。1日目は草が雑草のように生い茂り、2日目には庭は今の姿になっていた。
水はあげといてほしいと言われ、アイディーンはそうしたが、どこからどこまであげたらいいかビックリした。
いや、それ以前にこれは魔王城の庭としては許される物ではない。
草を刈ろうとすれば襲ってくるし、蔓はどんどん荒野に向かって伸びていくし……荒野にはいつの間にか城みたいな物も見えるし、仕事も貯まっていくし……
庭師は何かモンスターでも飼っていたのだろうか。そうとしか思えないのだが、こんなモンスターなど、どの図鑑にものっていない。
アイディーンは再び、視線を動かした。荒野に現れた城のようなそれ。まるでこっちの魔王城を模したようだ。これは、意図的に真似た物……
それを見ただけで、ある程度の知能を持っているのは間違いない。
やはり、あそこまで行かないといけないか。バドルも回収しないと仕事が追い付かないし、あそこまで連れていかれたのは明らかだ。
生きてるかはわからないが、骨くらい拾ってやろう。アイディーンはファルオスに
「ファルオス様、飛骨竜で上空より攻め混みましょう」
まさか今さら言った。
ファルオスは、だいぶ戦った後だ。疲れてはいないが、全然減らない草の相手は退屈してた所だ。
「その作戦早く言ってほしかったのだ」
二人は飛骨竜を呼んだ。勇敢な彼らは恐れる事もない。草の攻撃を掻い潜り、風のような早さでこの庭まで飛んだ。
それに飛び上がり、素早く手綱を握ると、アイディーンの意図を組むように素早く空へと飛び上がった。
ファルオスは若干遅く続いてきた。飛骨竜は人を見るから、なめられるとこうなる。あと、息が合ってなくてもこうなる。




