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恋する魔王のスローライフ  作者: フローラルカオル
恋するレベル1
12/67

結婚だと3

アイディーンはイライラしていた。

最近になって、やたら女になれと言われる事が多くなった。


片や上司の権限を使って。

片や力付くで肩を掴んで。


この女になれって言う男達の中にいるのは嫌だ。そんな男達がいるこの魔王城には、今夜安心して眠れない。


もともと、仕事が片付かなくて寝泊まりしていたアイディーン。今日は珍しく仕事を手伝ってくれた男がいた事もあって、一段落ついた。

家にはもうだいぶ帰っていない。


帰りたいとは思わなかったが、アイディーンにも事情があった。

セレーディアだ。この事件の元凶に、彼女がいる。彼女が魔王ファルオスに手紙を送ったらしい。その手紙には、まさか、アイディーンがファルオスを好きだと書いてあったそうだ。

忌まわしい事に、それを本気にしたファルオスがアイディーンに『結婚しよう』などと、極論に至ったと言う事だ。それに、セレーディアにも文句言わないといけない。


だから一度、家に帰ることにした。






飛骨竜を駆り出して自分の屋敷に帰るアイディーン。

眼科に迫る大きな建物は、城には見劣りするものの、権力の好きなセレーディアがこだわっただけあって、古い建築の技法を使った趣あるたたずまいだ。その趣は好きだったアイディーンだが、今はそれすらも忌まわしい。

ここにセレーディアがいるはずだ。


なぜなら、ファルオスの告白を覗き見目玉で見てたからだ。きっと冷やかすまではここにいるはず。セレーディアという女はそんな女なのだ。


帰ってきたアイディーンに、赤い絨毯の敷かれた階段の上から上品な青いドレスに身を包み、セレーディアは

「帰ってきたのね。アイディーン」

多少、圧のかかる声でそう言った。


まるでベルベットのように上品で美しい彼女の姿とは裏腹に、その視線は毒々しくアイディーンを見つめる。危険とは知りつつ触れてみたいと思うのは、よく切れる美しい刃ほど、人を引き付けるからかもしれない。そうして痛い目を見てる人を知っている。まず父だ。

正直、ビッチな母のどこがいいかまるでわからない。


アイディーンは憎々し気な顔だ。

「セレーディア……」

昼間と打って変わって険しい表情をしたアイディーンに

「あら?予想してた顔と違うわね」


心底楽しいっと言った顔をしていた。

まぁ、あのアイディーンが素直に『ありがとう。お母様』なんて言う人じゃないのはわかっている。だからこそ、面白い。


アイディーンは

「手紙の事です」


セレーディアは

「いいえ。結婚のことでしょう?」


どちらの事も、もはや変わらない。

アイディーンは

「なんであんな手紙を書いたんですか」

キッと階段上のセレーディアを睨み付ける。


おや?怒っているようだ。

母は親切で子供の本音を伝えたに過ぎない。もはや、親切だ。

セレーディアは


「よかったわね。結婚するの。寂しくなるわ」


アイディーンは

「いいえ。俺は間違ってました。ファルオス様を愛していません」


セレーディアは笑う。この子は何を今さら。キスされて女の姿になったのに、まだあがなうなんて。

「おかしい事。あなたはもう婚約してしまったのでしょう?」


アイディーンは

「明日正式に断ります。でも、あなたに邪魔されるのは困るのです。」


セレーディアは

「母は邪魔などしてません。ちょっと手紙であなたの気持ちを代弁して手伝ってあげたまででしょ?」


そんなの認めない。むしろ、強引にまとめようとした結果だ。

アイディーンはギリギリと、歯を噛みしめ、

「思い通りになんてさせません‼」


怒って行ってしまった。

母は

「ふふん。アイディーン。まだまだこれからよ。」


アイディーンが自室に上がると

「ぎゃああああぁぁぁーーーーー‼」

悲鳴を上げた。


アイディーンの自室にあった部屋が‼

アンティークでまとめた家具達が‼

この色や質感の物を探すのにどれだけの時間と手を尽くし、愛情深く集めたか。と言うような物達全部、なくなっている‼


「部屋が‼女の子の部屋に‼」

変わりにあったのは、パステルのピンクの家具達。

クローゼットやタンスに入っていたのは女物の服やランジェリー。

カーテンまで。絨毯まで‼


ドアの所から

「思ったより乳がないって所が私の誤算だったわ」

この元凶が……

あまりにもサイズがピッタリそうなランジェリーは引いた。


セレーディアは

「かわいいでしょ。これから夜のいとな……」

アイディーンは遮る

「何いってんですかーーーー‼」


セレーディアは

「あら?結婚するんでしょ?いきなり必要になっても、女性物の服なんて、先に用意してて困る物ではないわ」


「だからと言って、俺の家具や服は‼勝手に変えるなんて‼」


セレーディアは

「困ったわー。あんな、地味なだけの家具がいいだなんて、ちょっとセンスがおかしいのかしら?」


そんな事はない。

アイディーンの集めた家具達はどれも職人の手作業で、大切に作り上げた物で、評価も高かった。なのに、よくも‼


「俺は結婚しません‼女にもなりません‼」


逆上してしまったアイディーンにセレーディアは

「あら?それはあなたには決められないわ。決めるのはファルオス様よ」


縦社会ーーーー‼

アイディーンは

「それでも、絶対やです。もう、ここにいる意味もない‼」


アイディーンは飛び出して行ってしまった。

飛び出して行ったアイディーンの背中を父である魔王軍大将が見て、

「セレーディア、どうしたんだい?」


セレーディアは

「うふふ。知らなーい」

少女のように笑った。


涙を拭きながら飛骨竜に飛び乗ったアイディーン。

服がないんだったら、もはや魔王城の方がまだスペアの服が置いてあるからまだマシだ。


人生の壁にぶつかる時、親はあてにならない。


アイディーンは竜で降りたったら、明日なんて、待たず、すぐにでもファルオスの自室のドアを叩いた。

もう限界だった。このストレスに耐えられない。




しかし、いなかった。


アイディーンは血の上った頭も冷えてくる。叩いてる間に少しは落ち着きも取り戻したようだ。が、いったいどこへ……


すぐにでも婚約破棄を伝えたかったのに。



探してもいなかったので、諦めて寝る事にした。

明日でもかまわない。もう疲れた……。


アイディーンが寝室にしてる部屋に戻ると、そこで誰かの寝息が聞こえた。


ファルオス……

ファルオスが寝ている‼


クカースピー

クカースピー


この……なぜこんな所へ……


ファルオスは

「アイディーン。愛してるのだ」


「ぐっ」

アイディーンは後ずさる。


ファルオスはちゃんと寝ているようだ。

なんてハッキリとした寝言……


クカースピー

クカースピー


いや、待て。一見かわいい寝顔だが、まさかとは思うが……

アイディーンには嫌な予感がした。


わざわざやってきて、寝込み襲う気だったのでは?


このドスケベ魔王ーーーーーー‼


アイディーンは部屋を飛び出していった。



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