《風を起こす少年》
[登場人物]
フウガ
〈男 15歳〉
この物語の主人公。まだ精霊を持っていないが、生物の霊力を読み取ることや、風を操ることが出来る。
それ以外は普通の少年。
燎火 朱灯「かがりび あかり」
〈女 15歳〉
異能園の生徒のひとり。赤みを帯びている少女。温かみがある纏め役。
清水 碧渚「しみず あおと」
〈女 15歳〉
異能園の生徒のひとり。青みを帯びている少女。とても面倒くさがり屋。
樅木 翠「もみぎ みどり」
〈女 15歳〉
異能園の生徒のひとり。緑みを帯びている少女。草食系で天然っぽい。
園長先生「えんちょうせんせい」
〈男 20代後半〉
異能園の園長。朱灯、碧渚、翠などの先生でもある。
アラシ
〈男 15歳〉
この物語の立会人で、ランゲキプロジェクトの最大責任者。
たとえ不在でも、マスターとしての存在感は絶対的。
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フウガ(♂15)
朱灯(♀15)
碧渚(♀15)
翠(♀15)
園長(♂20代後半)
アラシ(♂ 15)
*生徒たちは、朱灯。碧渚。翠。の3人で、言ってください。(全員も可)
[あらすじ]
語り:アラシ
精霊。
もともとそれは、ファンタジーや仮想の世界にしか存在しないものだった。しかし、この世界に精霊は……
存在していた。
さらに、人間と精霊が手を取り合っていき、なんと精霊使いが成立したのだ。
その中でも、精霊に対しての絶大な信頼と、安定した均衡をたもつ者こそ、「精霊王」に相応しいと、誰かが言った。
まぁ完全にオレが言ったけどな!
そこに、精霊使いを目指す、一人の少年がいた。その名はフウガ。
これは、風を起こす少年の幻想と、
現実に起こった出来事を合わせた、物語である。
まずは、オレがあいつに何を言ったところから、始めないとな!
[本編開始]
● ランゲキプロジェクト 本部。
アラシの部屋
フウガ「……」
アラシ「どうした?急に黙って。
お前らしくないなぁ……」
フウガ「ボクが何で、精霊を集めなきゃいけないんだい?そんなファンタジーなこと、ボクに出来るわけないじゃないか!」
アラシ「……。いいか? 出来ないんじゃない。やるんだよ。
そんなこと言って、もし出来たら、やり切れなかった奴らが可哀想だ。
だからやるんだよ。そうじゃないと、お互い張り合えないぜ!」
フウガ「無茶苦茶な……だいたい、落ちこぼれのボクに……何が出来るんだ……。何がやれるんだよ……」
アラシ「そんなこと言っても何も始まらないぜ?
落ちこぼれなんて、そんなの知ってるぜ。だって中三の頃、お前はメガネを取っても、アラシには、なれなかったんだからな!」
フウガ「はぁ……。全ての元凶が、よくそんなことを平気で言うね……」
アラシ「まぁ、それほどでもあるぜ!」
フウガ「褒めてないよ!キミが一番、アホのランゲキでしょ!?」
アラシ「言ってくれるなぁ……。
だが、その学校生活……本当に辛かったか?
オマエを変えてくれた、大切な人がいたはずだぜ?」
フウガ「……お見通しなんだね、キミは……。
分かった。それで、どこに行けばいいの?」
アラシ「素里惑星サファナだ。豊かな自然と、風景を壊さない街並みが特徴だ。奥地には、特別な教育をしている学園があるらしい。だが、里の中にあるから……猛獣には気をつけろよ。戦っても今のお前には到底勝てそうには思えない……」
フウガ「分かっているよ。争いごとは嫌いなの、知ってるでしょ?」
アラシ「ああ。行ってこい!我が相棒よ!そしてコンプリートしたら、バトルしようぜ!」
フウガ「人の話聴いてたの全く……。
分かった、行ってくるよ」
● 素里惑星 サファナ
フウガ「すごい。もうひとりのボクの言う通り、街並みが景色に馴染んでいる……」
フウガ「ふぅ……。自然の力を感じる……」
フウガ「精霊がいそうな気がするかもね……。
だけど、そんな簡単に手に入れられるわけが無いよ……。
これも全部、もうひとりのボクのせいだね。もしも居なかったら、本陣に帰ろうっと……」
フウガ「雲ひとつない空」
フウガ「程よい太陽の眩しさ」
フウガ「小鳥の鳴き声」
フウガ「そしてほんの少し、ボクの背中を微かに押してくれる感じの…風。
任務とはいえ、この心地よさは……。
今までに無かったよ……。
頑張れそうな気がする!よし、行こう!」
● アラシ領 本部
アラシ「ようやく、フウガが動き出したな!」
アラシ「こっからは、お前にしかできないことが、いっぱいあるぜ。
どう動くかは、お前次第だぜ……」
アラシ「さて、向こうは授業が終わる頃だったかな……。
意味が全然違ぇが、最初からクライマックスだな!」
アラシ「あ、フウガも…そんな感じかなぁ……」
● サファナ 里の森
フウガ「ある〜日♪森の中〜♪熊さんに〜♪であっ……」
里の熊「……!?」
フウガ「・・・・・・。出会っちゃったぁぁぁぁぁあっ!?
里の熊「ツキノワァァァァァアッ!」
フウガ「ぎゃぁぁぁぁぁあっ!!お助けぇぇぇぇぇぇえっ!?」
里の熊「ヒグマァァァァアッ!」
フウガ「うわぁぁぁぁぁあっ!?」
● 異能園 教室
園長「ではそろそろ、この授業のまとめに入ります。再度こちらに注目してください」
生徒たち「……【ざわつき】」
園長「人は一人では生きられません、誰だって、誰かの力が必要なのです。ですが、この世界は因果応報「いんがおうほう」の世界です……。
良いことをすれば良い結果が待っていますし、悪いことをすれば悪い結果が待っています。それを忘れずに」
生徒たち「はーい!」
園長「ただし、順風満帆に事は進みません。いくら頑張っても、報われないこともありますが、人事は尽くしてください。無理ならば、妥協を厭「いと」わないでください」
生徒たち「はーーい!!」
園長「このように。人である以上、支え合って、繋がりを広げなければなりません。
これらを完全に繋ぐには、時間がかかるでしょう。それを拒む方もいらっしゃいますから……」
園長「それでも我々は、やらなければなりません。もともと私たちは、「人間」なのですから、「人」としての感情や思想は、まだ捨ててきれないと思っています。それが決して悪いことではありませんが、中途半端な気持ちを持つのは悪いことです。他人に迷いを教えているのと同じです。だからこそ割り切る覚悟を持ってください。決してそれを、忘れないで下さいね……」
生徒たち「はーーーい!!!」
園長「次代を切り開くのは、あなたたちです。先代の教えを糧にして、更なる進展が、あらんことを……」
園長「では、今日の授業はここまでです。しっかりと覚えておいてください……」
〜数分後〜
碧渚「やっと終わったよ〜。園長の道徳授業……ぼくにはサッパリだったよ……」
翠「碧渚さん……。いくらなんでもそれは……」
朱灯「仕方ないわ。人それぞれだから、あたしは止めないわ」
碧渚「それって、正直めんどっちいからでしょ?」
朱灯「あなたと一緒にしないでくれるかしら?あたしは大まじめにやってるわ!」
翠「ふたりとも、落ち着いてくださいっ!」
〜園長先生、再度出現〜
園長「ごきげんよう。朱灯さん、碧渚さん、翠さん……」
翠「えっ……園長先生!?」
碧渚「あ、えんちょーだ」
朱灯「如何なさいましたか?学園長……」
園長「お客様がお見えになりました。『この学園にいる、能力持ちの人を引き取りに来たんですが……いますか?』
と仰っていましたので、一緒に来ていただけませんか?」
朱灯「それってあたしたちのことじゃないですか!なぜ黙らなかったのですか!?」
園長「それは……」
碧渚「あれじゃない?
そのお客さん。ぼくたちが持ってる、異能の力を感じたんじゃないのかな?」
園長「やはりあなたは、勘がいいですね……。
そうです。あなたたちには、霊力があるのです……」
翠「霊力ですか?翠たちにそんなものが……」
園長「言われても実感が湧かないでしょうね……一度会ってみましょうか……」
朱灯&碧渚&翠「…………」
● 異能園 面談室
〜五角形のテーブルに彼らは着席〜
園長「では、お互いに自己紹介と参りましょう」
朱灯「ちょっと待って、このお客さん…なんでこんなにボロボロなのかしら?」
フウガ「実は、熊に出会ってしまって……全速力で後ずさりしたんですが……。追いかけられたので、ここに逃げ込んだんですよ……」
朱灯「全速力だったら、クマが追いかけるのは仕方ないわ」
翠「この学園の周りにある森は、色んな動物が居ますからね……」
碧渚「…ぼくらの学校を壊す気かい?
見方を変えると、君が全ての元凶にも見えると思うよ〜」
フウガ「その気は無いよ….…。
でも、後ろを向いて見直したら、誰も居なかったからね」
園長「この森の動物は、基本的にこちらが危害を加えない限り、森を出ることは…ありませんよ」
朱灯「流石は学園長。この場所に詳しいんですね」
園長「もちろんです。先に生まれたる者は、君たち生ける徒よりも、多くを知っていなければならないのですから……。
改めて名乗ります。
私が、ここの園長です」
フウガ「………」
園長「では、ここら辺でお互いに自己紹介し合いましょうか……。
朱灯さんから、お願いします」
朱灯「はい。分かりました」
朱灯「あたしは燎火 朱灯。この学園の生徒よ」
碧渚「清水 碧渚だよぉ……ただそれだけぇ……」
翠「樅木 翠と言います。
朱灯さんや碧渚さんと同じ、この学園の生徒です」
フウガ「朱灯さん、碧渚さん、翠さんですね……覚えました」
園長「では改めて、あなたの名前を教えてください。
フウガ「はい。ボクの名前は……フウガです。よろしくお願いします」
朱灯「フウガ……。良い名前だわ、よろしくね。
碧渚「よろぉ〜」
翠「フウガさんですね。よろしくお願いします」
園長「ではフウガさん。ご用件の要望をどうぞ」
フウガ「はい、君たちにお願いがあるんだ……。
ボクの精霊に、なってくれないかな?
翠「い、いきなりですかっ!?」
碧渚「ぼくらは人間だよ……どんな寝言なのかなぁ……寝言は寝て言ってよ。
あーあ、めんどっちい……」
朱灯「丁重にお断りします。あなたについていく意味がありません…」
フウガ「そうですか……。残念だ」
園長「……。フウガさん…。しばらく、ここにいてはどうでしょうか?」
フウガ「いいんですか?
それこそご迷惑なのでは……?」
園長「私が許可してるのですから、どうぞご遠慮なく……」
フウガ「では、お言葉に甘えて……」
園長「皆さんも、よろしいですか?」
朱灯「園長命令なら仕方ありません。
背く理由がありませんから……」
翠「みどりも、朱灯さんと同じ意見です」
碧渚「どっちでもいいよぉ……ぼくの答えはそんだけ……」
園長「決まりですね。ではまた夜、グラウンドで会いましょう……」
〜少し間〜
フウガ「行っちゃったね……」
朱灯「それじゃあ、あたしたちも失礼するわ」
碧渚「ぼくも〜。じゃぁね〜〜」
翠「では、みどりも失礼します」
フウガ「3人も早いなぁ……。結局ボクひとりになっちゃったなぁ……。
どうしようかなぁ……」
アラシ(語り)「悩んでるんだったら、気軽でいいから、目的を決めて行動すりゃいいんだよ!」
フウガ「そうだね……もうひとりのボク……」
[本編終了]
[次回予告]
語り:フウガ
精霊になる候補は見つけたんだけど…拒まれちゃった……。
でも諦めない!ボクは必ず、三人を精霊にしてみせるよ!
次回。《異能の力》。
ボクは、精霊使いになるんだ!
[次回も お楽しみに]