3初めての
大会が終わって2週間が経とうとしていた頃
孝史は新聞の折込チラシを見ていた。
宮前店新規オープン
でっかくバイト募集と書いてある。
コンビニのチラシだ。
孝史はここぞとばかりに電話をかけた。
「あの・・・バイトの募集を見て電話したんですけど・・・」
「月水金出れる?」
「あっハイ」
「じゃあ、履歴書もって来れる?」
「いつですか?」
「いま」
急だな・・・
「わかりました」
そんな会話を10秒位で電話を切った。
慌てて自転車に飛び乗り、コンビニへ向かった。
梅雨入り前だというのに、猛暑でアスファルトから陽炎がたっている。
孝史の家から15分位でコンビニに着く。
「いらっしゃいませ」
店員に声を掛けられた。
「あの・・バイ」
「しばらくおまちください」
履歴書でわかったのだろう、すぐに店長を呼びに行った。
「急ぎで悪かったね」
奥の方から歳老いたおじさんが出てきた。
「こっちへどうぞ」
奥のスタッフルームに案内される。
制服を着ていた孝史を見ると
「南高の生徒さんかい?」
と聞いてきた。
「ハイ。そうですけど。」
「家のバイトにも南高の生徒がいるよ」
「あら名前ど忘れしてもうた。」
「何て言ったかな・・?」
「・・・・」
「まぁとにかくその子と同じシフトだからよろしく。」
「明日から頼むね」
「あ・・ハイ」
孝史は半分苦笑いな感じでいった。
「あの・・・面接は?」
「ん??」
店長は意味が解っていないのか。
「終わったよ。」
と言った。
「君、合格ね」
そういうと、孝史の履歴書を預かった。
こんなんでいいのか?
そんな不安を抱え店を後にした。
そして次の日、授業も終わりいつものように孝史は元木とたわいのない話をしていた。
「じゃあ、俺先帰る」
「バイト始めたんだ」
そういうとダッシュで帰った。
「何のバイトだよ」
元木が遠くに居る孝史に叫んだ。
「教えねぇよ」
孝史も叫び返した。
ー数時間後ー
「おはようございます。」
「おはよう」
「早く来たね」
バイト先の店長が言った。
初めてのバイトで孝史は早く着すぎていた。
ソワソワしている孝史をみて店長が声を掛けた。
「ほっほっほ(笑い声)・・・そんな緊張はしなくて平気」
「ワシを見てみ、こんなんが店長やぞ。」
「はっハイ・・・」
また、孝史は苦笑い・・・
「しかし、遅いのう、もう一人の子は」
「そうですねぇ。」
しばらくすると
「おはようごいざいまーす」
と言ってもう一人がやってきた。
孝史もその人に挨拶をしようとした瞬間だった。
「おはよう・・ご・・あぁー」
もう人も
「あぁー」
お互い指をさして言った」
「お前何してんだよ」
「お前こそ」
同じバイトのシフトだったのは元木だった。
「なんだい?君ら友達だったかい。ほっほっほ(笑い声)」
「ハイ」
二人照れくさそうに声をそろえて言った。
「それなら話が早いのぅ」
「君なんだっけ?」
元木の顔みて言った。
「元木です」
「おぉぅ すまんっすまん。また忘れおった」
「じゃあ、新人に教えてあげなさい」
「わかりました」
「歳には勝てんのぅ」
そう言い残すと
「後は任せた、ボーイズ ベー アンベシス」
とカッコつけながら意味の解らない事を言って何処かに行ってしまった。
元木と変な店長のおかげで孝史の緊張はほぐれた。
「じゃあやりますか」
元木が声を掛けた
「いらっしゃいませぇ」
これが孝史のバイトデビューだった。