1挫折
この物語は最初はおもしろくはないです。段々と盛り上がって行くので最後までお付き合い願いたいとおもいます。
高校3年最後のインターハイ予選。
県内では強くも弱くもないが、監督は県内No1である。
剣道部のキャプテンを務めるのが
南高校三年 狭山 孝史
他校の監督には県内で4本の指に入る実力はあると太鼓判を押される程。
孝史にとって高校3年間の集大成。
負けるわけにはいかない。
一回戦の相手は、北高校。
実力的には南高校には劣るが、粘り強さがある。
「先鋒 狭山、次鋒 平田中堅 三鷹、副将 島岡、大将 佐藤」
南高校のオーダーである。
団体戦の中で先鋒の役割は勝てばチームが波にのれる、いわば特攻隊長。
チームのムードを左右する大事な役だ。
孝史が先鋒に起用されたのには訳があった。
チームの中で1番勝率いいことと、孝史と佐藤の二人以外は1、2年生だけだったからである。
刻々と試合の時間が迫ってくる。
それにつれて、孝史の脈の速度もあがる。
会場の隅に行き座り込むと、孝史はそっと目を閉じた。
ザワツク会場の音がスーっと消えた。
きつく厳しい練習を毎日してきたことが頭をよぎる。
勝ってインターハイに行く。監督をインターハイに連れて行く。
心の中で気合を入れると、防具をつけた。
まもなくして試合が始まった。
孝史は相手のペースにハマリ悪戦苦闘。
その結果、隙を突かれまさかの2本負けをしてしまった。
続く次鋒、中堅、副将3人が引き分けた。
そして、大将の佐藤の出番がきた。
1対0・・・
佐藤が2本勝ちをすれば延長戦。
孝史は拳をギュッと握った。
「メェーン!」
「一本。」
佐藤が1本取り返した。
ピー
「止め」
「一本勝ち、勝負あり」
時間がきてしまった。
1対1、本数負けで1回戦で敗退。
孝史は不甲斐ない結果に自分に腹が立った。
壁に拳をぶつけると、泣き崩れ落ちた。
俺のせいだ・・・
俺が勝っていれば・・・
「お前だけが悪くない」
佐藤が孝史の肩をポンと叩く。
「これがお前らの実力だ。結果を出せないのもお前らの実力だ。」
監督からの最後の言葉だった。