今後の方針
「さて、魔王を倒しに行きましょう!」
ミカエ……ミカが張り切っているが、
「ちょっと待て。逆だろう」
「逆?」
ミカが首をかしげる。
「お前、さっき自分で言っていただろう。魔王は穏健派だ。って」
「ああ、そういえば」
「つまり、魔王を倒しちゃったら、穏健派にトドメを刺すことになる。全面戦争一直線だ」
「それは困ります」
「つまり、状況を打開するには、穏健派の魔王を助けて過激派の方をツブさないといけないわけだ」
「それ、勇者の仕事じゃないですね」
「天使がやったら大問題だな」
あー、だから天使の力禁止なのか。
メンドクセー。
「では、過激派を討伐に行きましょう」
「顔とか居場所分かってるのか?」
ピタリと動きが止まる。
まぁ、そうだろうとは思ったが。
「過激派討伐するとして、そいつらの顔と居場所を特定する必要がある」
「どうやって特定しましょうか?」
「地味に情報収集しかないな。天使の力も使えないし、魔法にもそんな便利なものはない」
ちなみに、俺は自分の使える魔法は把握している。
使い方も、本能的に理解できている。
「魔王国の過激派の情報なんて、人間側の国に居ても分からないだろうから、必然的に魔王国に行くことになる」
この時点で頭が痛い。
「とりあえず、直近でやらなきゃいけないことは、魔王国に行くルートの確認。旅費の調達。あと、できれば魔族か獣人の協力者を得る事」
「前二つはともかく、協力者は何でですか?」
「俺は人間だし、お前も今は見た目人間じゃねーか。そんなのだけで魔王国に侵入するのは危険だろう」
この街ではともかく、魔族と人間は仲が悪い。一応、変装の魔法はあるが、見破られた時が怖い。
「なるほど、では何からはじめましょうか?」
「その前に、お前の所持金は?」
「ゼロです」
決定。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ゆうべはおたのしみでしたか?」
女将さんが言ってくる。
どうやらミカと部屋を出るところを見られたらしい。
「いや、そういうんじゃないです。
……って、顔を赤らめるなモジモジするな!」
そういやコイツ、俺よりウルトラ年上の筈だよな?
何でこんなにポンコツなの?
老人ボケなの?
「何か失礼な事考えてませんか?」
「イイエナニモ」
そのくせカンは鋭い。
「とりあえず、討伐系の依頼はありませんか?」
「あなた達にできそうなのは、これくらいかしら」
そう言って、いくつかの依頼書を出してくる。
・ゴブリンの群れ討伐 ランクE
・ウルフ討伐 ランクE
・山賊討伐 ランクD
簡単な依頼ばかりで報酬も安いが、ミカの実力も分からないのでこの辺りが妥当ではあるだろう。
俺はゴブリンの群れ討伐の依頼を受けた。
「とりあえず、ゴブリンとはミカが戦ってくれ。危なくなったら援護するから」
「大丈夫です! ゴブリン程度、一瞬で蹴散らしてみせます!」
「一応聞くけど、持ってる剣と盾は本物なのか?」
ミカは「勇者の剣」と「勇者の盾」を持っている。
ドラサガ3の設定通りなら、最強装備の筈なのだが……
「流石に、普通の鉄の剣と鉄の盾ですよ。見た目はこんなですけど。
あ、昭光さんの好きなゲームに合わせたんですが、気付きましたか?」
「ああ、まぁな」
流石に見た目だけだったらしい。
「ところで、昭光さん。大事な事を忘れていますよ」
ミカが真剣な顔で言ってくる。
「何を忘れているんだ?」
ぐっ、と拳を握ってミカが宣言する。
「朝ごはん、まだ食べてません!」