ドームラ観光
翌日。
朝食を食べて最初にやったのは、服を買う事だった。
実は、ずっと転移前の部屋着のままだった。結構目立っていたので、着替えも含めて普段着を購入した。
着替えて街を歩いてみる。
今日の目的は街の構造の把握だ。
宿の女将さんに主要施設の場所を聞いて、そこまで歩いてみる。
武器防具屋、道具屋、領主の館など。
場所の確認ついでに魔法使い用の防具と杖も買っておこう。
普段着のままで魔物と戦うのは遠慮したい。
「兄ちゃんの予算なら、これはどうだ? オオトカゲの皮をなめしたローブだ」
店のオヤジに言われて試着してみる。
うん、動きやすい。
「あとは杖が欲しいのですが、杖って魔力の強化とかの効果があるんですか?」
「そういう強力な杖もあるにはあるが、値段が……な」
高いらしい。
「あんた、駆け出しの冒険者だろ? なら、コイツで十分だろう」
示されたのはただの木の杖。
一応、それなりの耐久性はあるので、いざという時に魔物の攻撃を防いだり、殴ったりもできるらしい。
予算も無いので、それを購入。
金が貯まったらもと良い杖も欲しいな。
スラムの場所も確認しておく。
間違って迷い込んでも面倒だからだ。
街を歩いていると、色々な種族のヒトを見る。
人間、エルフ、ドワーフが多いが、ホビットらしき小さいヒトが駆け回っていたり、獣人ぽい奴や青い肌に角が生えた魔族ぽい娘さんが店番しているケーキ屋まであった。
多種族で仲が良いのは良い事なのだろうが、オークっぽい、どう見ても敵だろうという奴が女騎士ぽいエルフと腕組んで歩いているのを見かけた時は、思わず二度見してしまった。
いや、アレはこの世界でも目立つ部類だったらしく、注目を集めていたが。
でも、ああいうのを見ると、街の外でオークを見ても問答無用で吹っ飛ばすとかはダメなんだろうなーとか思う。
ヘタしたら、友好的なゴブリンとかも居そうな雰囲気だ。
まぁ、種族的な事は女将に聞いてみよう。と宿に戻って聞いてみたら、
基本的に言葉が通じれば「ヒト」という事らしい。野盗・盗賊の類を除いて攻撃すれば犯罪。
ゴブリンは言葉が通じないから魔物。
言葉通じなかったら魔物扱いとか、こえーなおい。
言葉が通じて良かった。本当に。
あとは、種族的に人間と魔族は仲が悪い。
エルフ・ドワーフは人間寄りの中立。が、お互い仲が悪い。
獣人は魔族寄りの中立。
ホビットはよく分からない。
といった関係だとか。
ドームラは交易都市なので、種族的なゴタゴタは持ち込まない決まりになっているらしい。
むしろ、魔族と仲良くなりたい人間や、エルフとドワーフが結婚してこの街に移り住むケースもあるらしい。
というか、女将さんがドワーフの旦那と駆け落ちでこの街に来たんだと。
なるほど。食事を作ってくれているドワーフ、旦那さんだったのか。
種族的な事の他にも色々分かった。
この世界、思ったよりも現代日本に近い。
普通にケーキ屋はあるし、本も売っている。
飲食店には魔法を使っているのか、冷蔵庫まであった。
上下水道も完備。ガスや電気は無いけれども、それは魔法で補完。
魔法があるおかげで科学は発展しなかったようだけど、それなりに発達した文明みたいだ。
流石にコンビニは無いけれども、生活する上での不便さは無いと思う。
うん、結構良い世界だ。
そんなこんなで気が付けばもう夕方。
服や装備を買ったので、手持ちの資金もかなり減ってしまった。
明日くらいから冒険者として依頼を受けても良いだろう。
うん、しっかりと寝て、明日からの仕事に備えよう。
おやすみなさーい。
目が覚めたら、ベットの脇に勇者が居た。