表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

馬車にて

 俺は運がいい。

 街道沿いに1時間ほど歩いた頃に商人の馬車に出会い、道中の護衛をするならと、街まで連れて行ってもらえる事になった。


「へぇーあの魔物の死体、兄ちゃんがやったのかい?」

「ええ、何とか魔物は倒せたのですが、奴にやられたせいか、記憶を無くしまして……」

「おー、そりゃ大変だねぇ」


 この世界の情報を得るため、俺は記憶喪失という事にした。

 こうすれば自然に聞けるだろう。


「この馬車は、どこの街に向かっているのですか?」

「ドームラの街だ……といっても、記憶が無いんじゃ分からんか。

 この辺りで一番大きい交易都市だ。

 あー、交易都市は分かるか?」

「あ、それは大丈夫みたいです」

「ドームラなら、人も一杯集まるからな。

 お前さんの事を知ってる人も居るだろう」


 居ないと思います。


「それでも、何日か見つからないかもしれません。

 私のような魔法使いが仕事をするなら、どうすれば良いのでしょうか?」


 何せ金が無い。

 宿代も飯代も無いのだ。

 働かないと死ぬ。


「ああ、それなら……」


 と、商人が言いかけた時、突然馬車が揺れた。

 いや、馬が倒れたのだ。

 身を乗り出してみると、小さな矢が刺さっている。


「ぐは……!」


 隣で商人の男がうめき声を上げる。

 彼にも矢が刺さったのだ。


 前を見ると、街道脇の茂みから小さな人型の魔物がわらわらと出てきた。


「ゴブリン……?」


 それは、RPGなどでよく見るゴブリンに見えた。

 この世界でもゴブリンと呼ぶのかは不明だが、とにかくゴブリンだ。


 俺は、奴等が出てくる茂みの位置を覚えた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ドームラなら、人も一杯集まるからな。

 お前さんの事を知ってる人も居るだろう」


 商人が話し終わる前に、俺は前方の茂みに炎の魔法をぶっ放した。


 ゴブリンは一掃できたようだが、馬が炎に驚き、暴走して滅茶苦茶になってしまった。


 やり直しだ。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ドームラなら、人も一杯集まるからな。

 お前さんの事を知ってる人も居るだろう」


 今度は電撃の魔法を放つ。


 ゴブリン達が電撃でショック死していく。


 馬は……落ち着いている。


「あ、あんた、よくゴブリンの待ち伏せが分かったな」


 ああ、やっぱりゴブリンなんだ。


「まぁ、カン。かな」


 ちょっとカッコつけてみる。

 ホントは一回不意打ち食らってるんだがな。


「ところで、そのドームラで仕事を探したいのですが、良い仕事は無いでしょうか?」

「……アンタほどの腕があれば、冒険者が一番だろうよ。

 俺が紹介状を書いてやるよ」

「是非、よろしくお願いします。

 さぁ、先を急ぎましょう」


 そう言うと、商人は一瞬怪訝な顔をしたが、直ぐに言った


「ああ、あんた記憶喪失なんだったな。

 魔物を倒したら、魔物コインを回収するのが普通だ」


 そう言って、馬車を止めて降りる。

 俺も後に続いた。


「魔物コインとは?」

「そのまま、魔物が持っているコインさ。

 どういうわけか、死んだらコインが出てくる。

 ソイツを街の衛兵とかに持っていけば、討伐報酬が支払われるんだ」


 要するに、魔物を倒せばお金が貰えるらしい。


「一応、錬金術師とかはコインを使って何か作れるらしいが……俺も良くは知らん」

「覚えておきます」


 会話の間にコインを回収し、馬車に戻る。


「あと、コレを返しておく」


 商人がゴブリンの物とは別のコインを差し出す。


「これは?」

「あんたがさっき倒した魔物のコインさ。

 ホラだと思ったが、今の腕をみると、本当に倒したんだろう?

 なら、そいつはお前さんの物だ」


 信じていなかったのか。

 いや、まぁそうかもな。


 改めてゴブリンと怪物のコインを見比べる。

 なるほど。それぞれの魔物を模した図案が描かれている。

 たぶん、魔物のランクとか危険度とかで値段が違うのだろう。


 俺はポケットにコインをしまい、これからの事を考えた。

 冒険者……か。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ