リトライ
「では、3つめの願いを言ってください」
天使が言った。
「……え?」
どうなっている?
何でまた天使が目の前に……?
「どうかしましたか?」
そうか、やり直しなのか。
大金持ちになる事を願う前に戻ったんだ。
「もしもーし」
「ああ、そうだな最高の剣士になりたい」
怪物が居るような世界なら、カッコよく剣で戦いたい。
「剣士……ですか。わかりました。」
ボン と音がした。
これで俺は最高の剣士になった筈だ。
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目が覚めると空が見えた。
とりあえず起き上がり、後ろに向かって剣を構える。
構える……剣が無ぇ!
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「では、3つめの願いを言ってください」
「最高の格闘家にしてくれ」
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目が覚めると同時に起き上がる。
俺は最高の格闘家。
後方の怪物に蹴りを入れて牽制しつつ思いっきり殴りつけ、骨を砕き、怪物を絶命させた。
倒すには倒せたが、自分の拳も痛い。
格闘家といえども、それなりの武器が必要なのかも知れない。トンファーとか。
俺は、別の戦い方を考えた。
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「では、3つめの願いを言ってくだ」
「最高の魔法使いにしてくれ。攻撃魔法も、治療の魔法も、この世界で使えるどんな魔法でも使える、最高の魔法使いだ」
「……即答ですね。ちゃんと考えてます? いや、結構具体的でしたケド」
天使が訝しげに聞いてくる。
「熟考した結果だよ」
「まぁ、貴方が良いなら良いですけど……」
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目が覚めると同時に起き上がる。
俺は最高の魔法使い。
とりあえず、後ろに向かって電撃をお見舞いする。
ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!
俺に襲いかかろうとしていた怪物が、苦悶の声を上げる。
ついでに、痺れて動けなくなっている。
俺はその隙に最大威力の炎を放った。
怪物は一気に燃え上がり、死んだ。
……よし、今回はうまくいった。
うん、実は魔法使いでも何回かやり直した。
最初は初撃の魔法当てた時点で油断して死亡。
次はちょっと怪我して、実は回復魔法が使えないと分かってやり直し。
で、今回。
うん、この能力は結構使えるかもしれない。
やり直しで戻る時間も自由に決められるようだ。
さて、この怪物の死体はどうしよう?
パターンだと、素材が売れたりするんだろうけど、どの部位が売れるかは分からない。
かといって、そういう「知識」をもらうと今度はイケメンか魔法が使えなくなる。
やり直す能力は手放す気は無い。
まぁ、いいや。
ここは街道。
歩いていれば、商人の馬車くらいには出会うだろう。
その商人に色々聞けばいい。
ついでに、護衛代でこの世界のお金を手に入れられたら上出来だろう。
俺は、道沿いに歩き始めた。