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色欲と暴食

 アイリスと出会って4日目の朝。

 俺たちは魔王国の街で朝を迎えた。


 中央の混乱はこの辺りには影響ないらしく(アイリス達が逃げる時は別ルートだったらしい)、街中も平和で俺のような人間もあからさまな差別を受けていない。

 もっとも、「魔族の貴族令嬢」として振る舞っているアイリスが居るからこそだろうが。

 ちなみに、アイリスは貴族令嬢どころか王女なのだが、それは流石に隠して行動している。

 過激派に通報されたら厄介だからだ。

 とはいえ、こんな国境近辺では「人間滅ぶべし!」な過激派の影響はほぼゼロだということで、俺たちはゆっくりと英気を養って朝を迎えた。……のだが。


「なんでミカはそんなにぐったりしてるんだ?」


 ミカが朝食の席でも机に突っ伏していた。

 いつもなら山盛りの料理を貪り食っているのに。


「アナタ達が! 毎晩毎晩! パンパンアンアン(サカ)ってるからでしょうが! この、色欲夫婦が!」

「いやん♪ 夫婦だなんて、式はまだですわ♪」

「恥ずかしがるのはそこじゃないです!」

「ははは。アイリスは可愛いなぁ。 でも、お前に色欲とか言われたくないぞ、暴食天使」

「ぼ、暴食……!?」


 何かショックを受けているミカ。

 天使なのに7つの大罪を犯していると云われるのはNGなのかもしれない。

 ……自覚無かったのか?


「それに、アイリスとの行為は純粋に愛を確かめ合ってるだけだ。断じて色欲なんかではない!」

「アキミツ様……ぽっ」


 それを聞いたミカは何故か頭を抱えた後、諦めたように言った。


「何でも良いですから、少しは自重してください。同じ部屋でノクターン的行為を延々夜中までヤられるのは辛いです」

「なら、別の部屋とれよ! グリーフォールと一緒に!」


 こっちだって、2人きりになりたいのだ。


「私は姫様の警護があるので、一緒の部屋でないと都合が悪い」


 さっきから黙って朝食のサラダを食べていたデュラハン娘が言った。

 ……机に置いた首に体がサラダを食べさせてるんだが、食べたモノはどうなってるんだろうか?


「そうなると、私一人で部屋を借りる事になるので、お金が足りないんですよー」

「毎度言うけど、食費削れよ」

「あーうー」


 おお、悩んでる。

 そんなに追い詰められてるのか。

 自重する気は無いけど。



「そんなことより、本当にこのまま魔王城まで行くのですか?」


 オレンジジュースを飲みながら、グリーフォールがアイリスにそんな事を聞いた。


「何か問題ですか?」


 小首をかしげるアイリス。

 あー可愛いなぁ……


「ユウキ、防音魔法を」


 グリーフォールの求めに従って防音魔法を展開する。

 ここから先は周囲に会話が漏れることはない。

 そんなのあるなら、夜使って下さいよ! とか聞こえてきたけど無視。


「このまま進めば、早晩(おそかれはやかれ)反逆者のバール将軍の軍と戦う事になります」

「蹴散らせば良いのでは?」

「天使よ、一般兵といえども5千人も居るんだ。仮に姫様が戦っても、4対5千では勝負にならない」

「まぁ、マトモに戦えば4人で5千人には勝てないな」


 俺も断言する。


 ゴブリンとかワンパンで死ぬような奴等なら広範囲魔法でどうとでもなるが、ちゃんとした訓練を受けた正規兵相手では無理ゲーだろう。

 しかも、俺は魔法はチートだが体力とかは並。

 アイリスを追っていたモンスター軍団も500匹居たかどうかだったが、あれだけでも結構疲れたのだ。


 多ければ強い。


 一騎当千だろうが、本当に千人相手にしたら勝てない。


 実際、アイリス達は人間の国から派兵してもらおうとしていたのだ。

 クーデターの鎮圧。しかも王女の要請。

 派兵の大義名分としては十分だろう。

 だが、それが全面戦争の引き金になる可能性は十分にある。

 ヘタな事はできない。


 数では勝てない。数を揃える事もできない。

 ならどうするか?

 諦めるのか?

 諦めたら試合終了どころか、世界が終了するのだ。


 現在、反乱軍5千と戦っているのは、近衛兵と魔王派の兵士が計1500。

 4倍の敵を凌いでいるのだから結構凄いと思う。

 とはいえ、守ることが精いっぱいで攻められない。


 なら、攻められるようにすれば良い。


 多ければ強い。


 それは確かだが、「ただいるだけ」のお飾りなら怖くない。

 例えば……大将が殺されて混乱した兵士とか。


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