敵の正体
龍が川で魚を捕まえようとしていた時、どこかから矢が放たれた。
龍は間一髪で矢から避けることができた。
だが、その矢の根源はなくなることはなく、龍を追い続けてきた。
立ち止まり、矢を放ってる方向へと向き直った。
そして、生い茂る森の中から現れたのは、髪が長く手入れもされず、着ている服も服とは思えないような身なりの女性3人。
女A「・・・。」
女B「・・・。」
女C「・・・。」
龍「君たちは何者なんだ!」
女達「ブツブツブツ・・・。」
龍は目の前に現れた女たちに問いかけるが、返ってきたのは小さなささやきで。
龍「なんなんだ?いったい;」
女達「・・・く・・・に・・・。」
少しづつ、女たちの声が聞こえてきた。
女達「肉ーーーーーーー!」
龍「ひっ!;」
女たちはそう叫ぶと龍めがけ、襲い掛かってきた。
突然の出来事で、龍は、小さな悲鳴を上げるだけで逃げることができなかった。
だが、訪れるはずの痛みはいつまでたっても襲ってくる事はなく、閉じていた目を恐る恐る開けてみると、目の前に見知った背中が立っていた。
「・・・。」
龍「夜魅!」
龍は情けない声で、涙腺が少し緩みながら、彼女の名前を呼んだ。
夜魅は、手作りのような小刀で女たちを止めていた。
「・・・したのに・・・。」
龍「え?」
夜魅は消え入りそうな声で何かを呟いたので、聞き返す。
「せっかく、警告したのに何でここにいる?」
龍「ひっ;」
夜魅が余りにも冷たい目で見てくるものだから、思わず情けない声が出た。
「この獲物は私のだ。手を出せばお前たちの命はない。」
包丁を持った女三人を食い止めながら、夜魅は説得している。
女A「喰わせろ・・・・喰わせろ。」
「自我がないタイプ。それほどまでに、お腹を空かせてるの。・・・けど。」
龍「!」
気がつくと3人の女たちはその場で崩れ落ちていた。
龍「え?!今、何をしたの?!」
「話は後で。とりあえず、付いて来て。」
夜魅はそういうと、足早に歩いていく。
龍(こ・・・殺してないよな?;)
倒れてる女たちを横目に龍たちはその場を後にした。
しばらく歩くと木々が生い茂ってくらい森の置くまで来ており。
龍「・・・さっきはありがと・・・。」
龍は目の前の背中に礼を言おうとつぶやいたが、次の瞬間、頬にとても通った音が鳴り響いた。
龍「え?;」
「・・・。」
夜魅はいつの間にかこちらを向き、右手で思い切り龍の頬を平手打ちしたようだ。
「なぜ、昼間に川に行った?」
龍「え?; なぜって?;」
龍は、夜魅が言ってる事がまったく理解できず困惑し。
「・・・私は、きちんと説明したはずだけど?」
夜魅が冷めた目で龍を見やり、小さくため息をつく。
龍「・・・あ; 君が言ったこと、忘れてて;」
「無警戒にもほどがある。私が居なかったらどうするつもりだ?」
龍「すまない;夜に火を使うなって言われたから狩りは昼にするものだと;」
「川には昼には近づくなといった。近づくなら境界線の内側にしろともな。」
龍「・・・いろいろとごめん;」
俺は素直に非を認め、夜魅に謝った。
「・・・次は命がないと思え。」
そういい夜魅が立ち去ろうとする。
龍「待って!・・・今なら君の言葉を忘れないから、昨日、言ったことのおさらいをしえもらえたらな?・・・と;」
竜は申し訳なさそうに夜魅に申し立てる。
「・・・。」
夜魅は冷めた目で龍のことを見て。
少しの間の後、彼女は口を開いて。
「・・・夜に火はなるべく使うな。」
龍「あ・・・あぁ。」
「昼間歩き回るなら私の設置した境界線の内側で動け。」
龍「?境界線?」
「あの人たちに見つけられない範囲に人工物を置いた。目に入ればわかるものだから。」
龍「!そうだ!さっきの人たち死んでないよな?!」
「刀に仕込んだしびれる効力でしびれてるだけ。数時間すれば起き上がる。」
龍「そうか。よかった。」
「殺されかけたのにあの人たちが死んだら困るの?」
龍「まぁ、人間が死ぬのは見たくないからな;」
「貴方、お人よしね。」
夜魅は龍のことをさらに冷めた目で見てそう言った。