世界の小さなかけら
この世界は、腐ってる。
上に住む人間と下に住む人間で分かれてる。
上の人間は、お金持ちで、下の人間は、貧しく、上の人間たちに存在すら知られていない。
下の世界に住んでいる者達は、日々、生きるための戦争を起こしている。
そんな下の世界で、私は生まれ育った。
貧しくって、村とも言えないほどのボロい場所で、生まれた。
村の男達は、老人や若い女や子供のために、お金を稼ぎに村を出て行き・・・音沙汰がなくなる。
初めの頃は、お金も食事も滞りなく送られてきたのに、5年も経つと、それは無くなっており。
女「私は子供がいるのよ!死ねない!」
女「子供なんて、ただのお荷物よ!いいから、私に食わせろ!」
女「あんたのところの、おばあさんはどうしたのよ!それを食べればいいじゃない!」
女「そんなのあんたには関係ない!」
「・・・;」
この頃、まだ、5歳の私には、この現状の意味が解らなかった。
母「!“ ”!こっちに来て!;」
「あっ。」
母が、争ってる女の人たちから、遠ざかるように私を連れ出す。
母「いい?“ ”。何があっても、私以外の人に見つかっちゃ駄目!お母さんとの約束!解った?」
「・・・ねぇ?お母さん?何で、あの人たちは、争ってるの?」
母「・・・貴女は、何も心配しなくっていいの。私が守るから。」
「・・・うん。」
お母さんは、優しく私を抱きしめた。
私と母は、人気のない人目につかない場所でひっそり暮らしてた。
誰にも秘密の場所で・・・。
そして、お母さんは、野草の知識があり、私に色々と教えてくれた。
そんな素朴で幸せな時間が、ある日、突然、音を立てて壊れた。
ガサガサッ
「んっ・・・しょっと。」
私も自分が食べる野草の知識は母に叩き込まれていたので、野山で野草を探すのなんて、慣れたものだった。
人里から離れてるおかげか、誰にも会わず、いつもは真っ直ぐ家に帰っているのだが。
兎「・・・。」
「あ!兎さん!お母さんの大好物だ!」
兎を見つけて、私は、母の笑顔見たさに兎を捕まえる決心をした。
そして、兎を夢中になって追いかけてると辺りはいつの間にか変わっており。
グサッ!
「・・・?」
女「あら?もう一匹、美味しそうな兎がいたわvV」
先ほどまで、私が追っていた兎の首元には、包丁が刺さっていた。
包丁も兎を殺した場面も恐怖心はなく、恐怖心が沸いたのは目の前の女に対してだけで。
私は、本能で反対方向に走ってた。
女「逃げる兎、だーいすきvV」
そう言った女はまるで鬼ごっこをするように楽しそうに私を追いかけ始め。
「はぁっ!はぁっ!っ;」
女「ほらほら!早く逃げないと追いついちゃうよぉ?アハハ!」
30代ほどの女性は、実に楽しそうに私を追ってきたが、私は必死すぎて何も考えれずに走り続け。
クンッ
「きゃっ!;」
木の根っこに足を取られて転んでしまい、私は慌てて立ち上がろうとするも。
いつの間にかその女は私の後ろに立っており。
女「・・・追いかけっこも飽きちゃった。ねぇ?そろそろ、食べていい?」
ウサギを殺した時の包丁を握りしめそういう。
「ひぃっ!;」
私は、あまりの恐怖にそれ以上、立てなくなり、死を待つだけの姿に。
・・・だが、何時までたっても、私の体には痛みはなく、恐る恐る目を開くとそこには。
母「しっかり・・・して?“ ”;」
「お・・・かあさん;」
蹲る私の母は、包丁で傷つけられたのか血が出ており。
女「あら?大きな兎がかかったわ。」
母「げほっ。” ”。私の分まで・・・げほっ!・・・生き延びて?」
「おか・・・さん;」
女「子供の兎の方が柔らかくって美味しいんだけど、この際、どっちでもいいわ。」
「!はぁっ!;」
女「あはははっ!あはははははっ!」
必死に立ち去る私の背中には、母を殺したであろう、あの女の笑い声がずっと付き纏ってきた気がした。
【惨劇から数十年】
あいも変わらず上の世界としたの世界の格差はなくならず、下で生き延びた人間も僅かとなっていた。
今では、あの、小さかった少女も生き延びているのかわからない。
そんな時、上の世界では“ある争い”が起こっていた。
男「逃がすな!追えー!」
?「はぁっはぁっ;」
一人の男が何人もの男たちに追われており、川までやってきた。
?「!はぁっ;・・・行き止まり;」
男「もう逃げ場はないぞ!龍。」
龍「ちっ;」
男「龍よ?なぜ、今になってこの国が腐ってるなどと言い出すんだ?」
男たちの中から、少し年配の男性が現れ、目の前の男に問いかける。
龍「この世界が腐ってるといったんだ!金で物を言わせて、下で生きてる者を見ようともしないこの世界は腐ってるっていったんだ!」
龍と呼ばれた男は、目の前の男たちにそう言い放ち。
男「そうか。上の世界が嫌なら、下の世界で生きるがいい。」
そういうと、年配の男は銃を引き抜き、龍の肩を打ち抜いた。
龍「つぅっ!;」
龍はよろめき、川へと落ちていき、そのまま流されていく。
男「・・・さらばだ。わが息子よ。」
年配の男は龍と呼ばれる男の父親だった。
その頃、川に流されてる龍は・・・。
龍「ごぽっ!;」(やべー; 肩の怪我はそれほどじゃねーけど、流れが速すぎる; このままじゃ、下の世界に付く前に死ぬんじゃ?)
そのまま龍の意識は途切れた。
そして、龍の体は周りがうっそうとした森に流れ着いた。
その森は、静かだが、何かがひそめく感じで気味が悪い。
ザッ ザッ ザッ ザッ
気味の悪い森から、髪の長い女が現れ、龍に近づいていく。
龍の体はピクリとも動かない。
?「・・・。」
女が龍に触れられるくらい側に寄ったが、女は見てるだけで動こうとしない。
龍「・・・うっ;」
「びくっ!・・・なんだ。生きてたか。」
女は、少し驚くも、小声でそうつぶやくと男を川から引きずり出した。
龍「・・・。」
「?あぁ。肺に水でも入ったか?」
女は冷静に、男に酸素を送るように唇を男の唇に合わせた。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
これからもっと、世界の残忍さに触れていくつもりなので、読み続けたいと思ってくださる方は、お気をつけてお読みください。