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第八話 力の使い方

下心の丸出しなまま、午前中のトレーニングを終え、気分が乗ったままさっさと昼食を済ませ、いつもと同じようにミネさんに呼び出されていた場所に向かうと、そこには既にカオリさんが来ていた。部屋のドアの小さな窓の部分から、彼女が経っているのが見える。

ドアを開けると、すぐさまカオリさんが振り返り、また微笑んでくる。

「来るの早いじゃん」

いつも、ミネさんの場合は、待ち合わせ時刻ギリギリに到着するようにしている。毎度毎度「もっと余裕持ってこればこんなに苦労しないんだよー」と気の抜けた感じで言ってきているのがここ一週間の日常だった。

俺としては異例の、三十分前に到着。普段なら先ほども言ったが絶対にしない。

「今日は色々と早く済ませたので」

「そうなの、偉いね」

また微笑んでくれる。だが、その微笑みの裏にある何かが本当に気になって仕方がなかった。

「じゃあ、速いけど今日の特訓始めましょうか」

「はい!」

喜んで近くに行くと、カオリさんの表情が変わった。正直に言おう。かなり怖そうだ。目が大分細くなったように見える。

「あなたの力のことに関しては、少ししかアークさんから聞いてないの。だから、ちょっと前と同じようにやってみてくれる?」

声のトーンも大分下がった。やはり、これが本当のこの人なのだろう。先ほどまでのは、やはり上辺だけの関係で済ませるための手段か…

前回と同じ姿勢、状況を思い出し、強く念じる。バリアがうまく使えるように。

何度も強く念じると、腕に前回と同じようなバリアが発生した。しかし、腕を組んだまま、どこかを見上げて考え込んでいるカオリさん。

「うーん、なんと言えばいいのやらか…これはこれでありなのよねぇ……」

「え、それってどういう…」

人差し指を上に立てて、解説し始めるカオリさん。

「ユーヤ君の使っている力は、ある意味これで理に適っているのよ。つまり…」

「つまり?」

「これはこのまま、どうやって活用するか考える方がいいのかもしれない。この力の出し方にはあまり干渉せずに、使い方に関して変えていけばいいんじゃないかな?」

「と、いいますと?」

「それはねー…」

ゴクリ、と息を飲む間が開くと、カオリは

「自分で考えなさい」

「えぇーー!?」

まさかの、人に丸投げする形にされた。

「こういうことは、戦う君自身で会得させて、自分で考えて使っていくものだからさ。そういう細かい部分を私が教えるわけではなくて、もっと軽く想像させただけでも力を発現できるようにするだとか、サブな面でのサポーターだから!」

「…そうですね、そういうことなら!」

「そういうわけだから、簡単に力の使い方についても学ぶ必要があるのよね」

「そりゃあ、わかってなければいけないことですしね」

「そうなのよ、あ、あと私多分あなたと同い年だから、敬語なし!いいね!」

「えぇ、えええ!?」

現在、俺は大学一年、つまり、何もなければ18歳か19歳ってところだ。カオリさんは、見た目がもの凄く大人びている。老けているとかそういうことではない。雰囲気が、おおらかで穏やかなこの感じが、とても同じ年齢には見えなかった。

恐らく、住んでた世界が違うように、それほど俺のしたことのない壮絶な経験を重ねてきたのであろう、と考えていた。だがしかし、そういう考えすらも、この人の行動は覆していくことになる。それは今はまだわからなかった。

「だから、さん呼びも無しだから!いいね!」

「り、了解…」

どうしても、憧れが強すぎてさん呼びを変えられそうにはなかったが、本人にそう言われ、先程垣間見えた裏の姿を想像してしまうと、従わざるを得ないとしか言いようがなかった。

「で、ここからが本題だからね、ちゃんと聞いててよ?一度しか話さないからね!」

まるで、面倒な教員のような語り口で始まった。

とても短くまとまりそうにない話だったので、勝手に自分の中で解釈をした。

力を使うには、想像力が欠かせないものであるのは、もう言うまでもない。力として具現化させるには、その力の特徴をより細かく捉え、構成要素なども的確に把握しておく必要がある。より具体的に想像することができると、現実に存在するあらゆる物体にかなり近いものを生み出すことができる。だが、それにもルールがある。

人それぞれで、想像力のキャパが存在し、そこに収まる範囲内の力でしか使用することができない。つまり、力を使用することに、莫大なエネルギーがいるとしよう。だがそれは人のキャパに収まらないのであれば、半端なものしか生み出すことができないか、もしくは生み出すことすらできない。

今の俺の力によって生み出されたバリアは、その半端なものの部類に属するらしい。だがしかし、理論的に言うならば、この半端なものでトップクラスの戦闘能力を誇る(ナオ)のような剣を弾き飛ばすことは不可能であるとのことだった。ということは、俺の使った力には、何かからくりが存在する。

そういうことを調べるために、カオリは俺についている、とのことだった。

「私の予想では、何度も重ねて念じているってことだったから、多重に薄くバリアを敷き詰めて、剣から来た衝撃のエネルギーを全部反射させているってこと。もしくは、ユーヤ君の持ち得る莫大な量のエネルギーによって、剣ごと弾き飛ばしてしまったか。この二つに限るよ」

「可能性か、偶然か、ってとこか」

「そうなるね。もうちょっと大きなエネルギーを必要とすることをためしにやってみて、それで判断するのが一番早いけど…」

「けどなんだよ?」

カオリは空を仰ぐようにして見つめている。

「これで、ユーヤ君がホントに化け物レベルの力の持ち主だったら、わたしちょっとへこんじゃうなー、って」

また、クスっと、裏のある微笑みをする。

カオリの言葉には、何か必ず意味を含んでいた。実際に、なにかあるからそういうことを言っていた、と実感できる機会がついさっきあったのだから。

恐らく、力のことに関して何かあったのだろう。

無理に踏み込むわけにもいかない。ここが地雷であるかもしれない。その時が来るまで、そこには触れないのが得策なのだろう、と俺は考えていた。

「まあでも、やってみないとわからないし、やってみようか!どこまで力が使えるのかを!」

俺は無言で頷く。そして、静かに目を閉じる。

先程の力のからくりをいかし、より詳しくイメージをする。そして、腕だけではなく、全身を包み込むような大きいエネルギーの循環をイメージしていく。

強く、強く念じていく。

強く、強く。


そうして、何か体に異変が起こった。

そこで、目を開けてみると――――――


「それが、魔神と呼ばれるが所以の力なのね、ユーヤ君」


俺の全身は、著しく、輝くようにエネルギーをまとっていた。


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