第五話 進む世界
第五話、何故か都合上短くなってしまいました。
改稿を何度かするかもしれません。ご了承ください。
寝かけていたアークを起こして、次に何をすべきなのかを聞いたが、
「そんなのこれ以上は知らない」
とあっけなく返されてしまった。正直そうやって言われてしまうと何もできないし、地球へ帰るための唯一の手段として頼ってきたのに、と心の底から思わず言葉が出てしまいそうになった。
「戻るための手段を探さないといけないのはわかってるんだが、こんなことは今まで一度もなかったものでな、すまない…」
「まあ、その点は仕方ないとしか言えないっすね…」
とりあえず、泊まるところとか食事するところも金もないならしばらくは俺のところにいればいい、と言ってくれたので、それに甘えることにした。
一刻も早く、地球へ帰りたいと考えるのが、普通の人のすることなのかもしれない。
でも、俺はそう思わなかった。
地球へ帰ったところで、俺に何かが待っているわけでもない。強いて待っているものは、大学へ行かなかった期間に取れなかった単位の取り直しか、課題か、親のうるさい説教くらいだろう。
その程度なら、いっそこっちの世界で戦って朽ち果てた方がましだとも、考えていた。
正直、周囲から見た自分はかなり病んでいるようにも見えたし、そう言われても仕方がないと思っていた。地球での出来事が心身を共に疲労困憊へと誘うことしかなかったから。
そんな顔を、こちらの世界ではなるべくしないようにしていたのだが、かなり長い時間共にいたアークには気付かれたようで、じっとこちらを見るような機会が多くなってきていた。
「なあ、ユウヤよ」
そんな顔を見かねたのか、アークが声をかけてきた。
「ん?」
「お前さ……」
変な間が、余計に場を冷たくする。が、その次に出てきた言葉は俺の想像していたような、慰めの言葉ではなく、
「友達いないだろ?」
「なっ…!」
寧ろ攻め込んできた。俺の中でも聞かれたくない質問ランキング上位を占めるワードを躊躇いもなく!
「お前の普段の様子だと、自分から話すタイプの人間じゃあないことはよくわかるし、さらに言うならばあまり触れてほしくない、みたいなオーラが漂ってるのがあるからな」
「オーラ?」
「まあそんなことはお前の好きにすればいいことだがな、だがしかし」
オーラってなんだよ、それスルーして続けるなよ…
アークは俺に思いっきり指を指して、告げる。
「俺はそういう奴があまり好かん。それだけは言っておく」
「は、はぁ…」
俺の一番苦手なタイプの人間と、組んでしまっているのかもしれないと今気がついた。
中途半端な世話焼きは、かなり苦手だ…
森を使えるようになった力で飛ぶ練習をしながら、元いた拠点に戻ってきた。拠点のデカい扉の前に降り立つと、帰ってくるのを知っていたかのように扉が開き、そこからミネさんとナオが出てきた。
「お帰りなさい、アーク」
ホモのような雰囲気を醸し出すミネさんとは正反対に、アークはめんどくさがるように振り払うが、それすらも良しとするミネさんがいた。
「やばいな、あの二人…」
「まあ、いつもあんなだったから気にしない」
いつの間にか隣には自称女統治者のナオが立ってい…
「今なんか変なこといってたな!?」
「なんであんたまで心の中を読もうとするんだ!」
心の中ですらも、言い切る前に攻撃を仕掛けてくる自称女…
「だーかーらー!自称じゃないって言ってんでしょうが-!」
鋭いとび蹴りが、俺のあばらに直撃する。
「いってぇ!」
「お前養われてるんだから、ちょっとは人のことを尊敬したらどうなんだ!」
「別にナオに養われているわけでは…」
ぷつっと、何かが切れる音が、確実に聞こえた。
「…もうこれは駄目だね」
「そうだな、確実にユウヤが悪い」
「え、ちょっと、そこのお二人さん!助け…」
ナオの手には、力によって生み出された剣が握られている。
「まあ、止めるなら自分の力でなんとかしろ」
確実に、アークもミネさんも助けるつもりは無いらしく、着々と近づく足音に、俺の心拍数は急上昇していく。
「調度いいじゃない、ここで実戦訓練だよ♪」
「え、は!?」
ミネさんが急にバカげたことを言い始めると、続いてアークも、
「そうだな、多分どれだけ攻撃喰らっても殺しはしないだろうから、安心して戦えるぞ、これは」
「便乗してんじゃねぇよ!!」
「ユーウーヤーーー!!」
やばいやばいやばい!
これは、確実に死ぬ!
目の前のナオから放たれる殺気が半端な過ぎて、もう生きていられる気がしない…
やるしか、ないのか…
とりあえず、体にバリアって張れないのかな…
そうこう考えているうちに、ナオはすぐ前までやってきていた。
「一回、死んどきな!ユウヤ!!」
「うぉあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
体にバリア、と繰り返し呟き、想像し、祈り続けた。
そして、ナオの剣が振り下ろされた。