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第二話 その想像力は

室内で激しく行われたミネとナオによる戦いは、突如割り込んだアークの一太刀により、終戦を迎えた。

ミネは本気で戦っていなかったらしく、アークが剣を抜いた瞬間に武器を消し、ナオに土下座。一方的に停戦を求める形にし、終戦。

それでも、室内の壁に軽くヒビが入るほど、粗っぽい戦闘を行っていた。

よほど、アークが剣を振るとヤバいらしく、自称女統治者のナオですらもすこしビビっていた。

「で、こいつが本当に地球から来たと言ってたのか?」

ミネを土下座させたことにより、ナオの気分は最高潮にまで達しているようだった。髪を軽く触りながら、満面の笑みを浮かべている。

「そのようです。この星のことについても、『I・N・F』についても、何も知らないようですし、恐らくは…」

「こんな男が、魔神ねぇ…」

「あのー、順を追って教えていただけると助かるのですが……」

俺以外の3人が、皆同時にこちらを睨む。

「まあ仕方がない。異星の住人だからな」

「それもそうだね。ナオちゃん!」

ミネがナオの方を向く。また、ナオは武器を出そうと立ち上がりかけていた。

「はなしてあげな、『I・N・F』に、この星について」

「えー、めんどくさそうじゃんそれ」

「そこをなんとか…」

立場上、一応頭を下げておく。こうでもしないと、この自称女統治者はやってくれそうにないからな…

「…仕方がない、教えるか一通り」

ナオが立ち上がり、遠くに置いてあったホワイトボードらしきものを『I・N・F』の力で引っ張り、近くまで運んだ。

「えー、それでは、一通り説明させていただきます!」

ホワイトボードに、一気に端から端まで書き始める。普通、合間に説明を入れていくはずなのだが…

「ほい、かけた!終了!」

「えぇ!?」

書いただけで、説明を終えられてしまった。図が多く、字は最小限に書かれているため、理解しがたい。

「…やはりか」

アークはため息をつき始める。

「予想通りの結末になったね。流石ナオちゃん!」

「ほめてないよね、それ!?」

また暴れ出そうとするナオを、アークが立ちあがり、静止する。そのままアークがホワイトボードの方へと向かい、

「こいつら二人には荷が重い」

「「なんだって!?」」

「ということで、俺が代わりに説明する」

ナオがアークの座っていた席に移動し、アークが話し始めた。

「この星は、お前がいた地球からは観測できないほど、遠く離れた星、『神星』神々が、この星にむけて多大なる恩恵を与えていることから、そう呼ばれるようになった」

「多大なる恩恵ね…それが、あなたたちが使っていた力の、その、『I・N・F』って力なのか?」

「そうともいえる。『I・N・F』とは、この星、『神星』においてのみ使えると言われる、いわば異能、地球で言う超能力のような類のものだ。これは、力の想像、『Force of Imagination』の略にあたる」

「え、ちょっとまてよ」

違和感しかない。それなら普通に『F・O・I』でいいんじゃないのか…

「言いたいことは大体わかる。略の綴りがおかしいとかそんなだろう?」

「そう、まさにその通り!」

「残念ながら、この世界を創造した神は、ひねくれ者でな?」

「は、はぁ…」

「なんだかネーミングセンスが無いだの、ゴロが悪いとのことで、順番バラバラのゴロがいいものを適当に作りやがったわけだ」

「なんなんだ、その神様は…」

頭を抱える俺以外の三人。

「その点に関しては、何も言えないのが現状で…」

呆れたように言うナオ。

「まあ、その神様についてはおいおい触れることとして、だ。この力は、自分の想像を具現化することができる。この力を用いることにより、」

アークは、剣を掌の上から出して見せる。

「このように、本来の製造過程をすべてぶっ飛ばして自らの想像を具現化することができる」

「だが、その力を使うには何か必要じゃあないのか?代償となる何か別のものとか…」

「その点に関しては、この星の全域に存在する未知なる恩恵により、力が使える。だがな」

アークが先程まで出されていた剣を消す。

「そんな魅力的な力も、無限ではない」

「というと?」

「この力は、個々の精神力や想像力の豊かさや、知識量により大小の差が生まれる。例えば、俺が剣を出そうとして、その剣に対する情報や、固有の能力を想像することにより、俺の剣が初めて実体化させることができる。武器などの必要な行程をより詳細に、綿密にイメージすることにより、その武器はより強くなるというわけだ。人の想像力、精神力と言えど、底がある。その力の許容量を超えると、一定時間力は使うことができなくなる」

「さらに、この星には存在しえない知識なんかも、この力の増大に所以する。つまり」

急に話し出したミネは、立ち上がると俺を素早い仕草で指差し、

「君は、この星に無い様々な知識を持っている。この力を使うとなれば、一騎当千の力を得るということになるわけだよ」

「この力の使い方や、あり方、特性などをお前が掴んだとしたら、それほど俺達に脅威となりうる存在はそういるまい」

「だから、俺が魔神と呼ばれていたんですか?」

「それは違うんだよ」

さっきまで寝ているかのように静かにしていたナオが、いきなり話し出す。

「魔神ってのは、この星の全土に伝わるお話に出てくる、異星から訪れる絶対的力の保持者のことなんだ。その魔神の容姿は、黒髪の茶と黒の目の男ってなってるんだよ」

「まあ、このままいけば、俺がその魔神ってのと立ち位置が被らなくもないな」

「見たところ、この星に対する知識もなければ、力の使い方もわかっていないと見受ける。つまり、お前は魔神ではないということだな」

まあ、変な誤解を受けるよりは、誤解を解いてもらうために紛れ込んでしまった一般人的なアピールをしておけば今のところは安定するだろうし、まあいっか。

「なぁなぁ」

ナオが俺の顔の近くまで立ち寄る。

「な、なんでしょうか…」

「お前さー、うちの国の正式な戦士にならないか?」

「え、戦士?」

「この世界における、階級のようなものだ。一番トップから神、統治者、騎士、準騎士、戦士、平民」

「なんだその身分制度は…」

「しかし、とんでもないことを言う女だな、相変わらず…」

再び呆れるアーク。

「こいつは、確かに育てればとんでもない戦力になるかもしれない。しかし、その育て方を間違えれば、本当に魔神になるかもしれないというのに…」

「そんな先のことは、後々考えればいいじゃん!」

「お気楽女め…」

「ん?何か言ったか?」

「なんでもない…」

さっきから呆れっぱなしのアーク。それに対し、ナオとヨネはにやにやしっぱなしだった。

「あの、俺の意見は…」

「あぁ、そうだったな」

完全に俺の存在を忘れていやがった。俺のこと話してるっつうのによ…

「どうだ、うちらの仲間にならないか?」

正直、心強い味方は増やしておいた方がいいと思うが…

「元の世界に帰る手段を得ることが、俺にとっては最優先なので…そちらを優先させていただきたいんですけど…」

「そうか、お前がどうやってここに来たか、まだわかってないわけだしな」

こういう時だけ、頼りになるアークさん!!

「まぁ、その件に関しては任せておけ!」

不安しかありません。あなたには任せたくないのが正直な意見です。

「あたしの知り合いに、超長距離転移能力が使える奴がいるから、そいつに話を通しておいてやる!その代り、その分働け。どうだ??」

そんな自信満々な表情でこちらを見ないでください…

「この件に関しては、心配ないぞ。その知り合いは、かなり腕の立つ優れものの統治者だからな」

「アークが言うなら、心配ないか…」

「おい、なんだそのあたしが信用できないみたいないいぶりは!!いい加減に…」

「そろそろ真面目に話させろ、ナオ」

流石のナオですら、黙り込む。ヨネは先程から人格が変わったかのようなしゃべり方を始めていた。

「どうだ、ユウヤ。お前にとっても、悪い話じゃないはずだぜ」

鋭い目つきで、こちらをみつめるヨネ。アークも、ただならぬ視線を俺に向けているようだった。

「俺達ほどの上位階級者がお前を指導するから、他の奴らに比べて能力的な成長は著しいはずだ。安心していいぞ」

自分で言うあたり、どれだけ自信があるのやら…

「あたしたちの国は、少しばかり戦力が足りない」

黙り込んでいたナオも、先程までとは違うトーンで話し始める。

「アークやヨネくらいの戦力を持った騎士クラスが、あと一人くらいいれば、現状の戦況も打破できるし、安定させることもできる。だから…」

どこか、心細そうな目つきで見られては、どうにも断りにくくなってしまうな…

「…仕方ないですね…少しの間でよければ、色々とよろしくお願いします」

「よし。そうと決まれば」

突然、アークが俺の首根っこを掴み、部屋の外に出る扉の方まで誘導する。

「おい、ちょっと…」

「ナオ!しばらくこいつを鍛えさせる!借りるぞ」

「おう、任せる!」

こんな横暴な師匠は、こっちからごめんだっての…

掴まれて引きずられる姿勢から立ち直り、アークの進む方向に同行する。

「あの、これからどこに行くつもりっすか」

「戦士になるにあたって、必ず一度は訪れなければならない場所があるんだ。それは、」

アークは、進行方向前方の山に指をさす。

「創造主の泉のある、クロス山」

その山は、俺が見る限りでは、今までに見たことのないほどの、大きな穴が開いたかのような形状をしていた。

「あの穴のような形の最深部に、泉はある。そこの奥にある泉の恩恵を受けることにより、より強大な力を得ることができるんだ。ただ、道中は険しいからな」

息をのみ、これか迫りくる恐怖に立ち向かう意識だけでも持っておこうと、この時俺は、思っていた。


この山で、これから起こりゆくことなど、何も知らずに。


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