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第八話 魔術教典②



魔術教典はまだまだ続いていた。


――――


『【魔術について その一】


前の章で、魔術師になるには魔力量がものを言うというのは説明したが、魔力量というのは一種の才能であり、持たざるものは持っていない。


だが、そのように魔力量が乏しい者のために魔力帝石というものもある。


魔力帝石とは基本的に第三級危険度以上の魔族、魔獣の臓器の中で稀に精製されるものであり、魔族、魔獣の魔力を微量ながらも長年に渡り吸い取ってできるものだ。


そのため、魔力帝石には無機物なれど魔力が備わっており、それを用いて魔術を発動させることもできる』


――――


僕はさらにページをめくる。


――――


『【魔術について その二】


ではこの書物の本題、攻撃魔術について書き連ねていこう。


攻撃魔術というのは、その名の通り術者が不特定多数の対象を相手取り、それらに向けて攻撃力のある魔術を放つことだ。


そのために、攻撃魔術に限らずすべての魔術に共通することだが、魔術を発動させるためには大まかにわけて下記の二通りの方法がある。



一。


呪文詠唱。



二。


魔法陣。



この二つでは、どちらの方が流用的かというのは一概に決められないが、それぞれに独自の長所、短所がある。


呪文詠唱というのは長年の歴史の中で試行錯誤して作られてきたものであり、ある定められた呪文を詠唱するとそれが引き金となって魔力を放出し、魔術が発動させられる。

そのため、普段は何も持ち歩くことなく、状況に応じて魔術を使い分けることができる。


だが、呪文詠唱は大きな魔術を用いれば用いれるほど、長くなる。

そのため、突発的な反応に弱いということもある。


一方、魔法陣とは比較的最近になってから発明されたものであり、この書物の表紙のように、あらかじめ魔術が発動できるような術式を編み込んである。

そうして、術者がその魔法陣の中心に編み込む過程で定めた両手十本の指を置くと、魔力が放出され、魔術が発動する。


ゆえに、魔法陣というのは突発的な反応に強く、すぐさまに魔術を発動できる。


だが、魔法陣の使用回数は一つの魔法陣につき一回と定められており、戦闘をするためには多数の魔法陣をあらかじめ準備しておかなければならない。


このように、呪文詠唱と魔法陣にはそれぞれ長所、短所があり、慣れてくると状況によってその二つを使い分けができるようになる。


だが、上には上がいるのがこの世の条理。


さらに魔術の扱いに長けてくると、呪文詠唱、魔法陣を用いなくても魔術を発動できるようになる。


このことを無詠唱と言い、無詠唱で魔術を発動させるためには、魔術が発動させられるための過程をよく熟知し、よほどの知識を有していないと不可能とされる。


そのため、現在この書物を手にしている読者諸君は決して飛ばし飛ばしに行くのではなく、しっかりと順序を踏んで魔術の訓練に励むといい。


では、次章からは、それぞれ個別の魔術の特徴と、魔術発動のための具体的な呪文や、魔法陣の編み込み方について説明するとしよう』


――――


僕はそこまで読み終え、大きく息を吐く。


なるほど、無詠唱ねぇ……


僕の頭の中には自然と数日まえの記憶がフラッシュバックしていた。


賊からの急な不意打ちを受け、混乱しながらも打った渾身の一撃。

僕の記憶が正しければあれは、無詠唱だった。


――いや、流石に僕はそこまで呆けてない。


あれは確実に詠唱していない。

僕は無詠唱魔術を発動できた。

これは確かな事実。


この本には、無詠唱の発動条件は魔術が発動させられる過程をしっかりと理解していないといけないと書かれている。


魔術の発動する過程とは、なんだろうか?


僕が昨日使った無詠唱魔術は炎を出す魔術だった。

すると、どういうことだろうか?


炎というのは、気体を燃焼させて熱や光を発生させるものだ。

そのためには、まず炎心で可燃気体を生成し、内炎でそれを不完全燃焼させることで炭素の微粒子を発生させ、外炎で完全燃焼させて酸化炎を作り出す必要がある。


ここまでは既に学校で習っていた。


無詠唱で発動させるためにはしっかりとその情報を理解し、その順序の通りをイメージ立てて魔力を込める。

すると、魔術が発動する。


おそらく、こういうことではないだろうか。


僕は実際に賊との戦闘で魔術を使う時に、なぜ魔術ができるのかを疑問に思っていた節がある。

そのため、炎の発生条件を頭に思い浮かべていた。


だから、無詠唱で魔術が使えた……


それに、この世界では、現世と比べて化学的な進歩はなされていないようだ。

おそらく先ほどの炎の発生条件などという情報も衆知にはされていないのだろう。

ゆえに、この世界で無詠唱魔術が使える魔術師は数少ない。


よし、これなら筋が通っている!


と、そこまで考えてから、僕はあることに気付いた。


この本で今までに書かれていた一流魔術師の条件ともいえるスペックは――


一つ、生まれて持った魔力量が豊富であること。


一つ、二次性徴までに魔術の訓練を行っていること。


一つ、何らかの因子を持っていること。


一つ、無詠唱魔術が使えること。


僕はこの内二つを網羅していた。


……あれ? もしかして僕って相当強い?


ここまで来ると、僕は相当に期待してもいいのかもしれない。


リアル『赤銅の魔術師』になることを。

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