三章 預かり屋こよりさん(3)
「とりあえず、産まれたって報告した方がいいのかな。」
「でもこれじゃあ誰が送ったのかわからないわ。」
キティは段ボールに入っていた手紙を読み返しながら言う。
「うーん。」
「いいじゃん!私みたいに無期限で預かれば!」
と、キティはぴょんと跳ねてこよりの方をみる。
「そうだね。しばらく様子みようか。」
「ひゃぃ!」
急にエアリスと戯れていたユーリが声をあげた。
「なに?今の声。」
こよりがユーリを見る。
「エアリスさんは火を吹くんですね!びっくりしました。」
そう、ユーリが言うのでエリノアの方を見ると、エアリスは口からボフッと燃料切れストーブのような音をだした。
「ふふ、子供でもやっぱりドラゴンってわけか。」
ドンドン。
「すみませーん!」
玄関のドアを叩く音が響いた。
「来客が多いねー今日は。ユーリーよろしく。」
こよりがそう言い終わる前にユーリは玄関に駆けていった。
「はーい。どなたです?」
「龍蛇 美琴という者です。何でも屋さんに預かってもらっているドラゴンの卵を引き取りに来ました。」
「え!もももしかして、あなたが依頼人ですか?あ!すみません、一先ず中へどうぞ!」
ユーリは動揺しながらも、ドアをあける。
するとそこには、若い美形の青年が立っていた。
身長が高く、長い黒髪を後で結んでいる。
そして、この世界では珍しい和服のような物を身に付けていた。
龍蛇青年は玄関で靴を脱ぎ、綺麗に揃えて端の方に靴を寄せた。
ユーリはその動作を不思議そうにまじまじ見ていた。
その動作が終わると、一呼吸置いてからユーリは「はっ」とし、社長室へ案内する。
コンコン。
社長室に入ると、いつもの回るデスクチェアでくつろぐこよりが居た。
龍蛇青年はこよりを見ると、一歩前に進んでお辞儀をした。
「いきなり押し掛けてすみません。私は依頼主の息子で、龍蛇美琴と申します。」
と自己紹介をする。
「これはご丁寧に。こんな田舎へ足を運んで頂き有り難うございます。」
こよりも席を立って軽くお辞儀をする。
「こちらへお掛けになってください!」
ユーリはお客さん用の椅子へ案内する。
「さて、今日はどんな用件で?…といってもおそらくコチラのことかな。」
こよりはエアリスに目線を移す。
キュウウ!と元気よく鳴くエアリス。
それを冷静に一瞥する龍蛇青年。
「あなた凄くつらそう。私達も急なことで驚いているけど、話を聞くことくらいなら。」
そう言って龍蛇青年の顔を見るこより。
龍蛇青年は大きく深呼吸をした。
「話せば長くなるのですが…。」