三章 預かり屋こよりさん
「こよりさん!こよりさん!」
ドタドタドタ。
いつもの朝の始まりである。
「なに、ユーリ。」
「送られてきた段ボールの中に犬さんが!」
「んー、たぶん手紙も入ってるでしょ。」
「え!見てきますね!」
ドタドタドタ。
「こよりさん!こよりさん!ありました、手紙。」
「ありがとう。」
こよりはユーリから受け取った手紙にめを通す。
内容はこうだ。
“何でも屋こよりさんへ
私は探検家のコロナ・ブラウンという者です。
この手紙と一緒に私の愛犬スイッチも送られてきているでしょう。
実はこの度急な遠出の予定が出来てしまいました。スイッチはまだ小さいため連れていくことが出来ません。
いつもは祖父に面倒をみてもらっていたのですが、最近体調を崩してしまって…。
この際有名な何でも屋に頼ってみようと思ったしだいです。数日間預かってもらえないでしょうか。”
手紙を読むと、こよりは立ち上がり玄関へ送られてきた段ボールを見に行った。
キャンキャン!
半開きの大きな段ボールから小さな顔がこちらを見て吠えていた。
毛は栗色、耳が垂れていてビーズのような可愛い目はくりくり動いていた。
「おーよしよし。ん~!可愛いな!」
こよりは子犬を抱き上げると頬っぺたをすりすりする。
「どうします?その子犬!」
ユーリが言う。
「勿論預かるさ。うちは何でも屋だからね。」
こよりは満面の笑みで返事をする。
「わー今度はなに!子犬?」
起きてきたキティは子犬に興味津々のようだ。
「そうだよー。ほら抱いてみる?名前はスイッチだって。」
「スイッチ~。可愛い~!」
抱き上げるとキティも頬っぺたをすりすりした。
スイッチもキティの頬っぺたを舐める。
「数日預かるから、頼んだよキティ、ユーリ。」
「え、私達が面倒みるの?まー良いけど!」
満更でもない顔をするキティ。
「はい。私達でしっかりお世話します!」
ユーリも嬉しそう。
カランカラン。
呼び鈴が鳴った。
「はーい。」
すぐ近くにいたこよりが扉を開ける。
「お届けものでーす。」
そういって痩せ型の配達員がせっせと大きめの段ボールをもってきた。
「では、ここにサインお願いします。」
するとユーリがひょこっと出てきて、いつも通りサインする。
「それでは。」と言って配達員は扉をしめた。
「もしかして…まさかね。2件目ってことは…。」
ゆっくり段ボールを開けていく。
中には大量の綿と耐圧材が入っていた。
なんだ?ワレモノかな。
そう思いながら、綿と耐圧材をどけていく。
すると、中には大きい卵が入っていた。
何の卵だろうか。
こよりは綿を再度詰めて、段ボールごと持ち上げた。
「意外とおもいな~。」
ユーリも支えようとする。
落とさないようにゆっくりゆっくり段ボールを社長室へ運ぶ。
キティが社長室のドアを開け、卵が入った段ボールは社長室の隅に慎重に置かれた。
するとヒラッと一枚の紙が舞う。
こよりがそれをキャッチした。
手紙のようだ。
“何でも屋こより様
中身はもう拝見いたしましたか。
卵が入っていたと思いますが、それはドラゴンの卵です。ドラゴンと言っても危険な種ではありません。昔から人間と共に生活をしてきたウェスタという種です。
ぜひそちらで預かっていただけないでしょうか。
いつまでか、は今はお応えできませんが、よろしくお願いします。”
読み終えると段ボールのほうをまじまじと見る。
さすがのこよりも目を丸くしていた。
「今度はドラゴンか…ホントにいるんだ、ドラゴンって。」