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二章 紹介屋こよりさん

ドタドタドタドタ。

いつもの忙しない音が社長室に聞こえたきた。


「こよりさん!こよりさん!砂の国のサファリおじさんが急患だって!」


「ああ、それなら産婦人科のミント医師に電通送っといたから、もうつく頃だと思うよ。」


「さ、産婦人科ですか?!」


「あーあー気にしないで。あの人全部が専門だから、産婦人科にしたのは女性が沢山来ると思って…らしい。」


「は、はぁ。あ!そうでした、あと空町のカケルさんから男女2人で同棲できる部屋を探してるとかなんとか!」


「ああ。それは2人に最適で窓からの景色がたまらない物件を紹介しといたから。格安だし。まぁちょっとわけありなんだけど、ニヒヒヒ。」

怪しく笑うこより。


「わ、もう終えたんですか!また私は遅れてしまいました。もうダメダメです…」

とぶつぶつ言ってしゅんとするユーリ。


「ユーリ。次よろしくね。」

こよりはニコッとしてユーリの頭を撫でる。




と、まぁいつも通りの日常がここ、何でも屋“こより”にて繰り広げられていた。


「ユーリー。ココアまだー。」

そうだだをこねるのはお姫様のキティ。


そうそうキティもいました。

グリーン王国のお姫様キティことキティ・キャンドリア・グリーンは数日前からこよりさんの所に身を寄せている。



ドッタドッタ。

お昼が過ぎた頃、社長室までいつもとはリズムの異なる慣れない音が聞こえてきた。


バッタン。


社長室のドアが開かれる。

「いきなりすみません!!僕友達欲しいんです!僕が友達を作れそうな場とかありますか!」

こよりの前には途中裏返りながらも必死に訴える依頼人がいた。


こよりはその依頼人を頭から爪先までまじまじみたあと、一呼吸をして

「うん、あるよ。」

とパッと満点の笑顔に切り替えて一言。


「ちょっと待ってね~♪」

どこから取り出したのか、黒渕の眼鏡をかけ手持ちの端末機を操作する。


「ここなんてどうかな。」

端末機のパネルをリズミカルにタップする。

すると、端においてあるプロジェクターみたいなものが光だし、部屋が薄暗くなったと思うとパーと壁に光の画面が写しだされた。


壁には大きく、“お一人様研究会”と表示されている。下の方には小さく、お一人様は最高の癒し。お一人様こそ身につけるべき習慣。といかにも友達を作るとは正反対のような言葉が並べられていた。


依頼人は「えっ」という表情で写し出された文字列を凝視する。


「ところで、あなたの名前は?」

一呼吸おいたあとこよりは名前を聞く。


「あ、えーと…僕はマシュー・ドレイクマンです。」たじたじしながらマシューが自己紹介をした。


「おっけー!マシュー。それじゃあさっそく今からここの研究所に行ってみよっか。」


マシューは言われるがままにこよりと早速出掛けることとなった。


「どこいくの?私もいい?」

それをたまたま見ていたキティがこよりに言う。


「いいよ!社会見学だ!」


「こよりさん!こよりさん!もちろん私もついて行きますね!」

どこで聞いていたのか、ユーリも社長室にとんできた。


「んー、ユーリは今回お留守番!夕方くらいに郵便物が届くの。ユーリにお願いしたいんだ。」

こよりは少し優しい口調でユーリに言う。


「そ、そしたら仕方ないですよね!はい!私はしっかり郵便を受け取っておきます。」

一瞬残念そうな顔をしたが、すぐに明るくなってユーリはハキハキと言った。


「ありがとう。」

そう言ってユーリを軽く撫でると、こよりはマシューを連れて社長室をあとにした。




マシュー、キティを引き連れて外をあるくこより。


「今回は隣近所だから楽で助かるわ~。」

こよりは呑気にそんなことを言う。


マシューは信じてないような不安を隠しきれないような顔をしている。


「あなた、マシューだっけ?友達なんて出来なくても楽しいわよ。私なんて友達と呼べる人いなかったし。でもそれは別に気にしてないし、今の自分が好きよ。」


こよりには使わないようなお嬢様口調でマシューに声をかけるキティ。


「そんなこと言われても…。1人でいろいろやったけど、わかんないですよ。楽しいっていう瞬間が。こよりさんはもう僕に友達ができないからあそこに連れて行くんですかね。」


自信なさげに話すマシューをみてキティはため息をはく。


「もう!あの人はなに考えてるかわかんないけど、あなたの為になることを絶対してくれるわ。私が保証してあげる。ねぇそうでしょ?」

話ながらエッヘンと胸を張るり、前をこよりの方をみる。


「そうかな~。ま、行けばわかるよ。マシューに合うと思ったのは間違いないからね。」



そう言ってこよりはスタスタ前を歩く。



それを聞いてもどんどん顔が下向きになるマシュー。




そうこうしている間に隣街の看板が見えてきた。


“ようこそ!歓楽街シャトーへ!”


「わぁ。歓楽街ですって!」


文字をみてキティがはしゃぐ。


「残念だけど、シャトーの歓楽街には今日用ないんだよね。ははは。」

こよりがニッとしながら言う。


「えーー。」

あからさまに残念がるキティ。


「うーん。でも帰りにちょっと寄ってく用事もあったっけなー。」

こよりは1人ごとのようにつぶやく。


「あった!あるよ!なくても探せばあるでしょ。ね!こより!」

キティはまたはしゃぎだし、こよりの腕を掴んで駄々をこねている。



「でも依頼が最優先。さ!行こっか。研究室へ。」

駄々をこねるキティが届かない位置まで腕をあげて楽しみながらこよりが言う。



“↑歓楽街”とかかれた看板を無視して、その脇にのびる細いあら道にこより、キティ、マシューの3人は進んでいく。

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