一章 解決屋こよりさん
女性の方も男性の方も楽しめる作品にしたいと思っています。ぜひ御一読よろしくお願い致します。
まだまだ連載中!
「こよりさん!こよりさん!」
そう言って忙しく走ってきたと思ったら、勢いよくドアを開けて、小柄な従業員が社長室に入ってきた。
「こよりさん!こよりさん!東の町のオムレツ町長が今月の税金未納者とのいざこざを斡旋してくれとかなんとか!」
「…オムレス、な。てかもう知ってるよその話。今朝集会開いて話し合いしてきたところ。そんで、ハローワークとよく働いて町の発展に貢献した者に対する減税で話はついたっけな~。」
「なな!もう済んだので!私いっつも遅れてる。それじゃあまた新しい依頼探してきます!!」
そう言うと忙しそうにばたつきながら、小柄な従業員は社長室をあとにした。
「ん~。依頼探さなくても来るんだけどな~。」
こよりは回転式のイスで回りながら軽いため息をつく。
「ま、いっか。」
そう言うと、手のひらサイズのパネルつきモニターをいじりだす。
「ん~。どれも面白そうじゃないな~。…ん?!んん?!これは…ニヒヒヒ。」
モニターにうつる何かに興味を示したかと思うと、こよりはサッと立ち上がって、ニヤニヤしながら社長室をあとにした。
時間は少し遡って昨夜のグリーン王国では、城内でお姫様の従者達がバタバタと走り回っていた。普段は皆が眠りについて静まる城内だが、今は寝ている者はほとんどいない。王様も突然の出来事におどろいたのか、目はパッチリだ。
さてさて、前置きはこのくらいにして、この王国に何が起きたかって話をしよう。
昼間に王国近くのお花畑に出掛けたお姫様が夜になっても戻らず、音信不通なそうで。
それを聞いた王さまは驚き慌てて城中の者を使って大捜索しているわけです。
そんな王さまに家来が一言。
「何でも屋“こより”なら秘密を漏らすことなく、捜索に協力してくれるのでは?」と。
王さまはそれを聞いたとたん、猫にもすがる思いで全世界ツウシンキョクに使者を送りました。
「ニヒヒヒ。とうとう一国の王さまから依頼がきたか。」
怪しい笑みを浮かべて、悪党のような顔つきで独り言をはく。
今日は異様にご機嫌なこよりさん。
そんなニヤつき顔のこよりが目指す先は瞬間転移局。
そこはどんな異世界でも瞬時に転移してしまう全世界共通では唯一の異世界間移動手段を有する場である。
「やあ、こよりさん。今日はいつになく上機嫌じゃないか。極上の異世界旅行でも当たったかい?」
「そんなんじゃないよ。ちょっと用事ができてね。グリーン王国までお願い。」
「これまたずいぶん異界へ行くんですね~。了解。ではこちらにご搭乗ください。」
カプセルのような縦長のマシーンにこよりは迷いもなくはいる。
透明のシャッターがしまると、そのマシーンはキューーーーンと起動音を鳴らし、1秒後にはその場所から消えていた。
もちろん中にいたこよりも一緒に。
消えてから局員が一言。「いってらっしゃ~い。」
こよりはシャッターが開くと同時に外に飛び出した。
「お疲れ様です。」
見慣れない局員に会釈した後、いざ異界の地へと足を踏み入れる。
局からでるとぶわーと生暖かい風を肌に感じた。
それと同時にこよりは目の前に広がる巨大な木々に目を奪われる。
「うわさには聞いてたけど、すっげ~な~。」
「こよりさん!こよりさん!うわわ!すっごいですね~。」
「ユーリ…付いてきたのか。」
「あ!ばれないようについてくつもりがあまりの衝撃についついこよりさんの側までかけてきちゃいました!私ってなんて馬鹿なんでしょうか!」
そうこよりに話しかけているのは、冒頭にも出てきた小柄でとがった長い耳が特徴の従業員、ユーリ。
もうかれこれ4、5年こよりと仕事を共にしてきた頼りないけど、働き者の従業員である。従業員といってもユーリくらいしかいないのだが…。
「ユーリ。私が外に出るときは留守を頼むっていっつもいってんだろ。」
「はい!そうなんですが、オムレツさんの件で遅れをとってしまったために、その分を挽回したいとこよりさんの邪魔にならないところで補佐しようと思ったんですが…。」
「しょっぱなに私にみつかってどーする!」
「はい…。」ユーリはしゅんとする。
「まあいいよ。今更戻れとも言いにくいし、今回はついてきな。ところでうちの事務所は鍵してきたんだろうね。」
「あれれれ!鍵をもっていません!ってことは鍵を事務所に忘れて、しめていません!すいません。」
あわてて何回も頭をさげるユーリ。
「こらー。いつもなら閉めにいかせるけど今日は機嫌いいから許す。うちに空き巣にはいろうなんて物好きもいないだろうしな。」
「はい!」
ユーリはすぐにこっと笑って元気になった。
「さーて、行くか。」
巨大な木々の真ん中に幅の広い道が一本通っている。その脇に控えめに構える運び屋の小屋がひとつ。
こよりとユーリはまずそこに向かった。
窓口では小柄なおじいさんが迎えてくれた。両目は開いてるのか閉じてるのか分からないくらい潰れている。自慢の白髪髭を何度も撫でながら何も言わずで料金表みたいなものを差し出す。
このじいさん前みえてんのか。
そんなことを思いながら、こよりは差し出された料金表をみてグリーン王国まで、のところを指差す。
「グリーン王国まで頼むよ。」
おじいさんが頷いたか頷いてないか分からない内に、こよりとユーリの目の前に巨大なひとつ目をもつデカイ馬が2匹、馬車を引いてきて停まった。
馬車にはすでに先客に、綺麗な格好をした女の子が1人。
その女の子はこよりを見るとふーと深呼吸をし、「もしかして何でも屋さん?」と言う。
「いかにも。お嬢さんは?」
こよりはニコッと笑い堂々と答えた。
「いやまて、当てよう。もしかしてグリーン王国のお姫様?」
女の子が返事をする前にこよりは言う。
すると驚いた顔をして、少し悩んでから「そうよ。でもなんでわかったのですか?」
「ん~品格?」こよりはまたニコッとして答える。
「こよりさん!こよりさん!この方ですよ!お姫様!これは私もしかして優秀すぎるかもしれません!」
さっきから会話に参加しないで何かをいじくっていたユーリが場の空気を乱す。
「…それはもう気づいて、答えあわせまで終わったところだよ。」
こよりは、ぽんっとユーリの頭をたたく。
「それではお姫様。お城へ戻りましょう。悩みがあるのなら戻ってから私が沢山聞きましょう。」こよりはわざとらしく大袈裟にお迎えに上がった王子様のような仕草をし、お姫様に手を差し出す。
「嫌。お父様があなたに私を捜すという依頼をしたのなら、私はあなたに私を捜さないで、という依頼をするわ。」
お迎えと聞くとお姫様は急に口調が強くなった。
「困ったなぁ。」
こよりは髪をいじりながら考える。
しばらくしてこよりはポンと手をたたく。
「よし!それじゃあこうしよう!」
「わ!なにするの?」
こよりはお姫様の手を掴むとお嬢様を馬車から降ろした。
ささえながらゆっくりお姫様を地面にたたせる。
「ウチにおいで。さ、帰るよ。」
「え?え?」
「こよりさん!こよりさん!これユーカイって言うんじゃ…」
お姫様は状況を理解しているようではなく、その横でユーリは動揺しまくっていた。
「だから、探さなくてもウチにいればとりあえず安心でしょ?安全かはわかんないけどね!」
こよりはニコッとするとお姫様の手を引いてさっさともときた道を引き返し始めた。
「ま、待ってください。こよりさん!」
ユーリも駆け足でこよりを追う。
お姫様はなんだか嬉しそうに手を引かれていた。
「ところでお姫様。お名前を伺っても?」
「キティ・キャンドリア・グリーン」
幼く、しかし凛々しく答えた。
「キティ、よろしく。」
「よろしくお願いします!キティさん!え、でも大丈夫ですかね、本当にお連れしてしまうなんて。」
「大丈夫。ここの王様とは話が合うんだ。好きなゲームはボケモンだって。」
「げーむ?ぼけもん?ってなんですか?」
「ユーリはまだ知らなくていいの。ほら、早くしないと置いてくよ。」
「あー待ってくださいってば!」
これにてグリーン王国の一件は解決です。
え、こんなんで解決と言えるのか?どこが解決屋だって?
いやいや良いんですよ。こよりさんが解決したと思ったら解決なんです。
それとお前誰だよ?
ええと、私ですか。
近いうちに出てくると思うので、またその時に挨拶しましょう。
それでは。