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水の中の花火  作者: SMILE
8/9

梅の章

龍梅目線で書いています

翌日



温かい…

心地好い温かさに包まれ、気持ち良くて、目覚めたくないが意識が少しづつ浮上してくる。


ゆっくりと目を開けると、目の前に肌色が広がる?


何?


少し顔を持ち上げると、見知らぬ男が裸で寝ており、抱きしめられている事がわかった。


?…?……???………?……


驚き固まっていると、いきなり家の扉が開き同じく見知らぬ女性が入ってきた。


「あー疲れた!なんとか赤ん坊も生まれて母親も無事だったよ!奥さんの様子はどうだい?」


威勢がいい声に海道は、目を覚ました。

「んん…あぁ…」


「えぇぇー!!

ちょっと、「んん…あぁ…」じゃないよ!あんたは!自分の嫁が死ぬか生きるかって時になんて気を起こしてるんだい!新婚かどうか知らないけど、ちったぁ我慢できないの!?


奥さん体の方は大丈夫かい?」


見知らぬ女は、男に対して烈火のごとく怒ると、次に心配そうな顔してこちらを見た。


事態がよくわからず、言葉が出てこない。


「あんた、気を失ってたんだよ。旦那に、ここまで運ばれてあたしが治療たんだ。頭の傷は痛むかい?」


「傷?」

女の目線の先が自分の頭に向かっている事に気づき、それとなく触ると包帯が巻かれている事がわかった。


言われてみるとジクジクと側頭部が痛み、更に体のあちこちが痛む。そしてなんだかとても、だるい。さっきまでの心地好さはどこへいったんだろう。


「…少し痛い…です」


「寝て寝て、寝るのが一番だよ!その前に!!そんな裸で寝たら風邪引くから、そこに散らかってる寝巻を着なね」


言われている事がわからずキョトンとすると、自分の姿を見た。すると、何もつけてない事がわかり、思わず赤面し蒲団で体に巻き付けた。


「旦那!あんたも、服着たら湯を沸かして!昨日作った薬湯の用意しておくれ!あと、湯が沸く間に外の鶏小屋から卵を持ってきて!」


「あぁ」

昨夜、気を失っていた龍梅に色んな意味で自分がした事の重大さに今更ながら気づき、言葉を失っていた海道は、龍梅が自分に対して最初に見せた反応以外何も見せない事に、少し違和感を感じながら言われた通り体を動かした。




しばらくして女が男から受け取った卵で粥を作り、それを器に盛り膳を持ってきた。



「さぁ奥さん、粥ができたからこれを食べて薬湯を飲んだらまた少し寝るんだよ」



「…ありがとう。」


「ほら、あんたも粥食べて薪割と洗濯を頼むよ!奥さんの世話は私がするから、あんたは、洗濯が終わったら山に行って、ヨモギと葛を取ってきておくれ」


「あぁ…わかった」

昨日から命令され続けている海道は、鈴麗の命令に反発する事なく素直にそれに従っていた。


粥を食べ終わると海道は洗濯をしに川に出ていった。


「さぁ、奥さん傷の具合を見るから包帯を解いて薬を塗るからね。少し痛むと思うけど我慢して」


「は、はい。お願いします」


鈴麗はテキパキと包帯を解き、縫合した傷を見て薬を塗った。


「貴方は医師なんですか?」


「貴方って!アハハ!そんなガラじゃないよあたしは、鈴麗。うちは、代々産婆でね。その他に薬草作ったり、怪我の治療のまね事して、針灸したりするだけだよ。

ま、それで食うには困らないだけの銭は稼いでるけどね!そぅそぅ奥さんってばかり呼んでるけど、あんた名前は?」



「名乗るのが遅くなってすみません。私の名前は…」

言葉が出てこなかった。その事に驚きたじろいだ。


「どうしたのさ?」


「私の…名前…」

頭の中が真っ白になる。

わからない。

自分が何者でどこから来たのか全くわからなかった。


「奥さん?あんた自分の事がわからないのかい?」



鈴麗の問い掛けに何も答えられなかった。


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