海の章2
馬さんごめんなさい…
二人は共に数十メートル下の濁流の中に落ちていったが、馬がクッションになり落ちた衝撃自体は軽くすんだ。
しかし、川の水は、冷たく流れが早かった。
甲冑でも泳ぐ練習を幼い頃からしていた龍梅でもなんとか川から顔を上げるだけで精一杯だった。
こんな所で私は死ねない!
龍梅は、必死に水をかき遥か遠くの岸辺に泳ぎ着こうとした時、すぐ側に大きな岩があり、その岩を中心に水が渦を巻いてる事に気がついた。
飲まれる!?
そう思った瞬間、川の流れで水中に引き込まれどこが水面か、わからなくなる。
また、渦の流れに体ごと持っていかれグルグルと何度も回転したと思ったら岩に叩き付けられた。
その瞬間、龍梅の肺は限界に達し、また、側頭部を強く打った事で意識を手放した。
父上、姉上…ご、め…
一方、海道はまったく泳げなかった。甲冑の重さどんどん体は沈んでいくので、手足をバタつかせ水面に顔を上げようとするが、もがけばもがくほど体は重くなる。
このまま死ぬのか?
そう思った矢先に目の前に大きな岩が見えた。
しめた!俺はこのまま死なん!
海道は、腰にある剣を岩の割れ目に突き刺し、なんとか流れに逆らおうと踏ん張った。
しばらくぶりに胸いっぱい空気を吸い込み状況を把握しようと周りを見渡すと、昨夜の嵐で薙ぎ倒された木がこちらに流されてきていた。
あれにしがみついたら、なんとか岸まで辿り着けるか?
そう思い、木にしがみつくタイミングを計っていた。
しかし、川の濁流の悪戯なのか海道のタイミングの少し前に濁流によってできた渦で木は、グルグルと勢いよく回りはじめ、海道はその木に思いっきり弾き飛ばされた。
なんだよそれ!と思いつつ海道も意識を失った。




