龍の章2
龍梅ママとパパ登場です
それから五日間、龍梅は肉体的な疲れとそれを上回る精神的なストレスから眠り続けていた。
致命傷にはなってはいないが、我を忘れて、敵陣に乗り込み周囲の敵を殺しまくった際に負ったと思われる脇腹に受けた刀傷も昏々と眠り続ける原因の1つになっていた。
その間に雷花と共に羅の国に帰還していた。
頬を触る温もりと優しい香りに包まれ、龍梅は薄く目を開いた。
「か、母様…?!」
長いこと寝ていたためにうまく声が出せず、自分のかすれ声に驚いた。
「龍梅。おはよう。」
娘の頬を撫で、日だまりのように、柔らかく微笑えんだのは、龍梅の母、李水蘭だった。
「目が覚めても、まだ寝ていなくては、ダメよ。何か欲しいものはある?あなたの好きな桃の果汁があるのよ。飲めるかな?」
「母様…。」
「どうしたの?どこか痛む?気持ち悪い?まだ熱があるから、果汁飲んでお薬飲んだら、もう一度寝なさいね。」
自分の事を心配しながら、龍梅を安心させる微笑みを浮かべ、世話を焼く母の姿に龍梅の瞳から関を切ったように涙が流れた。
「母様…母様、母様、母様ぁぁぁぁ!」
幼い子供のように声を上げて自分を求める娘を水蘭は、ギュッと抱きしめ、「全部…。全部吐き出しなさい!母様が全て引き受けるわ。」と言いながら、やさしく龍梅を揺らし、小さな子を落ちつかすように、の背中をポンポンと叩いた。
どのくらいそうしていただろうか。母の温もりに安心した龍梅は、再び眠りに落ちた。
水蘭は娘の頬に残る涙を拭い取ると優しく寝台に寝かせた。
「龍梅の様子はどうだ?」
水蘭が振り返るとそこには羅の国王、羅関雲がいた。
「先程、ようやく寝てくれました。」
「そうか…。 龍梅が再び目を覚ましたなら、私の元にくるように伝えよ。」
「関雲様!龍梅はまだ絶対安静の身です。それにこの子は雷花様の事で今精神的にも窮地に追い込まれてます。もう少し体と心の傷が癒えるまで待っていただけませんか?」
水蘭は、子を守る母親の本能からか今まで見せた事のない鋭い眼差しで夫である関雲を見た。
「私とて、人の子だ。娘が苦しんでいるのを黙ってみてはおれん。しかも、これは、私とよく似ている。自分の責で兄弟を失った経験までもな…。
その痛みがわかるからこそ、龍梅を早く固めないと、手遅れになる。」
「固めるとはどういう事でしょうか?」
水蘭は、怪訝な表情で王に聞く。
「今にわかる。」
そう言って、王は、部屋から出ていった。
まだ恋愛要素は皆無ですが、もう少しお待ち下さい。