第14話「眠っていたルーン戦士」
第14話「眠っていたルーン戦士」
研究施設の奥。
巨大な容器の中で、赤い目が光っていた。
「……起動」
低い声が響く。
レオンたちは身構えた。
ガルが一歩前に出る。
「来るぞ!」
レオンもルーンを構える。
「アンスズ!」
ᚨ《アンスズ》が発動する。
しかし――
「……読めない」
「え?」
レオンの表情が固まる。
敵の動きが、まったく読めない。
ミレイもタロットを引く。
出たカードは――
「月」。
「先が見えない……」
「不吉なカードなのか?」
ガルが聞く。
「不吉というより、隠されたものがあるという意味ね」
「つまり?」
「よく分からない」
「タロットって便利なのか?」
「だから未来を決めるものじゃないと言っているでしょう」
ミレイが冷静に返す。
その間にも、容器の中の影が動き始めた。
ゴゴゴゴ……
ガラスに亀裂が走る。
「来る!」
レオンが叫んだ。
バキィィン!!
容器が砕け散る。
中から現れたのは――
小さな茶色の猫だった。
「……猫?」
ガルが呆気に取られる。
レオンも目を丸くする。
「小さいな」
その猫は、ふらふらと歩いてくる。
そして――
「……腹、減った」
全員が固まった。
「……」
「……」
「……」
ガルがレオンを見る。
「お前の仲間じゃないか?」
「俺を何だと思ってる!」
猫は床に座り込んだ。
「飯……」
レオンが警戒しながら近づく。
「お前、本当に人工ルーン戦士なのか?」
「……知らん」
「名前は?」
「……知らん」
「じゃあ何を知ってる?」
猫は少し考えた。
「飯が欲しい」
「それしかないのか!」
ミレイがため息をつく。
「どうやら記憶が完全ではないみたいね」
そのとき。
猫の身体にルーンが浮かび上がった。
ᛏ《ティール》。
一瞬で空気が変わる。
「……!」
猫の身体から、とてつもない力が放たれた。
レオンが飛び退く。
「危険だ!」
しかし猫は自分の身体を見て首を傾げる。
「……これ、なんだ?」
「知らないのかよ!」
ガルが叫ぶ。
すると施設の奥から人間の声が響いた。
「実験体Ⅷ、起動を確認!」
猫の表情が変わる。
「……実験体?」
さらに複数の魔法陣が起動する。
「逃がすな!」
人間たちが施設へ入ってきた。
レオンが前に出る。
「ガル!」
「分かってる!」
ガルがティールを発動。
レオンはアンスズで敵の動きを読む。
「右から三人!」
「任せろ!」
ガルが敵を押し返す。
レオンはライドで移動経路を作る。
「ミレイ、こっち!」
「分かった」
しかし――
実験体Ⅷが突然走り出した。
「おい!」
レオンが追いかける。
Ⅷは敵の攻撃を軽々と避ける。
そして壁を蹴り――
高い棚の上に飛び乗った。
「……」
棚の上から、こちらを見る。
「飯は?」
レオンが頭を抱える。
「今それ言う!?」
ガルが叫ぶ。
「俺も腹減ってきた!」
「お前までか!」
ミレイが冷静に言う。
「緊張感がないわね」
「ミレイは腹減らないのか?」
「……少し」
「お前もか!」
---
戦闘が激しくなる。
人間たちは炎のルーン、
ᚲ《ケナズ》を発動。
炎が一気に迫る。
レオンが叫ぶ。
「ラグズ!」
ᛚ《ラグズ》の水流が炎を消す。
その隙にガルが突撃。
「ティール!」
敵を吹き飛ばす。
ミレイはタロットを引く。
「正義」
「今度は何だ?」
「左」
「それだけ?」
「左に行けば、敵の司令塔がいる」
「最初からそう言ってくれ!」
レオンがライドで一気に移動する。
敵の司令役を見つける。
「ここだ!」
攻撃をかわしながら、魔法陣を破壊する。
研究施設全体の魔力が止まった。
人間たちは撤退する。
「撤退!」
---
静かになった施設。
レオンたちは、実験体Ⅷを見る。
小さな茶色の猫は床に座っていた。
「お前……人間に作られたのか?」
「……分からない」
「じゃあ、何を覚えている?」
Ⅷはしばらく黙った。
そして――
「母さん……」
レオンたちの表情が変わる。
「母さんが……言ってた」
「何を?」
「夜になったら……」
Ⅷは顔を上げた。
「自由になりなさいって」
レオンは静かに目を細めた。
「……ヴァルドと同じだ」
その瞬間。
研究施設の奥で、古い装置が起動した。
画面に一匹の猫の姿が映し出される。
そして、その下に文字が表示された。
《プロジェクト・ルーン》
さらに――
《対象:レオン》
レオンが息をのむ。
「……俺の名前?」
ミレイが画面を見る。
「この施設は、あなたを知っている」
ガルが驚く。
「じゃあレオンも、最初から実験対象だったのか?」
「そんなわけ……」
レオンの言葉が止まる。
画面の最後に、もう一つの文字が浮かんだ。
《第零世代――原初のルーン適合体》
レオンの目が見開かれる。




