第12話「もう一匹のルーン戦士」
第12話「もう一匹のルーン戦士」
朝。
レオンは、飼い主のベッドの上で丸くなっていた。
「レオン、おはよう」
「……ニャ」
飼い主に頭を撫でられる。
レオンは気持ちよさそうに目を細めた。
――昨夜。
異世界で巨大な敵と戦い、古代ルーンの秘密を探っていた。
そして今。
「レオン、ご飯よ」
「!」
レオンが飛び起きた。
「ニャー!」
「ふふ、そんなにお腹空いてたの?」
レオンは夢中でご飯を食べる。
(戦士にも朝飯は必要なんだ……)
食べ終わると、今度は窓際へ移動。
日向ぼっこ。
飼い主から見れば、いつもの可愛い猫だった。
だが――
レオンの目だけは真剣だった。
(今夜も、あの聖域へ行く)
---
夜。
飼い主が眠ったのを確認すると、レオンは静かに立ち上がった。
「……行くか」
窓辺に飛び乗る。
ルーンが光る。
そして――
レオンの姿が光に包まれた。
---
古代ルーンの聖域。
「遅いぞ、レオン」
ガルが待っていた。
「悪い。朝飯が長引いた」
「……お前、世界の危機より飯を優先したのか?」
「戦う前の腹ごしらえは重要だ」
「昨日も食ってたぞ」
「昨日は昨日だ」
ミレイが呆れた顔をする。
「あなたたち、もう少し緊張感を持てないの?」
「持ってる」
レオンが胸を張る。
「ほら」
尻尾がボワッ。
ガルが指差す。
「また膨らんでる」
「これは威嚇だ!」
「怖がってるだけじゃないのか?」
「違う!」
その瞬間――
ゴゴゴゴゴ……!
聖域が揺れた。
レオンの表情が変わる。
「……来るぞ」
---
天井が爆発した。
ドォォン!!
巨大な白銀の犬が、瓦礫を吹き飛ばして現れる。
身体には複数のルーン。
ガルが驚く。
「犬……?」
白銀の犬は冷たく言った。
「対象を確認」
「対象?」
「古代ルーンの継承者――レオン」
レオンが目を細める。
「俺を知ってるのか?」
「排除する」
身体にルーンが浮かぶ。
ᚦ《スリサズ》
強烈な衝撃波が飛んできた。
「散れ!」
レオンがアンスズを発動。
攻撃の軌道を読む。
「右!」
三匹が一斉に飛び退く。
ドゴォン!!
壁が吹き飛んだ。
ガルが唖然とする。
「……今の食らったら、俺、ペットに戻れなくなるところだった」
レオンが叫ぶ。
「ペットには戻れ!」
「そういう意味じゃない!」
---
白銀の犬が突進する。
レオンはアンスズで動きを読む。
「ガル、正面!」
「任せろ!」
ガルがティールを発動。
ᛏ《ティール》
正面から攻撃を受け止める。
「ぐっ……!」
しかし、敵の力が強い。
「レオン! こいつ強すぎる!」
「分かってる!」
レオンがライドを発動。
ᚱ《ライド》
光の道が伸びる。
「右へ回れ!」
ガルが一気に走る。
「今だ!」
「ティール!!」
ガルの一撃が白銀の犬を吹き飛ばした。
だが――
敵の身体に緑色の光が走る。
ᛒ《ベルカナ》
傷が瞬く間に回復する。
ガルが固まった。
「……回復した」
レオンも驚く。
「こいつも四つのルーンを使えるのか……」
ミレイが静かに答える。
「ヴァルドと同じ人工ルーン戦士よ」
白銀の犬が立ち上がる。
「私は――」
一瞬、言葉に詰まる。
「ルーン戦士」
レオンが眉をひそめる。
「名前じゃないな」
「……」
「番号だろ、それ」
ゼロは黙り込む。
ガルが小声で言った。
「俺なら嫌だな」
「何が?」
「名前がゼロって」
「そこかよ!」
---
ゼロが再び構える。
「命令を実行する」
「誰の命令だ?」
レオンが問いかける。
「人間だ」
「お前もヴァルドと同じか」
その言葉に、ゼロの動きが止まった。
「ヴァルド……」
その名前を聞いた瞬間。
胸元のルーンが激しく明滅する。
「……知らない」
ミレイがタロットを一枚引く。
カードは――
正義。
「嘘をついているわ」
ゼロがミレイを見る。
「なぜ分かる?」
「タロットが教えてくれたの」
レオンが驚く。
「じゃあ、敵の嘘も全部分かるのか?」
「いいえ」
「なんだ」
「これは単なるヒントよ」
「便利なのか不便なのか分からないな……」
---
そのとき。
ゼロの身体から複数のルーンが同時に発動した。
スリサズ。
ティール。
ライド。
ベルカナ。
四つの力が一つになって襲いかかる。
「来るぞ!」
レオンが叫ぶ。
アンスズで攻撃を読む。
ライドで道を作る。
ガルがティールで受け止める。
ミレイがベルカナの光を誘導する。
しかし――
「くっ!」
ガルが吹き飛ばされた。
「ガル!」
レオンが駆け寄る。
「大丈夫か?」
「……大丈夫」
ガルが立ち上がる。
「でも腹減った」
「お前もか!」
レオンが思わず叫ぶ。
ミレイがため息をつく。
「あなたたち、戦闘中に食事の話をするのやめてくれる?」
---
その瞬間。
ゼロの動きが止まった。
胸元のルーンが赤く明滅する。
「……命令……」
ゼロが苦しそうに頭を押さえる。
「戦え……」
「ゼロ?」
「戦え……戦え……!」
身体が震える。
レオンが一歩前に出る。
「お前、本当に戦いたいのか?」
ゼロが顔を上げる。
「……分からない」
その目に、初めて迷いが浮かんだ。
すると遠くから人間の声が響く。
「ルーン戦士!」
ゼロの身体が反応する。
「帰還せよ!」
「……了解」
ゼロはレオンたちを見る。
そして――
「次は……倒す」
光に包まれ、その場から消えた。
---
静寂。
ガルが呟く。
「……ヴァルドとは違うな」
「ああ」
レオンも頷く。
「ヴァルドは自分で選ぼうとしていた」
ミレイがタロットを見る。
「ゼロも、いつか選ぶことになるでしょうね」
老猫が静かに口を開く。
「そして、あの二匹だけではない」
レオンが振り返る。
「……どういう意味だ?」
老猫は聖域の奥を見る。
そこには、無数の扉が並んでいた。
「人間は、人工ルーン戦士を――」
一呼吸。
「何体も作っている」
レオンたちは言葉を失った。
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そして翌朝。
レオンは再び人間の家で眠っていた。
飼い主がレオンを見つける。
「レオン、こんなところで寝てたの?」
レオンは目を開ける。
「……ニャ」
飼い主が笑って頭を撫でる。
「今日も可愛いね」
レオンは目を細める。
(……俺たちは、まだ知らない)
(人間が作ったルーン戦士が、あと何匹いるのか)
そして――
(次の夜も、戦いは続く)
その直後。
グゥゥゥ……
飼い主が笑う。
「お腹空いたの?」
レオンは目を逸らした。
(……まずは朝飯だ)




