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有魂機人ツクモス The Comrades  作者: 霜月立冬


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第六十話 電光石火

 ツクモス学園中等部最強決定戦、決勝。その舞台に選ばれたのは、第一演習場。通称「荒野」であった。


 天候は曇天(どんてん)。しかしながら、薄暗がりの中でも現況の全容を確認することは容易である。

 現場は、乾いた黄土色の地面以外何も無い。その景観から西部劇の撮影現場に使用されたこともあった。

 西部劇。そう、今から西部劇宛らの決闘が始まろうとしている。


 砂塵吹きすさぶ黄土色の異世界に、ポッコリお腹が突き出た二人の決闘者(デュエリスト)が対峙している。


 灰褐色の痩せぎす中華戦士、NTMNX01乾坤圏(ケンコンケン)

 漆黒の鎧武者、NTM01ムラマサ。


 彼我の距離は凡そ一キロメートルほど離れている。それなりに遠い。しかし、それぞれの視界を阻む障害物は何も無い。

 ツクモスの視覚センサーは、相手の姿形を完璧に捉えている。その事実は、ムラマサの腹の中でも確認できた。


「本当に――何も無いな」


 耀平(ヨウヘイ)の口から、ポロリと現況の感想が漏れた。それは、意図せず漏らした独り言だ。ところが、反応した者が()()いた。


「無いのう」

((無いな))


 耀平の左肩から少女の声が上がった。それと同時に、耀平の脳内で中世的な男性の声が響いた。前者は小妖精、耀蔵(ヨウゾウ)(AI)。後者はムラマサだ。

 二人の声を聞いた耀平の顔に苦笑が浮かんだ。しかし、それは直ぐに消えた。


「ツクモス学園最強決定戦、決勝。間も無く開始します」


 無機質な機械音声が、荒野の虚空に響き渡った。それを聞いた瞬間、耀平の顔がキリリと引き締まった。


 ユーリンが相手でも、全力で勝ちに行く。


 耀平の脳内で、今日の為に練った作戦が複数個閃いた。その中で、最有力候補が「適切な距離からの射撃」である。


 雨淋が駆る乾坤圏は超近接特化型。その最大の特徴は、空中に浮きあがっての立体起動。その能力を活用する為、得物は両腕に嵌った(けん)のみ。


 乾坤圏を近付けなかったら、一方的に攻撃できる。


 耀平は、自身の作戦(中距離攻撃)を最適解と考えていた。同じ見解の者が、耀平の他に二人いた。


「これだけ視界が開けておるんじゃ。銃弾も当て放題じゃわい」

((今回は、俺達に運が味方したな))


 耀蔵(AI)も、ムラマサも、地の利は我に有りと考えていた。それぞれの言葉を聞いて、耀平の顔にもシニカルな笑みが浮かんだ。


 そう言えば、ユーリンも「荒野は苦手」って言ってたな。


 もし、決勝に上がっていたのが耀平ではなくフィンであったなら。あのマック・ア・ルインの超火力で押し切っていただろう。その可能性を想像すると、耀平の笑みが苦笑に変わる。


 フィンには悪いけど。お前の代わりに、俺が乾坤圏をハチの巣にする。


 耀平の脳内で勝利の方程式が明瞭に閃いていた。それを具現化する機会が、たった今訪れた。


「ツクモス学園中等部最強戦、決勝――開始」


 無機質な機械音声が響き渡った。その瞬間、ムラマサと乾坤圏は同時に動いた。その際、二人とも全く同じ行為を選択していた。


 全速前進。相手に向かってまっしぐら。


 どちらも真円を描く荒野の直径に沿って、一直線に突き進んでいる。その状況は、耀平達にとっては願ったり叶ったり。


 射程に入ったら――撃つ。


 ムラマサは走りながら両手の銃を構えた。その直後、耀蔵(AI)が叫んだ。


「耀平っ、五百っ!」


 距離五百メートル。対ツクモス銃火器であれば、IN範囲(アイエヌ・レンジ)に守られたツクモスの体を傷付けることができる。その効果を実証すべく、耀平はムラマサを急停止。その場で狙いを定めて、続け様に引き金を引き――掛けた。

 その刹那、耀平の脳内にムラマサの声が響き渡った。


((避けろっ!))

「!?」


 唐突なムラマサの指示。その意味は、耀平には分からない。それでも、耀平の体が反応していた。


 耀平は超速でムラマサを右手側に傾けた。ムラマサの巨躯が、右腕から地面に向かって倒れていく。急な行動であったが故、完全にバランスを失っている。その事実は、耀平も直感していた。


 敵の前で転べるかっ!


 耀平は、ムラマサの左腕を空中に突き上げてバランスを取った。

 その際、ムラマサの左腕の辺りに「巨大な何か」が突っ込んで――通り過ぎた。その光景は、辛うじて耀平の視界にも映っている。それを直感した瞬間、


「えっ?」


 耀平の口から間抜けな声が漏れた。その直後から、耀平の目が大きく開かれていく。それが限界一杯まで広がったところで、再び燿平の声が上がった。


「そんな――」


 耀平の視線は、全周囲モニターの()()に釘付けになっていた。そこに映っていた光景は、耀平達にとっては悪夢であった。


()()()()()っ!」


 ムラマサの左腕が、二の腕辺りからスッパリ切り取られていた。

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